2013 Fiscal Year Research-status Report
近代日本における家庭教育論の成立と展開―保育所保育独自の意義と役割の解明の為に―
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24531025
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Research Institution | Tokyo Junshin Women's College |
Principal Investigator |
藤枝 充子 東京純心女子大学, 現代文化学部, 准教授 (00460121)
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Keywords | 生活 / 人間形成力 / 家族 / 家庭 |
Research Abstract |
安倍磯雄に関する主要な先行研究及び安倍の主要著作物についての調査はほぼ完了することができた。安倍の教育論や家庭論に着目すると、彼は学校教育の補完としての家庭教育論とは異なる家庭教育論の系譜には位置づかないとの見通しを持った。それは、安倍が学校教育を重視し、貧困問題をその本質とする社会問題解決のためにも、中等教育や高等教育の普及を目指していること、さらに、学校教育を受けることが幸福に繋がるという考え方を示しているなどのためである。この結果は、今年度当初に持っていた仮説とは異なっており、今年度の成果である。 次に、近代以前から近代にかけての生活概念解明の手がかりを得るため、近世から近代の女性の身体観についての研究、及び教育社会学で研究されている隠れたカリキュラムについての研究を調査した。その結果、与謝野晶子や野村芳兵衛の生活概念の検討が必要であること、無意識の中にある人間形成力をすくい上げる時の視点(地域、階層、経済、人種など)を学ぶことができた。後者に関しては、資料の分析に活かす方法を考えながら研究を進めていきたい。 さらに、堺利彦『家庭の新風味』が刊行された時期の雑誌や新聞の新刊紹介や書評などから読者層を明らかにする取り組みは今年度も継続したが、目立った成果を出すことはできなかった。手法そのものの再検討が必要とも考えるが、今後も継続していきたい。近代日本の読者層及び読書空間に関する先行研究の調査・収集はほぼ完了することができたと考えている。それらから、その当時の読者層や読書空間の特質だけでなく、研究手法や分析視角についても学ぶことができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本研究は、近代日本にも残っていたと考えている学校教育の補完としてではない家庭教育論の系譜とその展開の解明を課題としているが、これまでに十分な成果が出せたとは言えない。それは、資料、参考文献、及び先行研究の調査・収集についてはほぼ計画通りに進められているが、資料・参考文献・先行研究の分析と考察に必要な時間をとることができなかったこと、予定している現地調査が実施できていないことが原因である。また、近代日本における学校教育の補完としてではない家庭教育論の系譜の解明というこだわりが、研究の全体構想の目的である生活が持つ人間形成力の析出という本来の目的に近づきにくくしているのではないかと考え始めている。資料を分析する際に、生活実態への視点をより強めていく必要があると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度は現在までにほぼ収集を終えている資料、先行研究などの分析及び考察と現地調査を実施する。具体的には以下のように研究を進めたいと考えている。①堺利彦、久津見蕨村の家庭教育論の共通点と相違点の解明、②堺と久津見に関連する場所の現地調査、③与謝野晶子、野村芳兵衛らの生活概念の分析、④研究のまとめ:現在は、堺利彦や久津見蕨村らの家庭教育論と生活を通して子どもの人間形成を図ろうとする教育のあり方の特質、それらの関係などに着目してまとめたいと考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度は、勤務地のある東京近郊、及び、それ以外の地方への資料調査・現地調査に行くことができなかったため、当該年度に予定していた額を使用することができなかった。 平成26年度の7月から8月、12月から3月の時期に、現地調査を実施する。また、今後必要となる図書の購入に充てる。
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