2012 Fiscal Year Research-status Report
現代中国の少数民族における家族の変容と文化伝達に関する教育学的研究
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24531080
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
小林 敦子 早稲田大学, 教育・総合科学学術院, 教授 (90195769)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 中国 / 少数民族 / 女性 / 家庭教育 / 文化伝達 / 家族 / 国際研究者交流 |
Research Abstract |
【研究の目的】中国の少数民族(回族、モンゴル族、朝鮮族等)に対する調査に基づきながら、社会変動の下でのエスニック・マイノリティ家族における民族文化の伝達・断続について、教育学の視点から実証的に検証すること。 【研究方法】(1)内モンゴル自治区におけるモンゴル族女性調査(アンケート、2012年3月~4月)、(2)雲南省での回族調査(インタビュー、2012年8月)、(3)湖北省における土家族教員調査(インタビュー、2013年1月)、(4)寧夏回族自治区における回族女性教員調査(インタビュー、2013年3月、1995年以来の継続的な追跡調査の一貫) 【研究成果の公表・発表】(1)国際フォーラム「社会変動の下でのマイノリティと文化伝承―ライフストーリーの分析から―」を主催(早稲田大学、12月7日~8日、NIHUプログラム・現代中国地域研究の共催による)、(2)国際ワークショップ:Educating Muslim Minorities in Asia(早稲田大学、2012年12月15日、早稲田大学アジア・ムスリム研究所主催)において、都市部におけるムスリム家庭の実態について研究発表(英語)、(3)新保敦子編著『社会変動の下でのマイノリティと文化伝承』(早稲田大学MDセンター、2013年3月)の出版。 【研究成果及び意義】本研究から以下の新しい知見が得られた。(1)少数民族女性の中にも近代教育を受け、都市部に移住して社会的に成功している者が少なくない。ただし、こうした女性の場合、民族の伝統的な共同体から遊離している例も多い、(2)従来、他民族との通婚がほとんど無い回族においても、漢族との婚姻が増えている、(3)漢族と婚姻関係にある回族の場合、イスラームの伝統から乖離していく傾向が顕著である、以上である。少数民族家族に関する実証的な研究は蓄積が不十分であり、こうした知見は意義があると思われる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究はおおむね順調に進展している。その理由として、(1)調査の進展、(2)研究の公開・発表、(3)中国及び韓国における研究の国際的ネットワークの形成、(4)若手研究者の育成、といった4点を指摘できる。 第1に、海外の研究協力者の協力もあり、調査が進展した。たとえば、モンゴル族を対象としたアンケート調査を実施した他、中国少数民族地域で3回にわたるフィールドワークも実施した(雲南省、湖北省、寧夏回族自治区)。 第2に、研究の成果を、早稲田大学において主催した国際フォーラムで発表した。国際フォーラムにおいては、海外研究協力者である鄭新蓉(北京師範大学)、魏曼華(同)、さらに張慧真(香港バプティスト大学)、李恩珠(韓国・明智短期大学)ら、ゲストを招へいした。その他、国際ワークショップ:Educating Muslim Minorities in Asia(早稲田大学、2012年12月15日、早稲田大学アジア・ムスリム研究所主催、トルコ及び台湾、韓国からパネリストを招へい)において、研究成果を発表した。これらの発表報告は、報告書に収録されている。また、日本国内だけでなく、中国の北京師範大学においても研究成果を発表している。 第3に、国際的ネットワークの形成をあげたい。国際フォーラムにおいて招聘した中国の研究者との共同研究が進展し、2013年度、日本および中国において、国際フォーラムの報告書を発展させた研究成果を、それぞれ学術出版社から出版予定である。 第4に若手研究者の育成がある。早稲田大学で主催した国際フォーラムにおいては、若手研究者(5人)が発表を行った。今後、本プロジェクトの発展に協力することが期待される。また海外研究協力者が所属する中国側大学においても、、若手研究者、院生の協力を得ながら、研究が進展している。今後、本研究プロジェクトを推進する体制が築かれつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
日中関係の緊張の高まりがあったものの、研究は第1年目、所定の成果をあげ、おおむね順調に進展したと考えることができる。しかしながら、インタビューにおいて、対象者を探すことに、若干、問題が生じている。とりわけ、本研究の研究対象者は少数民族であり、少数民族問題は中国においてデリケートな領域に属しているため、外国人による少数民族へのインタビューは必ずしも容易ではない。また、学校における生徒・学生を対象とするアンケート調査も、難易度の高さがある。従って、今後においては、①海外研究協力者の協力を得ての調査(インタビューおよびアンケート)、②日本国内の留学生を対象とした調査(インタビューなど)、③文献研究、以上の方法によって、研究を推進したい。 2013年度の研究計画として、以下がある。まず調査としては、①内モンゴル自治区におけるモンゴル族家族調査(6月)、②寧夏回族自治区における回族女性調査(9月)、以上を計画しているいる。また、研究成果の公開・発表については、①国際フォーラムの主催(早稲田大学、10月開催予定。海外研究協力者を招聘)、②国際フォーラムでの報告(早稲田大学、早稲田大学アジア・ムスリム研究所主催、12月20日~21日開催予定)、を予定している。 さらに、研究成果の出版については、①研究成果の日本および中国の出版社からの出版(2013年度における出版)、②国際フォーラム(2013年10月開催予定)に基づく中間報告書の出版、以上を計画している。2013年6月には、中国における出版の打ち合わせを研究協力者、中国側の出版社と行うため、中国を訪問予定である。 早稲田大学現代中国研究所、早稲田大学アジア・ムスリム研究所との協力関係によって、研究を推進したいと考える。また研究の最終年度にあたる、2014年度においては、国際フォーラムを主催するとともに、研究成果の出版を計画している。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
物品費(設備備品費):300,000円(書籍購入費200,000円、PC及び周辺機器100,000円) 旅費:400,000円(研究代表者現地調査費7日間 200,000円、海外共同研究者招へい費4日間 200,000円) 人件費・謝金:400,000円(専門的知識の提供(現地調査アテンド)100,000円、翻訳・通訳100,000円、資料収集・整理200,000円) その他・雑費:200,000円(国際フォーラム報告書印刷費100,000円、会議費50,000円、複写費50,000円)
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Research Products
(8 results)