2013 Fiscal Year Research-status Report
学校の機能分化と同僚性の再構築に関する教育社会学的研究
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24531079
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
油布 佐和子 早稲田大学, 教育・総合科学学術院, 教授 (80183987)
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Keywords | 学校の機能分化 / 主幹教諭 / フィールドワーク / 職務分析 / 同僚性 |
Research Abstract |
平成25年度は二つの領域で研究を進めた。 第一は、主幹へのインタビュー調査である。学校の機能分化を<校長―副校長―主幹―主任―教諭>という職階制にもとめ、新しく配置された主幹に、彼らに寄せられている期待と活動について調べた。フィールドとしては、東京都と滋賀県の栗東市・大津市を取り上げた。早くから主幹制度を導入し、合理的な見地から学校組織の管理運営を再編実施しようとしている東京都に対して、滋賀県のインタビュー調査から明らかになったことは、現場が主幹に期待している役割が、東京とは大きく異なるということであった。滋賀県のインタビュー対象となった主幹教諭は、管理職―教諭をつなぐ役割、いわば、学校内の調整役としての役割を自認しており、そのことから、主幹の配置が、学校における職務の明確化という課題にはつながっていない状況が見て取れた。 第二に、アメリカ・カナダオンタリオでの聴き取り調査を実施した。オンタリオにおける聞き取り調査では、本研究の目的を見たとき予想以上の成果を得ることができた。例えば、オンタリオ州の教師は、わが国の教師と同じような広範で親身な教育活動をしているが、例えば部活指導をとっても明らかなように、それは彼らの善意・サービスとして行っているのであり、したがってそのための労働条件の交渉が行われていた。学校の機能分化には職務の明確化が欠かせないが、オンタリオでは、こうした「本務」以外の活動について、非常に細かな労働協約がなされているのである。また、こうした背景には、教員組合による教師の労働への研究と運動が存在した。 「学校の組織運営の在り方について」(文部科学)が意図したような学校の組織体制の再編整備は、わが国の現場サイドでは必ずしも意図されたようには具現化しておらず、したがって、実態をより明確にするとともに、こうした状況の背景を探ることも次の課題としたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度の研究については、ほぼ予定通り実施できたが、前年度に勤務校における業務過多のため実施できなかったフィールドワークを、今年度において、カバーしきれなかったため。
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Strategy for Future Research Activity |
主幹の役割と活動について、わが国の状況をより正確に把握することに集中する。東京都と滋賀県に見るような違いについて、全国的な布置状況を押さえるように努める。 オンタリオでのインタビュー調査は非常に有益であったため、教育委員会、教員組合などのインタビューも含めて、教員の職務、教員評価、教育政策に関する組合の活動等々について追加調査を実施する。 また、教育における「機能分化」についてケアワークをにらみながら、原理的観点から考察を深め、日常の活動の中で、教師が「個人の職務」として責任を負う範囲や領域について検討する。 以上を踏まえて学校組織の再編状況、教員政策が教師の日常の教育活動に及ぼす影響と課題について考察する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
前年度に実施する予定だったフィールドワークが、勤務校の業務過多のために実施できず、その遅れを本年度、取り戻すことができなかった。 フィールドワークの時期を検討し、遅れを今年度中に取り戻す予定である。 主幹教諭に焦点を当てたフィールドワークについて、夏季休業をフルに活用してインタビュー調査を実施する(東京都、滋賀、兵庫)ほか、教育委員会あてに自由回答式のアンケート調査を実施し、全国的な状況を押さえる。この調査を通じて、遅れているフィールドワークの代わりとする。 オンタリオへのインタビュー調査を早い時期(8月か9月)に実施する。
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Research Products
(4 results)