2013 Fiscal Year Research-status Report
現代中国の少数民族における家族の変容と文化伝達に関する教育学的研究
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24531080
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
小林 敦子 早稲田大学, 教育・総合科学学術院, 教授 (90195769)
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Keywords | エスニック・マイノリティ(少数民族) / 家族 / 近代教育 / 文化の継承/断絶 / 女性 / 中国 / 教員 / 回族 |
Research Abstract |
【研究目的】グローバリゼーションという社会変動下での少数民族の就学、移動、家族の変容を明らかにしながら、エスニック・マイノリティ家族における民族文化の伝承/断絶といった実態を、教育学の観点から実証的に検証すること。 【研究方法】(1)呼和浩特民族師範及び二連浩特市等におけるモンゴル民族学校調査(2013年6月)。(2)内蒙古包頭及び呼和浩特におけるモスク調査及び少数民族家庭(回族、3世代)に対する聞き取り調査(2013年9月)。(3)貴州省農村小中学校でのフィールドワーク(参与観察、教員及び生徒調査)(2014年3月)。(4)台湾・中央研究院での資料収集(教育関係)(2013年10月) 【研究成果】(1)学校の統廃合に伴い少数民族児童が自宅を離れて寄宿舎生活を送るようになったことで、家庭における文化の伝承が困難になっている。(2)民族の文化伝統や道徳の規範意識は親子間で継承されているものの、近代学校教育の影響で断絶という事態も生まれている。以上が本調査から明らかにされた。 【研究成果の公表】(1)日本社会教育学会にて報告。(2)内蒙古科学技術大学国際シンポジウムでの招待講演。(3)早稲田大学アジア・ムスリム研究所主催国際フォーラム(Islam and Multiculturalism Coexistence and Symbiosis)にて報告(英語)。(4)早稲田大学にて国際フォーラム(「グローバリゼーションの下でのマイノリティ家族の変容と文化伝承」)の主催。北京師範大学・鄭新蓉、北京師範大学・魏曼華、四川大学・呉暁蓉、内蒙古財経大学・ボロルなど、4人の外国人研究者を招へい。その他、早稲田大学大学院生(留学生3人)が発表。回族、モンゴル族、チベット族に加えて、消滅の危機にある土族の言語文字状況が報告された。同フォーラムは、NIHUプログラム・現代中国地域研究との共同開催である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
【調査】中国少数民族地域へのフィールドワーク(参与観察、アンケート、インタビュー)を3回実施。①内モンゴル自治区呼和浩特及び二連浩特の民族学校(2013年6月)。②内モンゴル自治区包頭及び呼和浩特のモスク調査、及び少数民族家族におけるライフストーリー・インタビュー調査(2013年9月)。③貴州の農村小中学校学校(2014年3月)。以上3回に渡る調査によって、少数民族家族の変容の実態が明らかにされた。中国におけるフィールド調査は、日中関係の緊張の高まりとともに、難しくなりつつあるが、今年度については、国外の研究協力者の尽力により、おおむね順調に進展できたと考える。 【資料収集】台湾・中央研究院で資料収集を実施(少数民族教育関係、民国時期関係) 【研究成果の発表】①国際フォーラム(早稲田大学、2014年1月)を開催し、海外からゲストを招へいするとともに、日本国内の若手研究者の育成を図った。②国内の学会(社会教育学会)で研究成果を発表した。③国際フォーラム(Islam and Multi-culturalism Coexistence and Symbiosis、早稲田大学開催、発表言語:英語)で研究成果を報告した他、マレーシアからのゲストと研究交流を行った。 【海外での研究発表】①内蒙古回族文化教育論壇(中国包頭・内蒙古科技大学、2013年9月9日)。②中・日・台社会教育交流研討会(台湾台北・台湾師範大学、2013年11月1日)。 【海外での研究成果の出版】本研究プロジェクトは、北京師範大学・中国民族教育与多元文化研究中心(主任・鄭新蓉教授)の強力なバックアップの下で実施している。共同の研究成果として、教師のライフストーリー(少数民族を含む)を収録した『中国教師口述史』(仮題、鄭新蓉・新保(小林)敦子主編、教育科学出版社)の編集作業を2013年度に行い、2014年6月に刊行予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
【調査】①中国において、研究打ち合わせを実施(北京師範大学、2014年9月)。②少数民族地域でのフィールドワークの実施(2014年9月)。③研究協力者の協力を得て、寧夏及び内モンゴルにおける回族家庭、モンゴル族家庭調査を行う(2014年7月から2015年2月)。 【研究成果の公表・発表】①2014年度は本研究の最終年度にあたるため、総括のための国際フォーラムを早稲田大学で開催予定である(12月19日及び2月。12月は寧夏及び内モンゴル関係者、2月は北京師範大学・中国民族教育与多元文化研究中心関係者を招へい予定)。それぞれ報告書を出版し、関係機関に配布予定。②東洋文庫主催での国際シンポジウム(2014年2月28日~3月1日、中国イスラーム分科会コーディネータ:新保敦子)において、中国ムスリム関係の海外からの研究者を招へい。シンポジウムにおいて国内外研究者と中国エスニック・マイノリティの近代化、migration、gender、文化継承に関わる研究交流を組織し、今後の研究交流の国際的なネットワーク形成を図る予定である。 【書籍の出版】研究成果の書籍での出版予定として以下がある。①『中国エスニック・マイノリティ家族の変容と文化伝承―ライフストーリーの分析から』(新保敦子編、2014年6月出版予定、国際書院)。モンゴル族、回族、朝鮮族、土族の近代化と家族の変容、それに伴う文化の継承/断絶について、ライフストーリーに基づきながら分析した6本の論文と少数民族女性教師のライフストーリー2本を収録。②『超大国・中国の現在と未来 第4巻 格差と調和社会』(阿古智子との共著、東大出版会、2015年出版予定)。中国の超大国化は社会的な格差の拡大といったひずみを発生させている。そうした実態をジェンダー、少数民族家族の変容といった観点から分析した論考を執筆予定である。その他、紀要などにも投稿予定である。
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Research Products
(17 results)