2014 Fiscal Year Research-status Report
近代日本における家庭教育論の成立と展開―保育所保育独自の意義と役割の解明の為に―
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24531025
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Research Institution | Matsumoto University |
Principal Investigator |
藤枝 充子 松本大学, 人間健康学部, 准教授 (00460121)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 人間形成力 / 近代日本 / 生活 / 家族 / 家庭 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度は、安部磯雄の学校観、教育観の解明と堺利彦の子ども観との違いの解明に取り組み始めた。 安部磯雄は多くの単行本を著しており、先行研究(早稲田大学校史資料室編『安部磯雄 その著作と生涯』早稲田大学教務部、1964年)では、それらの内容から、①社会全体の制度的なあり方に関する変革の要求を掲げたもの、②制度的な変革の潮流の中に、変革を推し進めてゆく主体としての個々人の生き方に関するものとに大別されている。①と②は密接不離の関係にあるが、本研究では、主に②に該当する個々人の生き方に関する単行本及び雑誌記事類、さらに安部の自叙伝や伝記を分析対象としている。 現時点では、安部磯雄の家庭教育論を、久津見蕨村や堺利彦の家庭教育論の系譜に位置づけることは難しいと考えている。それは、例えば、弱者(子ども、婦人、労働者)に寄り添おうとする姿勢がある一方で、「弱さ」を嫌う言説があるといった、安部の子ども観、人間観を根拠とする。安部と堺は、それぞれの長女と長男を同じ病気で失っている。自らの子どもの死を巡る記述から、安部と堺の違いを読み取ることができるが、病気の後遺症によって将来「強く」なれないことが予想される我が子に対する安部の思いには、わが子に対する愛情とは別に、先の背反する価値が示されているように思う。安部の品行方正な人柄は、同時代の人々から高く評価される(例えば、「同志の面影」週刊『平民新聞』1903年11月22日)が、その人柄ゆえの弱さ、現実社会にある問題を否定、脱却すべき事柄と捉え、止揚すべき事柄と捉えない弱さも指摘されている。安部のこのような思想は、どのように形成されていったのか。安部の幼少期の思い出などから、安部の教育観、学校観、子ども観、家庭観などを探っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
研究の全体構想の目的である生活が持つ人間形成力の析出に近づくために必要な近代日本における「生活」概念の検討が十分に行えていない。これは、「生活」概念を検討するための資料・文献調査、手もと資料の分析が計画通りに進まなかったためである。 また、本研究の具体的な内容である安部、久津見、堺の教育観などの比較検討も十分な成果を出すことができていない。その理由の一つに、安部に関連する東京近郊の現地調査は実施できたものの、久津見と堺に関連する地方の現地調査に行くことができなかったことがある。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年中に成果を報告する計画であったが、1年間の補助事業期間延長を申請し、平成27年度までの期間延長が認められた。そのため、平成27年度は、①近代日本における「生活」概念の検討、②久津見蕨村、堺利彦に関連する現地調査の実施、③安部、久津見、堺の教育観、子ども観等についての比較検討、④結果の報告を行っていく。
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Causes of Carryover |
安部磯雄に関する東京近郊の現地調査は行えたが、「家庭教育」論の比較対象とした久津見蕨村及び堺利彦に関する地方の現地調査に行くことができなかったためである。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
九州、大阪、岡山などへの現地調査を実施する。また、研究をまとめるために必要となる図書の購入に充てる。
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Research Products
(1 results)