2013 Fiscal Year Research-status Report
大学事務組織機能評価基準の新たな開発とその応用―事務組織と職員能力について
Project/Area Number |
24531076
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Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
各務 正 順天堂大学, 企画調査室, 部長 (00398661)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
秦 敬治 愛媛大学, 学内共同利用施設等, 教授 (50444732)
山崎 その 京都外国語大学, 公私立大学の部局等, 総合企画室参事 (70449502)
檀原 高 順天堂大学, 医学部, 教授 (30102263)
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Keywords | 大学職員 / 事務組織 / ジョブ・ディスクリプション / 職務説明書 / 機能評価 / 評価基準 / 職員能力 / 職務 |
Research Abstract |
この研究の目的は、大学の運営・経営に果たす事務組織の活動を、効率性という観点から評価する機能評価基準の開発にある。この目的達成のために、初年度において、大学職員の日常活動を規定している事務組織規則を検討し、合わせて日本の事務組織規則と比較検討するために、米国において大学職員の日常活動を規定しているジョブ・ディスクリプション(職務説明書)を検討した。 本年度は、初年度の研究成果から当初計画に沿って3つの検討を行なった。①初年度で得られた大学職員の知識、技術、態度等の情報を基にしたアンケート調査を全国の大学職員に行い、大学職員の日常活動の特性を明らかにした。②この大学職員に対するアンケート調査結果に基づき、大学職員の日常活動についての評価を、全国の国公立大学学長と私立大学理事長を対象として、学長・理事長アンケート調査を行なった。③日本における大学職員の活動の特徴を解析するために、米国ワシントン大学に大学職員の日常活動に関するヒヤリング調査を行った。彼らとの討議の結果、人事関係業務と教学関係業務についての詳細なジョブ・ディスクリプション等の情報を取得した。 本年度の研究において、日米の大学における事務組織マネジメントでは双方とも「課」を中心とした組織運営が行なわれているが、日本の事務組織規則には大学職員が担当する職務に関する説明機能がなく、米国ではそれが公開され、事務組織を効率的に運営するために大学職員の日常活動に関する職務説明を詳細に規定していることが明らかとなった。大学職員の管理は、人件費に反映する。効率性をもって事務組織を運営するためには、配置する大学職員の管理を適切な職務説明をもって行なう必要があり、かつ、その職務説明をもって業務の評価基準とする管理方法を明らかにした。このことによって、この研究の課題である組織機能評価を策定するための重要な示唆を得ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
この研究は、1年度目において、①事務組織の特性を明らかにする。②米国大学のジョブ・ディスクリプション(職務説明書)の事例を研究する。2年度目において、③大学職員の日常活動に関するアンケート調査を実施する。④大学職員からのアンケート調査結果について学長・理事長にアンケート調査を行う。⑤ジョブ・ディスクリプションの実際を米国現地調査する。3年度目において、⑤これらの研究成果から得られる事務組織機能の評価基準について、一般企業の方や学長等とのヒヤリング調査や学識経験者を招聘した研究会等を行い、客観的な検証を行い最終成果を出すという研究計画である。 本年度までの研究において、日本においても米国においても、事務組織活動の要は課長職にあるが、日米のマネジメントにおける差異は、大学職員に与えられる職務指示の有無にあることを明らかにした。すなわち、日本の課長職への業務指示は、「課長は、上司の命を受け、その所属職員を指揮し、当該事務組織の事務を掌理する」と業務指示が曖昧で具体的ではない。他方、米国の事例を調査すると、マネージャは、権限の委譲のもとでスタッフの配置やアシスタントの利活用等の人材管理、必要な予算執行なども含めて、何をどうすると具体的に職務の説明がある。そしてこの規定に基づき業務評価がアウトカムから具体的に実施されている。この米国の事例のように、職務指示を明確にすることによる組織管理は、効率的な組織機能の評価基準を具体化するものとして注目できるものである。職務説明が機能評価基準を設定する場合の要点であることを解明できたことは、この研究計画においては、非常に重要な到達点である。本年度は、これらで得られた知見等について、ディスカッションを多用し、講演や学会等の機会を利用して広報した。 以上、当初計画通りの研究成果状況から概ね順調に進展していると自己評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究において、本研究課題の解明のキーワードとして、大学職員の日常活動に関する職務説明の重要性を明らかにしている。 大学職員の日常活動の管理は、人件費に反映し、費用対効果の観点からすれば効率性に関係する。日本では、事務組織における大学職員の管理は、事務組織規則を中心とした諸規約によって整備されているが、これまでの研究結果から、事務組織規則においては、「課」における業務内容の記述はあるが、個々の大学職員の日常活動を詳細に説明するという実態は明らかとはならなかった。日常活動の枠組みが明確に規定されていない現状は、部署に配置している個々の大学職員の日常業務を規定しないばかりか、評価する基準も整備されていないということを意味する。 日本においては、米国のジョブ・ディスクリプション(職務説明書)のような個々の大学職員の日常活動を規定するという労働環境に馴染みをもつところではない。しかし、少なくとも日常業務を詳細に規定する説明や基準がなく、これに準拠すべき評価基準もないという実態は、大学の事務組織の機能を評価する場合において、根本的な障害として理解されるものである。 今後の研究推進方策は、本研究における仮説、すなわち、「事務組織の機能評価は、大学職員の日常活動の評価基準となる職務説明の整備状況に依存する」をもって、当初計画から準備している学長・理事長や、一般企業の方や学識経験者等との方とのディスカッションを行ない、この研究における仮説の妥当性や信頼性等について検証する。これらの結果、本研究の課題である事務組織の機能評価基準に関する重要な知見が得られるものと想定している。これを今後の研究推進の方策とする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当該助成金が生じた状況は、2つある。一つは、米国ワシントン大学にヒヤリング調査を行った際に、訪問先の上級幹部職員のご配慮により、滞在期間中において支出予定であった現地での交通費や打ち合わせ経費等の諸経費について、全額を先方にご負担いただくことができた。このため、調査経費として計上していた当初予算額をほとんど使用することなく、当初目的どおりの成果をあげることができた。 二つは、2014年の1月と2月に研究打合せ会を予定どおりに開催した。開催にあたっては研究員全員の参集を前提として日程調整を行なっていたが、開催直前において、病気や公務等の都合で複数の研究員の出席ができない事態が生じた。このため当初予定していた旅費等に関する予算の執行が行なわれずに、当初計画通りの研究費使用とはならなかった。 翌年度以降に請求する研究費と合わせた使用計画としては、2つある。一つは、次年度がこの研究計画の最終年度となることから、最終報告書をまとめるに際して、当初計画においても研究打合せ会を計画しているが、より質の高い最終報告書を作成するために、当初計画よりもさらに頻回に研究打合せを開催する計画としている。そのための旅費交通費等に支弁する。二つは、本年度実施した学長・理事長アンケート調査の報告を当初は回答をいただいた学長・理事長のみに送付予定であったが、これを全大学に送付し、この研究計画によって明らかとなる事務組織機構の機能評価のあり方について広く広報し紹介することとしている。そのための印刷製本費と送料の予算として利用する。これらの理由により当初予算計画に合算して経費支弁のために使用する計画である。
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Research Products
(8 results)
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[Presentation] SD論2013
Author(s)
各務 正
Organizer
四国地区大学教職員能力開発ネットワーク
Place of Presentation
愛媛大学
Year and Date
20130525-20130525
Invited