2012 Fiscal Year Research-status Report
タクト豊かな教師の育成とリフレクションの関連に関する研究
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24531036
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Osaka Shoin Women's University |
Principal Investigator |
村井 尚子 大阪樟蔭女子大学, 児童学部, 准教授 (90411454)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 教師教育 / 教職の専門性 / 教育的タクト / リアリスティック・アプローチ / カナダ:オランダ:アメリカ |
Research Abstract |
本研究では、実践において教師や教育実習生、その他の子どもの教育に携わる者が出会った「教育的契機」における判断と行為を出来る限り現象学的な仕方でリフレクションする方法を開発することを目的としている。そうすることで、教育の現場における個々の状況においてより子どもにとっての未来の善に向けて感受性豊かに振る舞える「タクト豊かな」教育者を養成することができると考えるからである。この方法論はカナダのマックス・ヴァン=マーネンの現象学的教育学とオランダのフレッド・コルトハーヘンのリアリスティックアプローチを融合させることによって可能となる。 平成24年度の研究実績は以下の3点にまとめられる。 1.ヴァン=マーネンの「教育的タクト」論の理論的意義づけを行うために、①ドイツ教育学の流れの中にヴァン=マーネンの理論を位置づける作業、②アリストテレス以降の実践知の哲学的検討、③国内外の教育的タクト論の先行研究の分析を行い、日本教師教育学会年次大会において研究発表を行った他、『大阪樟蔭女子大学研究紀要』に2本の論文を投稿した。 2.彼の最新の著作である『教育的な感受性とタクト(仮題)』の翻訳を終え、ゆみる出版に原稿を提出し現在出版準備中である。 3.大阪樟蔭女子大学、沖縄キリスト教短期大学、奈良県香芝市教育委員会などで平成23年度から24年度にかけて教師を目指す学生や現職の学童保育従事者に向けて行った「教育的契機のリフレクション」および「リアリスティックアプローチを用いたリフレクション」の実践をまとめ、日本教師教育学会ワークショップ、東アジア教師教育学会年次大会、学事出版刊行の『授業づくりネットワーク第8号』にて発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、教育に携わる者や教師を目指す学生が、実践で経験した「教育的契機」を現象学的な仕方でリフレクションすることによって、よりタクトの豊かな教師になるというリアリスティックなアプローチを理論的(哲学的)に構築したうえで、実際に教師教育の現場で検証し、実証していくことを目指している。 平成24年度は、理論面での検討は当初の研究計画を大幅に上回る成果を上げることができた。具体的には、ヴァン=マーネンの著書『教育的な感受性とタクト』の訳出作業を完了したこと、タクト概念を裏付ける哲学的な検討を行ったこと、海外の関連・先行研究の検討を行ったことである。 ただし、教師教育の現場での検証は沖縄キリスト教短期大学や大阪樟蔭女子大学において実施したものの、まだその数は十分とはいえず、平成25年度以降に引き続き実施していきたいと考えている。 当初の計画からの異同は以下のとおりである。7月にシンガポールで行われた環太平洋乳幼児教育学会での研究発表を予定していたが、申し込み時期の関係で発表は行えず、参加のみとなった。その内容は(当初予定に組み入れていなかった)12月の上海での東アジア教師教育学会で発表した。また、オランダのユトレヒト大学においてフレッド・コルトハーヘン教授からリアリスティック・アプローチについての教授を受ける予定であったが、平成25年4月にサンフランシスコでワークショップが開催されることになったため、そちらに参加することに替えた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度以降の研究は以下の3点を中心に行っていく予定をしている。 1.ヴァン=マーネンの教育的タクト論の理論的検討を行い、平成25年8月にデンマークで行われるInternational Human Science Research Conference、日本教師教育学会等において研究発表を行い、また『大阪樟蔭女子大学研究紀要』等の国内の雑誌論文に投稿を行っていく。 2.教育的タクトの理論を教師教育の実践の場に活かす為に、コルトハーヘンのリアリスティック・アプローチを援用した実証研究を行う。平成25年4月にサンフランシスコで行われるコルトハーヘン教授主催のリフレクション・ワークショップに参加して実践力を高め、教師教育研究会のメンバーと協力して国内各地で行った実証研究の成果を平成25年7月に韓国で行われる環太平洋乳幼児教育学会や日本教師教育学会、乳幼児教育学会等で発表していく予定である。 3.研究成果を現職の教員にも広く周知していくために、平成24年に寄稿した『授業づくりネットワーク』に加え、新たに刊行される予定の教師教育関連の雑誌の編集委員として活動を行う予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度の研究費は以下のとおり使用を予定している。 1.物品費は主に現象学、教育学関連の国内外の文献を購入するために使用する他、研究成果を発表するために必要なコンピュータ関連の機器(プリンタ等)を購入する。 2.旅費に関しては、①韓国で行われる環太平洋乳幼児教育学会での発表②デンマークで行われる第32回国際人間科学研究学会(IHSRC)での発表が主たる費用であるが、その他に国内で行われる研究会、学会の参加費としても用いる(なお、平成25年4月のサンフランシスコでのリフレクション・ワークショップおよびアメリカ教育研究協会(AERA)参加のための航空券代は平成24年度に計上済みである)。 3.人件費、謝金は、実践を行うに当たって協力を依頼した研究協力者に対して支払う予定である。 4.その他経費は、主に学会やワークショップなどの参加費を予定している。
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Research Products
(9 results)