2013 Fiscal Year Research-status Report
イスラーム宗教指導者の現代的養成と宗教間融和に関する国際比較研究
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24531064
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
服部 美奈 名古屋大学, 教育学研究科(研究院), 准教授 (30298442)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
西野 節男 名古屋大学, 教育学研究科(研究院), 教授 (10172678)
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Keywords | 国際情報交換 / インドネシア / マレーシア / イスラーム宗教指導者養成 / 宗教間融和 |
Research Abstract |
本研究は、イスラーム共同体の意思形成の思想的・精神的要となるイスラーム宗教指導者が現在の教育機構のなかでいかに養成されているのか、そしてイスラーム宗教指導者たちはイスラーム学の伝統を維持する一方で、多宗教間・多元的価値の共存に必要な宗教間融和をいかなる形で促進しているかを明らかにすることを第一の目的とする。そして、最終的には宗教間融和に果たす宗教指導者の役割に関する提言を行うことを第二の目的とする。 2013年度は主に2つの研究を実施した。第一に、継続してインドネシアを中心にイスラーム宗教指導者の現代的養成に関する分析・現地調査を実施した。現地調査にあたってはイスラーム宗教指導者を輩出している教育機関やイスラーム組織、さらに当該社会に深い思想的影響を与えているイスラーム宗教指導者を選定した。分析項目・枠組みは以下の2点である。①イスラーム宗教指導者養成の歴史的推移と現状を分析する。②イスラーム宗教指導者の思想的特徴について、特に現代的要請である宗教間融和の観点から分析する。現地調査は、インドネシア南カリマンタン州と中部ジャワ州のイスラーム寄宿学校(プサントレン)で実施した。 第二に、比較対象としてヨーロッパ(トルコ、オランダ)におけるイスラーム宗教指導者養成に関する文献収集を行った。オランダを考察対象としたのは、西欧諸国に多くの移民を送り出してきたトルコ人ムスリムが、その移住先でイスラーム宗教指導者を生み出し、マイノリティ・ムスリムに深い影響を与えていることによる。またトルコはギュレン(M.Fethullah Gulen: 1941-)をはじめ、新しい指導者を輩出する国として注目に値することによる。 上記の研究の結果、現代のイスラーム宗教指導者養成には顕著な差異がみられることが明らかになった。また宗教間融和のための教育実践には課題がみられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究目的からみて、2年目の研究は概ね達成された。具体的には、イスラーム共同体の意思形成の思想的・精神的要となるイスラーム宗教指導者が現在の教育機構のなかでいかに養成されているのか、そしてイスラーム宗教指導者たちはイスラーム学の伝統を維持する一方で、多宗教間・多元的価値の共存に必要な宗教間融和をいかなる形で促進しているかに関して、インドネシアに関しては現地調査、ヨーロッパに関しては資料収集・分析を行った。同時に、宗教間融和に果たす宗教指導者の役割に関する提言の基礎資料を収集することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度の研究活動は、1)インドネシア・マレーシアに関する研究成果の総括、2)トルコ系イスラーム宗教指導者養成に関する分析および現地調査の実施、3)国際シンポジウムの実施である。第一と第二の点に関しては、イスラーム宗教指導者に関する情報収集および宗教指導者へのインタビューを継続して行う。インドネシア・マレーシアについては補足資料を収集し研究の総括を行い、トルコ系イスラーム宗教指導者養成に関しては、文献収集とともに現地調査を実施する。トルコおよびオランダ調査を実施する理由は、上述したように西欧諸国に多くの移民を送り出してきたトルコ人ムスリムが、その移住先のオランダ社会のなかでイスラーム宗教指導者を生み出し、マイノリティ・ムスリムの価値形成に深い影響を与えていることによる。またトルコは近年、イスラーム世界で新たな教育活動を展開するギュレン(M.Fethullah Gulen: 1941-)をはじめ、新しい指導者を輩出する国として注目に値することによる。 第三に、国際シンポジウムを実施する。シンポジウムでは、各地域の専門家およびイスラーム宗教指導者を招聘し、イスラーム宗教指導者の現代的養成、宗教間融和における宗教指導者の役割に関する情報を共有し、国際比較の観点から考察を行う。その際、対象とする地域はインドネシアとマレーシアおよび、トルコ、オランダである。対象国の選定理由は上述した通りであるが、加えてオランダはライデン大学や現代イスラーム研究機構(International Institute for the Study of Islam in the Modern World:ISIM)等においてイスラーム研究が発展しており、それらの研究機関との交流が研究課題をさらに深化させると考えたためである。この国際シンポジウムの成果は最終的に書籍として刊行する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成26年度は本研究課題の最終年度であり、トルコ・オランダでの現地調査および国際シンポジウムを予定している。この最終年度の研究計画執行のために、平成25年度分の予算の一部を平成26年度分の予算と合わせて使用することで、助成金をより有効に活用できると考えた。 上記の理由から、以下の2項目での使用を計画している。 1)トルコ・オランダでの現地調査費用(2014年8月下旬、2014年12月下旬、2名) 2)国際シンポジウム開催費用(日本・名古屋大学)(2015年2月予定)
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