2012 Fiscal Year Research-status Report
復興過程における「学校」の役割‐教育コミュニティと社会関係資本に着目して‐
Project/Area Number |
24531083
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Koshien University |
Principal Investigator |
鈴木 勇 甲子園大学, 人文学部, 講師 (90452383)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 復興 |
Research Abstract |
本年度は宮城県の仙台市,名取市,南三陸町,そして岩手県野田村の役所,教育委員会等関係部署を訪問し,東日本大震災における教育と学校の被害状況と復興状況についての聞き取り調査を実施し,資料収集を行った.また,南三陸町と野田村の小中学校においてフィールドワークと聞き取り調査を実施した. 発災後の緊急救援期や避難時期において,平時より学校と保護者そして地域の人たちとの結びつきが強い地域では,避難所運営や救援物資のコーディネートがスムーズに進んだ事例が多く,今後は学校を中心として,結びつきが強い地域を作っていこうとする動きが広がっていることを知ることができた. また,野田村においては被災地外の人々との新たな結びつきが地域に変化をもたらしていた.発災直後より関西のボランティア団体が野田村を拠点として活動を続けてきた.現在も地域事務所を構えて活動を継続し,ここが野田村と関西を結ぶハブの機能を果たしている.被災地と被災地外が結びつくことで,被災地は被災地前の姿に戻るだけではなく,被災前とは異なる新しい形への復興を目指していることを検討した. さらに,津波の被害により従来の校舎を使うことのできない南三陸町の小学校では,教職員や保護者,地域の人たちが学校再開に向けて活動していた.彼らへの聞き取り調査から,学校が物理的にもそして精神的にも地域コミュニティの結節点であり,復興のシンボルとなっていることを確認した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究の進捗状況はおおむね順調であり,来年度も夏に1週間にわたるフィールドワークを実施し,その他にも関係各所への聞き取り調査を予定している.ただ,今年度は被災地復興に関する量的データの収集がままならなかったため,来年度はフィールド調査と並行して復興状況に関するデータ収集とその分析を行いたい.
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Strategy for Future Research Activity |
今年度と同様,被災地の都道府県および市町村の役所,教育委員会,そして,被災地の小中学校および周辺コミュニティを訪問し,聞き取り調査とフィールドワークを実施する.特に次の2点について重点的に成果をまとめたい.第1には,今年度実施した南三陸町の津波被害により校舎が使用できない状態にある小学校における継続的調査である.学校再開に向けての取り組みや関係者の気持ちの変化を長期的に観察する.第2には,被災地の教育や学校の復興状況についてのデータ収集と分析である.地域ごとの特徴を明確にするためにも量的データの分析を進めたい.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究費の主たる使用目的は現地調査における旅費を予定している.研究代表者と研究協力者により,聞き取り調査や学校でのフィールドワークなど複数回の現地調査を実施する予定である.また,主に復興状況を把握するための資料購入費やその分析のための機器やソフトウェアの購入費,人件費を予定している.
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