2012 Fiscal Year Research-status Report
国際モデルとしての「日本型」人格形成教育の考察ー国際比較を通して
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24531056
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
恒吉 僚子 東京大学, 教育学研究科(研究院), 教授 (50236931)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 日本型モデル / 全人的人間形成 / 教育の国際比較 |
Research Abstract |
世界的規模でのグローバル競争が意識される中、国際学力テストにおいて、日本は高得点国として知られ、国際モデルとしても評価されてきた。だが、例えば、日本の学校教育の「学力」面が国際的に注目される一方、学力面と不可分に結びついた人間形成面の仕組みは国際的にはほとんど認識されてこなかった。 今日、児童生徒の全人的な育成は、各国で21世紀の児童生徒の教育の重要な視点として推進されている。だが、多くの国で、こうした人間形成面での育成は、カリキュラムの中で体系的に位置付けられてこなかった。こうした中で、「日本型」は、狭義の「勉強」を越えた教育の仕組みを体系的にカリキュラムの中に位置付け、国際的にも参考となりうる特徴を持って展開されている。「日本型」人間形成教育の特徴や課題を国際的文脈で分析し、国際的に知られていない本分野での日本型モデルを海外に発信することによって、国境を越えた対話に貢献することが本研究の重要な目的の一つである。 本年度は、研究実施計画に沿って、海外における日本型の人間形成教育の国際的な言説分析、国内調査、海外発信に向けた仕組み作りを行なった。上記、国際社会での言説を踏まえてJapanese Whole Child Education Homepage(http://www.p.u-tokyo.ac.jp/~tsunelab/tokkatsu/)を立ちあげ、日本型の全人的な人間形成教育の「型」を海外に示した。その中では、「日本型」全人的な人間形成教育の軸となる特別活動の教師の研究会資料の英文版ガイドブック(The World of Tokkatsuとして再編、ダウンロード)、海外関連研究者との対話(追加中)等、今まで海外において知られてこなかった「日本型」全人的な人間育成教育の仕組みを示すような発信内容をターゲットした。また内外の教師が読む出版物で積極的に発信した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究が「おおむね順調に進展している」と判断した理由は以下の通りである。それは、本研究における、「日本型」の人間形成教育を国際的な文脈において位置付けるという作業を踏まえ、それを国際的に発信してゆく作業が順調に進んでいること、そして、それに対して、内外の研究者、教育者、教育政策関係者からリアクションが増えつつあることによる。 発信の種類は以下の三点をターゲットし、本年度の目標を達成している。1)海外の教員・教育政策関係者がすぐに参考にし、日本型の全人的人間形成教育の内容と仕組みがわかる英文ホームページを作成、そこから、英語での特別活動の教員ガイドブック等をすぐにダウンロードして参考にできるようにした。2)アメリカ・イギリスでの教員用の指導事典(Sage)で日本型の全人的人間形成教育について書いたり、教師用教育誌(『道徳と特別活動』『初等教育資料』)で本テーマについて執筆する等の実践者の問題関心を喚起すると同時に、アメリカの出版社から英文での本テーマの本を執筆することを交渉中である。3)来年度に向けた海外調査も順調に進みつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
「日本型」全人的な人間形成教育の仕組みを海外の研究者・教育関係者が理解しうる素材を提供しつつある今年度の結果を踏まえ、次年度は国境を越えた研究者・実践者の対話や国際比較調査の部分を積極的に推進し、それをもとにさらに国際的に発信をする計画を立てている。 今年度のホームページ、内外執筆活動の結果、海外からも関心を抱く研究者・教育者の連絡が増えている。全面的な人間形成の推進は各国の教育改革で課題となっているテーマであり、国境を越えた対話の意味は大きい。今後は研究の出版(日米の出版社と交渉中)と共に、日本の教育者が本テーマに関して国境を越えてネットワークを築く支援を考えてゆく。 現在、アメリカの海外協力者を招聘し、国内の特別活動関連の初等教育組織と共催で国際シンポジウムを開催する日時も決定し、海外調査(韓国、シンガポール)の交渉も行なっている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今年度の海外調査を次年度にまわした関係で、繰越を行なった(理由書参照)。それに関連し、海外協力者の招聘、海外調査を現在進めている。次年度は今年度で大半完成した電子媒体の発信を強化することに加え、海外調査、国際シンポ等が主たる使用項目となる予定である。
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Research Products
(7 results)