2012 Fiscal Year Research-status Report
教職における「新しい職」の確立過程に関する実証的研究
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24531032
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Meijo University |
Principal Investigator |
木岡 一明 名城大学, 大学・学校づくり研究科, 教授 (10186182)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 新しい職 / 主幹教諭 / ミドルリーダー / 学校組織 / 異業種協働 / マネジメント・モデル |
Research Abstract |
本年度は、以下の点について研究を進めた。 1.高知県における主幹教諭の職務実態調査:高知県では、県教育委員会が、平成20年12月、研究モデル校を募集する形で、「新しい職」の設置が始まった。すなわち、既存の研究データが整っており、また導入からまだ日は浅く、しかも全県での総数も平成24年度で30名程度と少ない。この条件を活かして、公立小中学校の主幹教諭を事例に、4年間、「新しい職」の確立に向けて、どのような位置づけのもとでいかに職務を模索してきたのかについて調査を進めてきた。 2.外国調査:今年度は、ニュージーランド(NZ)で調査を行った。NZは、比較的困難な状況を抱えている地域にある学校に、1999年からソーシャルワーカー(Social Workers in Schools;SWiS)を配置している。ただし、その所轄庁は、教育省ではなく社会開発省である。つまり、教員とは異なる職種を配置し、行政的にも協働的な保護施策展開を試みているニュージーランドの先行事例を調査し、日本でも近年、文部科学省のもとで進められているスクール・ソーシャルワーカーの場合と比較検討してきている。 3.文献・資料の取集と分析、研究会の開催:研究メンバーそれぞれが「新しい職」に関する国内の先行研究、教員リーダーの養成に関する国内外の文献・資料の収集をすすめ、研究打ち合わせ会を実施した。研究打ち合わせ会では、研究代表者が高知県の現職教員らとこれまで進めてきた実践について意見交換を行った。また海外の動向については、日本における「新しい職」と関連した役割を担う人物と想定される「教師リーダー(teacher leader)」に着目し、アメリカとカナダにおける理論的・政策的動向について検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度にあたる今年度は、①研究代表者がこれまでに収集してきた事例に関する資料の内容を研究メンバーで共有すること、②次年度以降、本格的な実施を予定している海外の事例について基礎的な資料を収集し、理解を深めることを主たる目標としていた。研究会は年3回と当初予定していたよりも少ない回数しか実施できなかったが、これらの目標については、十分に達成できたものと判断できる。 国内外の文献調査を通じて、「教員リーダー」や「マネジメント・サイクル」に関する新たな概念などの重要性も確認されてきており、今後の発展を期待しうる。一方、高知県でのフィールド調査は、調査対象者へのフィードバック機能を備え、「新しい職」のみならず、校長や教頭、事務職員を含めた自主的な研究組織に刺激を与えており、実践的な面においても波及効果を期待しうるものとなってきている。その意味では、期待以上の成果を上げてきているといえよう。 また、遠隔地に居住する者による研究組織であることが、各地の異なる状況を多面的に理解する素地を作っており、研究会での論議の活性化を促していることも特筆される。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は、次の研究活動を計画している。①「新しい職」に関する国内外の理論および政策動向に関する文献・資料の収集と分析を引き続き実施する、②海外における「新しい職」の確立過程について、今年度の文献研究・調査研究で得られた知見をもとに現地調査を実施する。今年度はニュージーランドとカナダを研究メンバー各1名が訪問し、現地学校、教育省、教育委員会や関連職能団体においてインタビュー調査を実施する。③高知県での主幹教諭の職務実態について引き続き訪問調査を実施するとともに、国内における他の事例の選定作業を進め、訪問調査を実施することができるよう準備を進める。④昨年度までに得られた知見を整理し、日本教育経営学会等の全国学会において発表を行い、研究成果を広く公開する。 海外調査対象にカナダを加えたことにより、NZ以上に制度化が進んでいるため、いっそう資格制度と職の確立との関係が、研修や評価とも絡んで考察の重要な論点となっており、また対象国数の増により比較軸がより精緻に構成できるようになると考えている。 他方、高知調査によって、しだいに職と個人特性と「学校組織」との関係の複雑性が整理されてきており、学校・地域特性と「職」のあり方をモデル化しうると考えている。また、対象とする地域を広げることによって多様な配置パターンを得ることができ、日本における実態把握の深まりを期待できる。 こうした成果を学会発表を通じて還元し、また異なる見方や考え方からの示唆も受けながら研究を発展させていく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度は、外国調査の実施と国内動向の追跡調査・分析を研究活動の中心にする。この計画を遂行するため、主として次の目的で研究費を使用する予定である。 ①「新しい職」に関する国内外の理論的・政策的動向について確認することを目的に教師リーダーや教育経営学関連図書を購入する図書購入費、②ニュージーランドとカナダで、それぞれ1週間程度の訪問調査を実施するための外国旅費、③高知県における「新しい職」の運用実態を引き続き調査するための国内旅費、④研究の進捗状況を研究メンバー全体で確認するために実施する研究打ち合わせ会開催のための国内旅費、⑤学会発表を行うための国内旅費。
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Research Products
(2 results)