2013 Fiscal Year Research-status Report
説明的文章を批判的に読むことを段階的、系統的に指導するための実践プログラム開発
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24531126
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Research Institution | Hyogo University of Teacher Education |
Principal Investigator |
吉川 芳則 兵庫教育大学, 学校教育研究科(研究院), 教授 (70432581)
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Keywords | 説明的文章 / 批判的読み / 段階的 / 系統的 |
Research Abstract |
学習者(5年生)、指導者が批判的読み(の授業)に習熟していく初期段階(批判的読みの授業を1~2回程度経験)にある場合の授業づくりの要件を見いだした。筆者に対する自己の考えを主張・表現することを批判的読みとして設定した場合、「どのような内容・形式であるか」(テクスト)→「そのような内容・形式を取った筆者の意図は何か」(筆者)→「それについてどう思うか」(読み手)という活動(読み)の流れを取ることが一般的である。しかし、批判的読みに習熟していく初期段階では、筆者の発想や意図を推論する活動の前に一人の読み手としてテクストの内容・形式に関する自己の読みを持つ活動を位置づけることが実態にふさわしいと考え学習活動を仮設した。結果、11月、2月の2回の実践において、テクストや読みの対象とする事柄の違いはあるものの、読み手としての自己の率直な読みを持つことと、筆者の発想・意図を推論することとが機能し、批判的読みに習熟していく初期段階の取り組み方としての可能性が見いだせた。 また、説明的文章の批判的読みに対する認識、実践経験が、ともにほぼゼロの状態から2年間、全校で実践研究に取り組んだ公立小学校の教職員にアンケート調査を実施し、得られた結果から批判的読みの授業をつくる際の成果や課題、留意点を探った。得られた要点(課題)は次のようである。ア)批判的読みを促す「基礎的課題(発問)」(共通的課題<発問>)と「発展的課題(発問)」とのセット開発、活用。イ)発達段階、学習者の能力差に対応した批判的読みの学習において扱うべき内容の精選、限定、構造化。ウ)1~5年目の教員の意識が特に強かった「批判的読みの発問のあり方」は実践課題の基本。読みの課題、単元構成等との関連において構造化。エ)「自分なりの考えを持つ」「多面的な見方、考え方ができる」は、指導者として目指す学習行為の第一ステップ。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究協力校、研究協力者(実践者)との継続的な共同研究を展開し、実践プログラム開発の基本的な考え方、観点を得ることができた。実践力のあるベテラン教師2名との高学年における研究授業による成果によると、教師、学習者双方が批判的読みの習得初期段階である「基盤型」の実践では、ベテラン教員であろうと経験の浅い教員であろうと、筆者の読みと自己の読みの兼ね合い具合、事例の取扱い方等、同様な困難点や着眼点を有することが明らかになってきている。学校研究として2年間集中的に批判的読みの実践に取り組んだ学校の全教員に対するアンケート結果からも、実践上の実質的な困難点や成果が得られており、それらを具体的な授業づくりに反映させていく準備は進んできた。
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Strategy for Future Research Activity |
学習者の批判的読みの力・技能の習得状況と指導者の批判的読みの授業力の習得状況のレベル段階が対応した実践プログラム(基盤型)については、教師、学習者共に習得初期段階のものとして、2年間の共同研究で得られた実践の観点や実際の授業プログラムをこれまでと同一教材(5年生)を用いて活用し、その有効性について検証する。 また、経験年数の少ない複数名の教員を対象に、5年生以外の学年や異なった教材においても、習得初期段階のものとして、得られた実践知見を反映させた研究授業に取り組み、適用性、有効性を検討する。 学習者の批判的読みの力・技能の習得状況が初期段階で教師の批判的読みの授業力が習得過渡期である場合についても、低学年を対象に検証する予定である。 これらの検証授業の成果を踏まえ、実践プログラムの基本的要素、観点を汎用性の高いものとして提示する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
実践プログラムの具体化に向けて、これまでに得られた知見、仮説を複数の学校、授業者に検証授業を行ってもらう必要が前年度よりも増えると予想される。授業及び事後協議、実践者へのインタビュー等の記録のテープ起こしをし、検討を加えねばならない。そのための代金等が増加する予定である。また前年度まで及び本年度の研究成果を学会で発表する。検証授業の際も含め、そのための旅費、及びそれらの研究活動に必要な消耗品等も購入する必要がある。 検証授業のための打ち合わせ、授業参観、事後協議を実施する際の旅費、学会発表の際の旅費等に全体の1/2程度、検証授業のテープ起こしと消耗品購入で1/2程度を予定している。
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