2014 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
24531070
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Research Institution | Kyushu Institute of Technology |
Principal Investigator |
東野 充成 九州工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (90389809)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 新自由主義 / 保育所民営化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、1990年代以降全国各地で展開された保育所民営化裁判を取り上げ、保護者はどのような論理で保育所民営化に反対したのか、行政はなぜ民営化を進めようとしたのか、こうした主張・反論に対して、裁判所はどのような判断を示したのか、保育所民営化をめぐる言説の布置を分析した。また、この課題と付随して、各地の地方議会における民営化問題の論争過程についても分析した。 その結果、以下の諸点を明らかにすることができた。①保護者は「子どもの発達保障の論理」に基づき民営化に反対した。②行政は「行財政改革の論理」に基づき民営化を推進した。③しかし、どちらの論理とも、論理的な陥穽を有していた。前者では公立至上主義へと横滑りする危険性があること、後者では公立保育所の廃止が保護者の選択権の保証という新自由主義のテーゼと矛盾することなどである。 一方、裁判所の判断は二分された。民営化を是とする判決が多数存在する一方、民営化を否とした判決も一定程度存在した。民営化に反対する判決が出された背景には、民営化反対論者が積み重ねてきた言説的実践の重み、「子どもの権利」概念の成熟化などを指摘することができる。 議会の論議は民営化そのものよりも、民営化を進める手続きに比重が置かれていた。すなわち、首長の民営化の進め方が問題視されることが多かった。このように、裁判所と議会のように、議論される場が異なる場合、保育所民営化という同じ問題であっても、言説のフレームが変化することが見出された。
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