2012 Fiscal Year Research-status Report
大学事務組織機能評価基準の新たな開発とその応用―事務組織と職員能力について
Project/Area Number |
24531076
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
各務 正 順天堂大学, 企画調査室, 部長 (00398661)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
秦 敬治 愛媛大学, その他部局等, 教授 (50444732)
山崎 その 京都外国語大学, 公私立大学の部局等, 学長事務室長 (70449502)
檀原 高 順天堂大学, 医学部, 教授 (30102263)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 大学職員 / 事務組織 / ジョブ・ディスクリプション / 職務記述書 / 機能評価 / 評価基準 / 職員能力 / 職務 |
Research Abstract |
この研究の目的は、大学の運営・経営に果たす事務組織の活動を、効率性という観点から評価する機能評価基準の開発にある。わが国の大学の事務組織は、各別に多様な形態をもって発展してきた結果、大学の諸活動を所掌する事務組織のマネジメントは個別的で外部からは分かりにくく労働の流動性も低い。この研究では機能評価基準を明らかにすることによって、効率性の高い事務組織や高度化された職員が獲得している要素(機能)を可視化する。この成果は、事務組織の日常活動に関する認証評価作業や職員の職能向上のためのSDプログラム開発などに寄与し、事務組織や職員を費用対効果から管理するという基本的な経営観点の理解を深め、大学における事務組織の役割についてのアカウンタビリティ(社会的説明責任)を果たす意義がある。 初年度(平成24年度)は、当初計画に沿って、4つの作業を行った。①現状の事務組織の特性を明らかにするために、各種認証評価基準や公開されている事務分掌規程を解析し、その成果の一部を学会で発表した。②①と関連するが、職員に求められる能力(機能)について、アメリカの大学職員におけるジョブ・ディスクリプション(職務記述書)を調査し、日米の組織マネジメントの違いを折込みながら職務と評価の関連性をまとめ、実務者向けの研修会で発表した。③これらの作業を踏まえ次年度調査訪問予定の米国ワシントン大学の上級スタッフへの聴き取り調査を日本で行い、ジョブ・ディスクリプションの具体的な作り方、職員の組織において果たす機能等について意見交換を行い、次年度訪問調査の打合せ等を行った。④以上の作業から、事務組織と職員に関する機能評価基準を策定し、これを元に次年度実施予定のアンケート質問項目を作成した。試作したアンケート調査紙の予備調査を研究会によって行い、研究倫理委員会への審査申請書の準備を完了した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度(平成24年度)は、当初計画として、①現状の事務組織の特性と、②機能評価基準と職員の職能を明らかにし、これらに基づき次年度実施予定のアンケート調査紙の作成を目標とした。 ①:公表されている事務分掌規程を調査対象にテキストマイニング手法を活用して、職員の日常活動を、教務系、人事系など職務カテゴリ毎に「実務実践行動」、「要求知識」、「対人関係」という職員活動の類型化を行い、分掌規程を分析した。この結果、職員の職務毎の諸活動の特徴や相違を明らかにすることができ、職務カテゴリ毎に職員活動を見える化した。なお、欧米のジョブ・ディスクリプション(職務記述書)の例をみると、職員の執務に関する英語表現において、例えばassist、support、serveなど、日本語よりも職員の行動をはっきり指示することのできる単語も多く、今後の参考とした。 ②:機能評価基準の検討にあたっては、①の結果を含め認証評価機関等における事務組織評価項目の検討、ジョブ・ディスクリプションの構成要素に関する解析、ジョブ・ディスクリプションの利活用について米国上級人事スタッフ聴き取り調査等を行った。職員の職能については、職務担当に必要な能力(コンピテンス)として、米国大学職員団体が提案している学生専門職の職能コンピテンスなどを批判的に検討して、人間関係、状況認識、認識行動、探求性、社会性、教育支援、評価方法、人的資源、リーダーシップ・人間関係、教育指導等を策定した。 ①と②から事務組織と職員についての機能評価項目をまとめ、アンケート調査用の質問紙を作成した。次年度において、アンケート調査やインタビュー調査等の分析結果から更に機能評価項目を絞り込む作業を予定している 以上、当初計画通りの研究成果状況から概ね順調に進展していると自己評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究推進方策は、当初計画通り、策定した機能評価基準に関する検証をアンケート調査、ヒヤリング調査、研究会(含成果報告)をもって行う計画である。 次年度においては、①大学職員の職能団体である大学行政管理学会の協力を得て所属会員(職員)に対して研究倫理委員会審査後にアンケート調査を実施する。調査用紙は、初年度の研究で策定した事務組織と職員に関する機能評価基準に基づいて作成済みである。この調査により、策定した機能評価基準が効率性の観点から事務組織や職員が行っている諸活動との間で相関があるかを検証する。 ②全国の国公立大学学長と私立大学理事長宛にアンケート調査を行う。今回策定した機能評価基準と①の職員アンケート調査結果について、学長/理事長の立場から評価戴き、さらに策定した事務組織や職員に関する機能評価基準の日常活動での利活用についての意見等を聞く。また、この学長・理事長アンケート調査によって事務組織の運用においてグッドプラクティスをしている大学を選び、学長/理事長に直接インタビューを行う。インタビューでは、策定した機能評価基準に基づく事務組織/職員の日常活動評価について意見交換等を行う。 ③策定した機能評価基準をもって米国・ワシントン大学の人事担当者、教学担当者に聴き取り調査を行う。日米の組織管理体制の相違を理解しつつこの研究において策定した機能評価基準のもつ汎用性と個別性について意見交換等を行う。ジョブ・ディスクリプションの日常での利活用と職員評価との関係についても追加調査する。 ④最終年度(平成26年度)は、実施済みのアンケート調査やヒヤリング調査等の再検討に加え、この研究が事務組織と職員の機能評価に関する新たな検討であることを鑑み、この研究領域に通暁した研究者との意見交換や大学関係者等との研究会を広報も兼ねて開催する。これらの成果をまとめ、この研究の最終報告を取りまとめる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当該研究費が生じた状況は、2つある。一つは、当初予定していたITデバイス購入を一部中止したことである。当初、研究打合せ等を行う時に購入予定のITデバイスや電話等を活用する予定であったが、この研究は、事務組織と職員の機能評価に関する新たな検討であるため、研究者同士が当初計画よりも数多く直接会合をもつことの必要性が生じた。研究打合せ用旅費支弁のために、当初購入を計画していたITデバイスの購入を一部中止し、当初予算計画を一部変更した。 二つ目は、一つ目と関連するが、研究打合せのための旅費確保のために、大学職員に対する無記名のアンケート調査の郵送・回収・データ集計の作業にかかる経費支弁を中止した。この研究発足後に、メディア教育開発センター(2010年放送大学ICT活用・遠隔教育センターに移管)が無料で公開している研究・開発したリアルタイム評価支援システム(REAS)のアンケート・システムを利用することが可能であることがわかり、このシステムによって郵送・回収・データ集計の作業を行うこととした。このことによって当初予定していた調査実施に関する予算の執行を中止し、研究打合せ会関連予算にあてた。 研究打合せ会開催にあたっては研究員全員の参集を前提として予算計画を立てていたが、公務等で都合がつかない場合があり、旅費等に関する予算の執行については、当初計画通りの研究費使用とはならなかった。 翌年度以降に請求する研究費と合わせた使用計画としては、翌年度以降においても当初計画よりも頻回に直接研究員全員が集まり研究打合せ等を行う必要性があることから、この研究の当初予算計画に合わせ旅費等の経費支弁のために使用する計画である。
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Research Products
(6 results)