2013 Fiscal Year Research-status Report
通信制高校の実態と実践例の研究-若者の総合的支援の場としての学校のあり方
Project/Area Number |
24531071
|
Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
阿久澤 麻理子 大阪市立大学, 人文社会系研究科, 教授 (20305692)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
弘田 洋二 大阪市立大学, 人文社会系研究科, 教授 (60285278)
矢野 裕俊 武庫川女子大学, 文学部, 教授 (80182393)
|
Keywords | 通信制高校 / 教育の規制緩和 / 社会的条件不利 / 若者支援 |
Research Abstract |
本研究は、初年度(2012)を関西の私(学校法人)立通信制高校とその技能連携校の聞き取りにあて、2013年度は関西・中部・関東地方の私立・株式会社立の通信制高校と技能連携施設・サポート校の聞き取りを行った。ここ数年の増加の大半を占めるのが私立・株式会社立であり、ここに焦点の絞ることで、全日制あるいは公立学校が包摂できずにいる子どもたちの課題を明確にしたいと考えた。 いずれの学校も高い割合で不登校経験のある生徒を受け入れ、病気、障がい、発達特性、経済的困難層も相当の割合で在籍する。進学校やスポーツ進学校で競争的環境に「折れてしまい」編転入した生徒も少なくない。通信制高校には、登校支援,学習支援,特別支援など多様な支援を求める生徒が在籍する。不登校経験者に対し、多くの高校は「毎日通える」コースを置き、登校日数を増やせるようにしている。学習支援等のメニューも多数ある。しかし広域制の場合、本校に通える生徒は限られ、また、通学日数の増加や支援メニューの活用は、すべてプラスアルファの経済的負担となる。一方、発達障害の生徒の支援ニーズがある、と回答した学校は多かったが、具体的支援の内容は「テストでの文字拡大」「レポートでの配慮」などに留まった。本人・保護者の障害の受容・開示がなければ特別な支援につなげづらく、多岐にわたる症状への個別対応も登校機会が少ない通信制では難しい。 これに対して、日々の生徒の支援を担うのが、技能連携施設やサポート校である。フリースクールや若者支援を行うNPOが参入し、社会に若者をつなぐ活動を中心に行い、通信制での高卒資格取得の支援はその活動の一部にすぎない。法的規制のない「サポート校」への批判の声もあるが、こうしたNPOの側にたつなら、むしろNPOが「通信制高校」を主体的に活用し、若者が学力をつけ、社会に出るためのサポートを行っていると考えることができる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2012年度は関西中心に私立通信制高校と技能連携校、2013年度は関西・中部・関東地方の私立・株式会社立の通信制高校と技能連携施設・サポート校の聞き取りを行い、順調に2014年度(最終年)の公立通信制高校の調査に移行している。
|
Strategy for Future Research Activity |
私立・株立学校の調査を終え、改めて「公立」が担うべき役割とは何かを検討する。2014年度は、近畿一円の公立通信制高校への聞き取りを行い、「公立学校の教育的責任」「卒業資格授与だけではない、公立高校の全人的な教育への取り組み」について検討したい。 また、このことを踏まえて、改めて3年間の調査を振り返り、通信制高校および、「通信制高校とつながる」施設(技能連携校・施設、サポート校)が、社会的条件不利のもとにある若者の教育権保障と、「教育」から「社会」へと移行支援において果たす役割について分析する。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究分担者の1人が遠隔地での出張調査に、日程上の困難から参加できなかったために出張費用として見積もっていた分が残り繰り越された。また、テープおこしをアルバイトに依頼せず、研究代表者が自分で行った分がいくつかあったため。 最終年度は、公立学校(近畿、四国)への聞き取り調査、および大阪市が教育特区を認可され開校されたルネッサンス高等学校(株式会社立)、またサポート校でこれまでに調査してこなかったパターンのものについて補足調査をする。主としてそのための交通費、インフォーマントへの謝金、また、年4回の研究会のための費用(研究協力者謝金等を含む)、報告書作成費として試用する。
|
Research Products
(3 results)