復興過程における「学校」の役割‐教育コミュニティと社会関係資本に着目して‐

2013 Fiscal Year Research-status Report

• Project/Area Number: 24531083
• Research Institution: Koshien University
• Principal Investigator: 鈴木 勇 甲子園大学, 人間科学系, 講師 (90452383)
• Keywords: 被災地復興

Research Abstract

本研究は，2011年3月11日に発生した東日本大震災の被災地復興を「学校」を通じて考察しようとするものである．その際に学校を中心とする地域コミュニティとその地域の社会関係資本の役割を検討することを目的としている．今年度は宮城県南三陸町や岩手県野田村において聞き取り調査とフィールドワーク調査を実施した．また，学校復興に関する量的データの収集に努めた．
2011年3月，地震と津波によって卒業式を実施できなかった当時の小学6年生は今年度をもって中学校を卒業した．同じく当時の中学3年生は高等学校を卒業した．このように震災から時が経過する中で，震災によって使用できなくなっていたA小学校はほぼ同じ場所で学校を再開した．また，同地域の別の小学校は住民の高台移転に伴い，高台での学校再開が計画されているがまだそのめどは立っていない．こうしたそれぞれの学校の復興は，地域の復興状況と相互に影響し合いながら進んでいることがフィールド調査から明らかになった．また，別の事例として，B小学校では震災当時の避難所の動きを記録として残すための動きが始まっている．当時，避難所の運営を担った地域のリーダー的存在の人たちへの聞き取り調査を実施し，貴重な資料を収集した．さらに，C小学校地域では，震災以降，ボランティアをはじめとする地域外の人々が被災地に関わり，地域の復興をあとおししている現状が見てとれた．
次年度はこれらの地域におけるフォールド調査とデータ分析を継続しつつ，これまでの調査を総括して新たな知見を見いだしたい．

Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

研究の進捗状況はおおむね順調である．予定していた聞き取り調査やフィールドワーク調査を実施し，これまで継続的に関わってきた学校や地域を経年的にみることができた．そこでは，前述したように，学校の再開や高台移転の決定などそれぞれに大きな決断がなされ，地域の復興と学校の復興が相互に影響し合っている様をみることができた．また，発災当時に学校体育館に開設された避難所が，地域の人たちと学校の協働によって運営され，最終的に避難所が閉鎖されるまでの動きについて，聞き取り調査や資料収集を行うことができた．この点については次年度も重点的に調査を継続していく．
現地調査と並行して学校復興に関する量的データの収集を進めてきた．ただ，まだ全体を把握するまでには至っていないため，今後も継続的にデータを収集し分析していくことが必要である．

Strategy for Future Research Activity

今年度に引き続き，被災地の市役所，教育委員会，そして，被災地の小中学校および周辺コミュニティを訪問し，聞き取り調査とフィールドワーク調査を実施する．次年度重点的に取り組むのは概ね下記の2点である．
第1に，これまで継続的に関わってきた学校コミュニティにおける復興状況を体系的に整理し，これからも続く学校復興の取り組みに関して，それが地域復興と相互に影響し合うことに着目しながら，その方向性を示唆できるような知見を導くことである．第2には，B小学校における避難所の開設から閉鎖に至るまでの経緯を整理し，その中で中心的な役割を果たした地域リーダーの平常時，震災時，復興時の活動を構造化することによって，学校と地域の人的資本や社会関係資本が災害救援期と復興期に果たしうる役割について検討することである．

Expenditure Plans for the Next FY Research Funding

当初，実験協力者と合同での現地調査を予定していたが，今年度は予定がうまく調整できず，研究代表者単独で現地調査を行うことが多かったため．
研究費の主たる使用目的は現地調査における旅費を予定している．研究代表者と研究協力者により，聞き取りや学校でのフィールドワーク調査などの現地調査を複数回実施する予定である．また，収集資料の保存や分析を行うためのIT機器や分析ソフトの購入，入力作業等の人件費の支出を予定している．