2013 Fiscal Year Research-status Report
スズキメソードによる「才能教育」モデルと教師文化の研究
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24531153
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Research Institution | Toyo University |
Principal Investigator |
桂 直美 東洋大学, 文学部, 教授 (50225603)
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Keywords | スズキメソード / 才能教育研究会 / 鈴木鎮一 / 音楽教育 / 人間教育 / 教師文化 |
Research Abstract |
スズキメソード(才能教育研究会)において、鈴木鎮一の教育哲学と教育方法の連関がどう理解され、どのように方法次元において定式化され、教師間で伝承されているかを、教師文化という視点から明らかにすることが本研究の目的である。昨年度は、代表的な指導者のインタビューから、教師達の共有する価値、規範としての「教師文化」に特徴があることが示された。本年度は、日米のスズキ教師の中でも、鈴木鎮一から直接教えを受けた指導者(第一世代)ないし、そのような第一世代に学ぼうとする第二世代教師を中心にインタビューを行い、鈴木鎮一の提起したスズキメソードの原点と呼べる価値観や規範にこだわる教師たちの言葉から、日本側と米国側に共通する内容を取り出すことによって、スズキメソードの教師文化の実相に迫ろうとした。 創始者鈴木慎一からの直接の指導に学び、スズキメソードの原点を守ることを志向する教師たちが集う場所として、日米双方から一カ所ずつの「夏期学校」を選び出し、夏期学校の教育実践の参加観察を行うことと平行して、個別インタビューとグループインタビューを行い、日米の双方に共通するトピックを取り出した結果、音楽を通しての人間教育というスズキメソードの理念の内実が明らかになった。これまで否定的に指摘されることの多かった斉奏の強調、親のかかわりなどについて、鈴木の理念と整合的に理解することにより、鈴木の「公共の教育」へのヴィジョンが、その中心にあったことが示されたといえる。 鈴木鎮一の実践の基盤としての日本の教師文化と、米国における受容にも焦点を当てることが今後の課題となる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
2013年7月末に、青森県で開催された夏期学校は、鈴木鎮一から直接指導を受けた内容を大切にしている指導者たち第一世代と、その世代から鈴木メソードの原点を学びたいと願う第二世代が、自分たちの力量形成を視野において計画しはじめた臨時の夏期学校の性格を持つものであった。多数の会員と教師を擁して活発に活動を続けているスズキメソードは、今日まで常に変貌を遂げつつあると言って良いが、今回取材した夏期学校は、数多い指導者の中でも、鈴木鎮一自身の指導の意味をより深く理解しようとする一群の教師が世代を超えて集う貴重な機会となり、スズキの「教師文化」に焦点をあてる本研究にとっては絶好の機会となった。 また、同じ時期(8月初旬)にシアトルで開催された「夏期学校」は、スズキの原点に近い夏期学校の運営を心がけているものとして、全米に60ある夏期学校の中でも特筆されるものである。ここに集う教師のほとんどの方に好意的にインタビューに応じていただくことができ、日米でのもっとも重要なインタビュイ-に、ほぼ同時期に研究に参加していただくことができたことは、大変幸運でもあり、多くの先生方のご協力に感謝いたします。
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Strategy for Future Research Activity |
2014年度は、2013年のインタビューから明らかになった、米国における特徴的なスズキメソードの受容のあり方に焦点をあてて、更なる情報収集と考察を行いたい。日本におけるスズキとは対照的に、米国において、とりわけ弦楽器演奏の領域においてはスズキメソードが専門教育の分野でもメジャーなものと認識されており、また一般におけるスズキメソードの認知においても日本を凌駕する。こうした違いの背景として最も重要なことは、スズキメソードが米国に伝わった60年代に主導的な役割を果たした教師たちの意識にあると思われる。最初期にスズキメソードに着目した教師たちには、これを単なる弦楽器指導法として見るのではなく、鈴木鎮一の教育哲学という土台から理解しようという強い志向があったことがわかってきた。また日本において当然のこととして等閑視されがちであった日本的な教師文化の要素も、米国における受容をテーマにすることによって光を当てることができると考えられる。このような問題意識に立ち、2014年度の研究の中心を、最初期に活躍した教師たちへのインタビューにおく予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
2月に研究会議を計画していたが、雪のために1名の旅費が執行できなくなった為。 今年度の旅費に補填する。
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Research Products
(1 results)