2012 Fiscal Year Research-status Report
明治期国語教育の展開とヘルバルト派教育学に係る実証的研究
Project/Area Number |
24531164
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Tokai University Junior College |
Principal Investigator |
山本 康治 東海大学短期大学部, その他部局等, 教授 (10341934)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
桑原 公美子(北川公美子) 東海大学短期大学部, その他部局等, 准教授 (00299976)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 小学校国語教育 / 幼児教育 / 文学 / ヘルバルト / 童話 / 談話 / 教育史 / フレーベル |
Research Abstract |
本課題研究では、ヘルバルト派教育学の影響によって明治期国語教育に文学教材が導入されたことを踏まえ、国語科成立自体への同教育学の影響、また明治40年代における教育実践の場への同教育学の影響、更には、児童・幼児教育の分野における、童話重視という方向性への影響について実証的に明らかにすることにより、日本人のメンタリティー形成の系譜を明らかにすることを目指している。 24年度は、以下の系列A・B・Cを個別テーマとして、調査研究を進めた。 系列A「「国語」科成立に与えたヘルバルト派教育学の影響」については、「改正小学校令」成立に関する先行研究および当時の会議資料、また、同令成立の中心を担った澤柳政太郎の教育思想に関する先行研究資料等の収集、整理を行い、澤柳の教育思想に同教育学が与えた影響についての観点整理を行った。そこからは、澤柳が、同教育学を日本に紹介したハウスクネヒトから深く影響を受けていることが明らかとなった。また、これまで小学校教育との関連の中で捉えられていなかった「幼稚園保育及設備規定」成立に関しても、澤柳を始め、小学校教育関係者が深く関わっていたことが明らかとなり、幼稚園教育における言語教育を考える上での基軸を確認出来た。 系列B「明治40年代教育実践の場におけるヘルバルト派教育学の影響」については、同教育学が色濃く影響を与えた北海道教育界を中心に、同教育学の実践事例(教育雑誌・教案)、言語教育に係る教員研修・教員養成に関する資料収集、整理を中心に行った。そこからは、教員の人的交流を踏まえた、東京高等師範学校と密接な関わりが明らかになった。 系列C「明治期言語教育実践の場における文学教材(童話・韻文)ついての研究]は、小学校、幼稚園における童話・韻文の教育実践事例に関する資料、幼児の言語教育実践に係る各地域の幼稚園史や保育日誌の収集、整理を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
系列A「「国語」科成立に与えたヘルバルト派教育学の影響」については、「改正小学校令」および、同令成立の中心を担った澤柳政太郎に関する資料等の収集、整理等、計画通りに進行し、現在、観点を整理する段階にある。現在までのところ、明治20年代を中心に分析を終えたところであるが、今後、澤柳の教育思想の変遷についての分析を進め、第二期国定教科書(明治43年)における文学教材増加傾向との関係も含めて精査する必要が認められた。 系列B「明治40年代教育実践の場におけるヘルバルト派教育学の影響」については、北海道教育界の同教育学の実践事例(教育雑誌・教案)、国語教育に係る教員研修・教員養成に関する資料収集、整理を中心として計画通りに進んでいる。ただし、対象が広範に亘っているため、今後より多くの資料収集が求められる状況にある。また、分析の過程で把握された、札幌師範学校と東京高等師範学校との人的交流については、北海道のみならず、長野県など他の府県においてもその人的ネットワーク展開が確認されており、今後、東京高等師範学校資料(筑波大学所蔵)により探究すべき課題として把握された。一方、北海道における幼稚園教育の同教育学の直接的な実践事例はほとんど見られないことが明らかになった。今後は、北海道における童話教育実践事例と同教育学との関わりに焦点を当て調査を進める必要がある。 系列C「明治期言語教育実践の場における文学教材(童話・韻文)ついての研究]は、小学校、幼稚園における童話・韻文の教育実践事例に関する資料、幼児の言語教育実践に係る各地域の幼稚園史や保育日誌の収集、整理を行った。概ね、計画通りに進んでいるが、童話、特にグリム童話の日本への移入、展開については、同教育学が積極的に関わっているため、改めてその過程を分析することの必要性が把握された。
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Strategy for Future Research Activity |
25年度においても、以下の系列A・B・Cを個別テーマとして、調査研究を進める。また、24年度の成果も織り込み、年度中に研究論文として発表する。 系列A「「国語」科成立に与えたヘルバルト派教育学の影響」は、①「改正小学校令」成立に係る文教政策に関する調査・研究、②澤柳政太郎の教育思想へのヘルバルト派教育学の影響(特に第二期国定教科書の方向性との関わりを視野に収めて)に関する調査・研究(継続)、③「幼稚園保育及設備規程」成立に係る文教政策に関する調査・研究を行う。調査方法は、古書等購入②、国立国会図書館(同デジタルライブラリー含、以下同じ)調査①~③、成城学園教育研究所調査①~③である。 系列B「明治40年代国語教育実践に係るヘルバルト派教育学の影響」は、①北海道教育界における同教育学実践事例(教育雑誌、教案、幼稚園における童話教育事例等)に関する調査研究(継続)、②北海道教育界の国語教育に係る教員研修に関する調査研究(継続)、③北海道教育界の国語教育に係る教員養成に関する調査研究(継続)を行う。また新たに④東京高等師範学校と北海道教育界、他の府県教育界との人的交流ネットワークに関する調査研究を行う。調査方法は、北海道教育大学附属図書館(札幌館、函館館)調査①~④、国立国会図書館調査①~④、筑波大学図書館④、長野県公立小学校④である。 系列C「明治期言語教育実践の場における文学教材(童話・韻文)ついての研究」は、①小学校(高学年)における童話・韻文の教育実践事例に関する調査研究、②幼稚園における童話の教育実践事例に関する調査研究(継続)、③幼児の言語教育実践に係る同教育学の影響に関する調査研究(継続)を行う。調査方法は、古書等購入③、国立国会図書館調査①~③、筑波大学附属図書館調査①~③である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
以下の系列A~Cの実施に向けて、研究費を使用する。 系列A「「国語」科成立に与えたヘルバルト派教育学の影響」のうち、①~③については、国立国会図書館(同デジタルライブラリー含、以下同じ)、成城学園教育研究所における調査のための旅費、②については、書籍購入費が必要である。 系列B「明治40年代国語教育実践に係るヘルバルト派教育学の影響」のうち、①~④については、北海道教育大学付属図書館(札幌館、函館館)、国立国会図書館における調査、④については、筑波大学付属図書館、長野県公立小学校における調査のための旅費が必要である。 系列C「明治期言語教育実践の場における文学教材(童話・韻文)ついての研究」のうち、①~③については、国立国会図書館、筑波大学付属図書館のための旅費が必要である。また、③について書籍購入費が必要である。 系列A~C全般に亘り、文献複写費およびデジタルデータ印刷のためのトナー、用紙購入に係る消耗品費が必要である。
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