2012 Fiscal Year Research-status Report
説明的文章を批判的に読むことを段階的、系統的に指導するための実践プログラム開発
Project/Area Number |
24531126
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Hyogo University of Teacher Education |
Principal Investigator |
吉川 芳則 兵庫教育大学, 学校教育研究科(研究院), 教授 (70432581)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 説明的文章 / 批判的読み / 段階的 / 系統的 |
Research Abstract |
批判的読みの指導(=学習)内容の観点、段階性の大枠を先行研究の成果をもとに仮設することを試みた。観点、内容の全体像を比較的詳細に提示している森田信義(1989)、阿部昇(1996)を中心に、発達段階に即して批判的読みの内容を系統的に示した都教組荒川教研(1963)、井上尚美(2012)をあわせて検討した。結果、「事例のあり方」「論理展開のあり方」「表現(ことば)のあり方」の三つを指導内容の観点としたうえで、「事例のあり方」の検討を基盤に「論理展開のあり方」「表現(ことば)のあり方」の観点での読みを順次増やしていく筋道が、読み(指導)の段階性としてふさわしいことを見いだした。 説明的文章の授業で扱いやすいと考えられる「事例のあり方」の観点の要素としては、「必要な事例か」「じゅうぶんな事例か」(いずれも数的または質的に)を事例分析の際の基本的なものとして設定し、「不要な事例はないか」はそれと連動する形で、「偏りはないか」「欠如したものはないか」は派生的、補助的な観点(内容)として位置づけるなど、得られた各要素を指導に資するモデル図として構造的に配置した。「論理展開のあり方」「表現(ことば)のあり方」の構成要素についても同様な構造図を仮設することを試みた。これらの構造図は、各教師(指導力)レベルでの、批判的読みの授業を行う際の手引き、地図となる。この図の修正・改善を、実践を通して検証しながら進めていくことが次の段階の研究内容となる。 一方、当該年度においては、この構造図の内容に依拠しない形での批判的読みの研究授業も複数回試みた。批判的読みの経験のない学習者に対して、批判的読みの授業展開の習得初期段階の授業者が、どのような実践知に基づいて授業を構築していくか、帰納的手法によって検証した。得られた知見を上記構造図の修正・改善作業にどのように反映できるか考察中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
説明的文章を批判的に読むことに関する先行研究を整理・検討し、実践プログラム開発の理論的基盤の構築を図ることについては、内容の全体像を詳細に提示しているものを中心に、発達段階に即して批判的読みの内容を系統的に示した研究をあわせて検討し、読み(指導)の段階性の構造の枠組みを仮設できた。 研究協力校における研究授業については、全校的な取り組みの実施として1校、批判的読みの授業に対する経験(レディネス)が学習者皆無、授業者1~2回の組み合わせである「派生型」に該当するものとして1校2名による実践を各2単元行うことができた。 仮設した枠組みと研究授業の成果とをあわせて、実践プログラムを仮設するところまでは検討が進んではいない。
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Strategy for Future Research Activity |
研究協力校における研究的実践のうち、1年次から継続して共同研究が行える学校については、小学校現場の学級・担任編成のシステムの現状を勘案すると、説明的文章の批判的読みの授業経験(レディネス)が、学習者、授業者共にそろった「基盤型」の実践は現実的ではないことが判明してきたため、レディネス状態が異なる「派生型」を研究授業の基本にする。2年次から新規参入を依頼できる研究協力校については、レディネスが、学習者、授業者ともに無しのレベルでそろった条件下での「基本型」の研究授業を行う予定である。 また、1年次に研究協力校の特定学年・教材で得られた実践成果の仮説的知見を他学年、他教材にも反映させ、実践成果をもとに検証していきたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
1年次の研究成果及び2年次途中段階の研究成果を学会で発表するための旅費、研究協力校において行った研究授業のテープ起こし代金、それらの研究活動に必要な消耗品購入費を中心に充当する。
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