2012 Fiscal Year Research-status Report
近代日本における高等女学校と中学校との教科書比較研究
Project/Area Number |
24531112
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Aichi University of Education |
Principal Investigator |
近藤 裕幸 愛知教育大学, 教育学部, 准教授 (40583422)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 教科書 / 地理教育 / 中学校 / 高等女学校 |
Research Abstract |
1 教科書実物の収集:教科書の購入はわずかだったが、コピーなどによるデータの収集は進んでいる。国立教育政策研究所付属の教育図書館では、大部分の教科書がデジタル化されているためであることと、古い教科書そのものが劣化散逸し、なかなか入手できないものがあることによる。 2 教科書データの収集:上記のように購入はあまりできなかったが、各大学の図書館や国立教育政策研究所付属の教育図書館において,データを複写し入手し続けている。(資料収集は研究期間を通じて実施するため、これからも続けて行われる)。ただ、東京と愛知を行き来する時間的制約の中で、資料収集は思っていたよりも進んでいない。その理由は、ただ教科書を闇雲に集めればいいという訳でもなく、数冊の教科書を比較しながら収集するために、当初の予定(50冊程度)を下回り、20冊程度にとどまっている。しかしながら、教科書を収集しながら分析を進めているため、25、26年度で予定している分析の作業は過重なものにならないと思われる。 3 終戦直前の中学校地理教科書の内容分析:これは当初の研究予定になかったものである。これまで博士論文にて中学校の地理科教科書分析は検討済みであったが、第二次世界大戦最末期の教科書内容がどのようになっているかの点が欠落していた。これによって、明治から昭和にかけての中学校の地理科教科書の変遷をはっきりと捉えることができた。この成果によって、高等女学校における地理教育の研究も、男子の中学校にならってすすめればよいことになり、この新しく設定した研究結果は小さくないと思われる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は,戦前にあった高等女学校の教育内容を分析することによって,男女の教育内容の差異を明確にし,その構造と差異の要因を明らかにすることであることであった。「研究実績の概要」でも述べたが、教科書データの収集はそれほどすすまなかったが、その分析は少しずつ行われている。つまり、研究課題が、量的には進んでいないが、質的には進捗が見られるということである。今あるだけでのデータ分析では誤解をまねく恐れがあるため断定はできないが、高等女学校における地理教育と中学校におけるそれの差異は質的な面でもみられると思われる。こうした教科書にみられる性差がうまれた理由の検討は今後の課題である。 また、当初の研究予定になかった終戦直前の中学校地理教科書の内容分析がなされたことには意義がある。その内容は、中学校の国定地理科教科書の内容に見られる国策遂行に関わる記述の特徴を類型化したことである。その傾向は、地理科という教科の特性上、あからさまな軍国主義や国家神道についての記述は少ないが、国家主義的な記述はみられた。具体的には、体制翼賛的な記述ばかりとはいえないものの、国土の美しさを讃え、民族の優秀さを訴え、同盟国については友好的な記述はみられたのである。たしかに地理科教科書には客観的知識が教科書にはみられるが、時代状況の影響を少なからず受けているところがあるといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
ほぼ当初の予定通り、遂行する予定である。 1 他教科の教育史研究の検討:地理科教育の史的変遷のみならず,他教科においてど のように研究がなされているのかの知見を深めるために,教育史学会誌『日本の教育史学』,日本教育史学会誌 『日本教育史研究』等の文献資料を収集し、比較考察する。地理科教育を他教科との関係からとらえることで,教育の中の地理科の位置づけを究明するためである。 2 高等女学校の地理科教科書の収集と分析:上記の計画,とりわけ1資料購入と2資料収集に おいては,申請者本人が足を使い,現物を見,その資料について,判断しなければならず、おそらく長期に及ぶ ものと考えられる。愛知県刈谷市(大学所在地)から東京までの,申請者の交通費等を計上する。たしかに,愛知 教育大学にも古い教科書はあるが決して十分ではなく,多くの古書が集まる東京においてその資料を収集する必 要がある。この収集こそが本研究を支える最も基本的な前提であるといえる。 3 統計処理手法の習熟およびデータ処理:統計処理について習熟する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
24年度は私費からだしていたが25年度はコピー代などに5万円をあて、旅費に24年度並みに40万円をあてる。映像機器(記録用)は24年度でだいたい購入でき、研究遂行に支障がなくなっている。 24年度に予定していたデータ分析が出来ず、分析用のパソコン及びデータ処理ソフトの購入をやめたため、残額が生じたが25年度に行う分析用パソコン及びソフトの購入にあてる。
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Research Products
(3 results)