2013 Fiscal Year Research-status Report
公立中・高等学校の女性校長の登用とキャリア―47都道府県第1号の分析に基づいて―
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24531074
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Research Institution | Uekusa Gakuen University |
Principal Investigator |
高野 良子 植草学園大学, 発達教育学部, 教授 (00350190)
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Keywords | キャリア形成 / 女性校長 / 男女共同参画 / 教職ジェンダー / 女性管理職 |
Research Abstract |
本研究は、公立中学校および高等学校を対象とし、47都道府県において第1号(以下、第1号)役割を担った女性校長達は、どのような政策要因のもと、どのようなキャリアを持った教員が登用されたかを、統計資料、地方新聞、地方教育史などの史・資料および面接調査をとおして実証的に明らかにすることにある。 1年目の24年度は、女性校長に関する文部科学省及び各県教育委員会が公表している統計資料の整理を行い、1948年以降の女性高校長第1号データ(登用時の年齢・家庭背景、学歴、担当教科、登用前キャリアなど)の収集を県別に把握した。高校第1号データと併行して、第1号(2名)への面接調査等も実施したことで、キャリア形成に関する有効な知見が得られている。 2年目の25年度は、中学校第1号に関する県別データの収集・整理を行い、47都道府県全ての第1号を特定した。第1号データ属性は、高校と同様である。さらに、第1号(中高各1名:千葉県と新潟県)への面接調査等も実施したことで、キャリア形成に関する有効な知見が得られている。これらについては、以下欄に示すように、学会発表と論文にまとめ広く公表をしたところである。 先行研究の学校女性管理職研究では、小学校については、高野(2006)らにより概ね明らかにされているものの、中学校と高校の各県第1号の登用とキャリアは殆ど検討されて来なかった。現在、政府は、「2030」(2020年を目途に指導的地位にある女性を30%にする)を目標値として掲げているが、学校教育の場では60年以上も前に女性校長を誕生させ、女性リーダーのパイオニアとしての役割を教育の場から発信し続けてきた。それゆえ、①女性登用を促した政策要因、②第1号の県別登用年度とキャリア、③学校段階による女性登用上の違いをデータ等により実証的に明らかにする点に本研究の意義と重要性を見出すことができよう。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、第1号の基礎データと彼女たちの置かれた状況の分析をとおして、教育の場における男女共同参画の推進に寄与することを目的としている。 2年目となる25年度の達成度は以下のように捉えている。計画した高校と中学校の女性校長第1号のデータ収集は、既存の統計資料、地方新聞、地方教育史、女性史などと併せて、第1号等へのインタビュー調査と基礎データを整理し、それらに基づき分析を行った。結果は以下のとおりである。 本研究は,47都道府県の公立中学校と高校の女性校長登用のパイオニア期を担った女性初,すなわち女性校長第1号の登用過程を女性小学校長第1号とも比較しつつ,<教職ジェンダー>というフィルターをとおして歴史的に照射することを意図したものである。研究方法は,量的調査法により,文部科学省等の統計調査と地方新聞,地方教育史,退職女性校長会機関誌等によりデータを収集した。このような手続きを経て、目的②に相当する第1号の県別の登用年度を特定した。目的①の政策要因については、第1号登用は,第I期1940年代と第II期1980年代以降という2つの山があったことが明らかになったことより、第I期は,一連の占領政策,教育の民主的な政策の一環としてもたらされたものと捉えられる。第II期は,男女共同参画推進の一連の動きが,女性校長登用の追い風として機能したことが示唆される。加えて、中・高校の女性校長第1号が登用されて50年以上を経ているにも関わらず,2012年度現在,女性校長が一人もいない「ゼロ県」が高校で3府県ある。さらには「独り県」が中・高校で未だ8県あることも指摘した。これらより、所期の目的は概ね達成できたと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
安倍政権は成長戦略として、社会のあらゆる分野で2020年までに女性が指導的地位に占める割合を30%以上とする目標を掲げ、「女性活躍推進」への機運が高まっている。 本研究は、これまでほとんど研究対象とされていない中学校と高校の女性校長を研究対象とする点と、各県第1号の登用過程とキャリアの分析を試みるという視点に、学術的な特色や独創的な点を持ち、従来の女性管理職研究に新たな知見を加えることが予測される。また、女性管理職研究において不十分だった中学校と高校を対象とすることで、学校教育における男女共同参画の全体像を描くことに寄与する可能性があると考えている。 初年度は、高校を対象とし、各県第1号に関する都道府県別データの収集・整理にかなりの時間を費やした。2年目は、計画どおり、中学校の女性校長第1号データを県別に把握し、これらを統合して、中・高校における47都道府県の第1号登用の全体を明らかにした。最終年度は、小学校第1号との比較も加え、小・中・高の3つの学校段階における女性校長の登用およびキャリア形成上の類似点や相違点などについて、収集したデータと個人情報には十分な配慮をして実施した第1号への面接調査等に基づいて分析・考察する。 まだまだ低率段階にある女性校長登用推進のための課題を論じ、従来の女性管理職研究に新たな知見を加え、学校教育分野に期待される男女共同参画の全体像を描くべく進める。また、研究成果を関係の学会等にて発表を行うとともに成果物としてまとめ、男女共同参画社会を担う女性・男性のキャリア形成について考えるための報告会を行い、研究と実践を繋げるための場を設定したいと考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今年度の研究計画は概ね達成することができたが、データ収集に時間を要したことにより、当初予定では、昨年度と同様に2~3県2~3名へのインタビュー調査を計画していたが、2県2名の実施となった。また、第1号の現在年齢は80歳を大きく超えており、インタビューに直接応じるのではなく、電話によるインタビューを受ける方法を希望される、もしくは、文書での回答方法を選択された。このような事情により、旅費やテープ起しなどの記録に要する費用に残額が生じることとなった。最終年度には、これら質的データの分析を加えながら、小学校と中・高校との女性登用上の違いをデータ等により実証的に明らかにしていく。 本年度は当初の計画どおり、学校段階を高校から中学校に移し、初年度と同様に、「学校基本調査」「学校教員統計調査」(1947年-2012年度版)により、47都道府県で女性公立中学校長の第1号が登用された年度を確定し、次に、地方新聞や地方教育史などの記載内容より、第1号の氏名と赴任校、登用の経緯、基本属性(登用前キャリア、担当教科名、最終学歴など:未記入も想定される。)を収集し全体を把握した。最終年度となる26年度は、小学校第1号との比較も加え、小・中・高の3つの学校段階における女性校長の登用およびキャリア形成上の類似点や相違点などについて成果物としてまとめ公表する。次年度使用予定の研究費は、そのための費用の一部に充当する。 第1号に関する資料は、他分野のパイオニア研究においても有用なだけでなく、教育のみならず企業等における女性登用のための基礎資料としても広汎な利用価値があると考えている。
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Research Products
(2 results)