2012 Fiscal Year Research-status Report
近代日本における家庭教育論の成立と展開―保育所保育独自の意義と役割の解明の為に―
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24531025
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Tokyo Junshin Women's College |
Principal Investigator |
藤枝 充子 東京純心女子大学, 現代文化学部, 准教授 (00460121)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 家庭教育論 / 家庭 / 近代日本 / 安部磯雄 / 生活 / 堺利彦 / 読者 |
Research Abstract |
平成24年度は、安部磯雄の家庭教育論の特色を明らかにするため、彼の主要著作物の調査・収集及び彼に関する先行研究の収集・検討に取り組んだ。残念ながら、本年度の目標であった安部磯雄の家庭教育論の特色を明確にするところまでには至らなかった。 本研究課題について考える中で、近代日本における「生活」概念がどのようなものであったかを検討する必要があることを改めて感じた。「生活」の中で、大人から子どもへ何が伝えられるのか、そしてそれが、子どもの人格形成にどのような影響を与えるのか。安部磯雄が『子供本位の家庭』を執筆した前後の時期の教育思想やキリスト教の影響も含めて検討し、安部磯雄の家庭教育論の特色を解明することが必要である。 また、堺利彦『家庭の新風味』は、学校教育の補完としての家庭教育論とは異なる家庭教育論の一つの系譜に位置づくという仮説を立て、その読者層の解明を平成24年度以前から継続している。そのため、本書が出版された時期に刊行されていた婦人雑誌、総合雑誌、新聞の新刊紹介、書評、寄書、寄贈書目、広告に着目し、本書が取り上げられている婦人雑誌などの特色から読者層を明らかにしていきたいと考え、資料調査にあたった。残念ながら、読者層を解明するのに十分な資料を蓄積するまでに至っていない。そのため、近代日本における読書空間の形成という視点からも『家庭の新風味』の読者層を捉え直せないかと考え、現在、関連文献の検討を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
安部磯雄に関する先行研究及び安部磯雄の家庭、家庭教育に関連する著作物の検討に予想以上に時間がかかるため、研究の目的を達成することができなかったと考えている。本研究で取り上げる堺利彦、久津見蕨村、安部磯雄を比較した時、安部磯雄の家庭教育論の特色の背景にはキリスト教があるが、近代日本におけるキリスト教の影響についての知識が不十分であった。キリスト教思想及びその日本への影響についての理解を進めることと並行して、安部の著作物の検討が必要となっており、平成24年度の研究の目的を達成するために時間がかかっている。
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Strategy for Future Research Activity |
申請書に記した通り、堺利彦、久津見蕨村、安部磯雄が著した学術的論文、自叙伝や日記、書簡などの文献の分析を行う。また、3者が過ごした場所での現地調査を実施したい。研究の遅れについては、平成25年度前期中を目途に、安部磯雄の家庭教育論の特色について考察したい。そして、平成25年度後半には、堺利彦、久津見蕨村、安部磯雄の家庭教育論の共通点と相違点の検討に入りたい。平成26年度は申請書通り、近代日本における学校教育の補完としての家庭教育論とは異なる家庭教育論の系譜とその展開過程の解明に取り組む。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度の研究費は申請書通りに使用する予定である。なお、平成24年度は現地での資料調査・収集を行うことができず、研究費を繰り越すこととなった。繰り越された研究費については、資料調査の交通費、図書の購入費用として使用する予定である。
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