2014 Fiscal Year Annual Research Report
「組織文化」としての保育目標・内容観の転換に関する実践史的研究
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24531034
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Research Institution | Bukkyo University |
Principal Investigator |
渡邉 保博 佛教大学, 社会福祉学部, 教授 (50141552)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 学習組織 / スキーム / 保育目標と内容 / 周辺化 / 問題児 / ケア / 対人ネットワーク |
Outline of Annual Research Achievements |
科研のテーマ(「組織文化」としての保育目標・内容観の転換に関する実践史的研究)に沿って行ってきた3年間の研究の1つの集約として、ある自治体の公立保育所の全保育者が参加した研修会の1970年代以降の史料を収集・分析し、この組織的研修会が保育スキーマの創造的発展に果たした役割を歴史的に検討した。その結果、①この研修会を通して創造された保育のスキーマ(年齢別保育目標・内容)は、実践を発展させる契機であったが、制約する契機にもなったこと、②しかし、この研修会が「継続的な批判的検討,その再構成を導く学習組織」であったことによって、いったん成立したスキ-マからはみ出し「周辺化」する「気になる子」の事例の検討を通して、新たなスキ-マを創造する可能性をもちえたこと、③この組織的研修会の参加した保育者たちは、その身体的かつ情緒的なケア労働の質を高めるという実践的課題にこたえ、「気になる子」を抱え込み養護する「暖かい対人ネットワーク」を形成していったこと、⑤また、この新たな保育スキ-マの創造は、保育における養護の再定位、もしくは養護(「存在のケア」)と教育との「一体」性の再検討を要請することにもなるほどの重大な出来事であったこと、などを明らかにした。 以上の成果を、論文(「保育スキーマの「継続的再構成」と組織的研修の役割に関する実践史的研究-ある自治体の公立保育所における年齢別保育目標・内容の形成過程に注目して-」) まとめ、『保育学研究』(第52巻第1号、日本保育学会)に採択・掲載された。 この成果をさらに発展させるべく、実践史研究において未発見の組織的研修会の発掘とその史料収集を継続した。また、保育における養護(ケア)の再定位という新たな検討課題に切り込むべく、教育・福祉分野で近年注目されている養護・ケアの思想・理論とその実践(史)的展開にかかわる文献の収集・検討を開始した。
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