2013 Fiscal Year Research-status Report
明治期国語教育の展開とヘルバルト派教育学に係る実証的研究
Project/Area Number |
24531164
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Research Institution | Tokai University Junior College |
Principal Investigator |
山本 康治 東海大学短期大学部, その他部局等, 教授 (10341934)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
桑原 公美子 (北川 公美子) 東海大学短期大学部, その他部局等, 准教授 (00299976)
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Keywords | 小学校国語教育 / 幼児教育 / 文学 / ヘルバルト / 童話 / 談話 / 教育史 / アンデルセン |
Research Abstract |
本課題研究では、ヘルバルト派教育学の影響によって明治期国語教育に文学教材が導入されたことを踏まえ、国語科成立自体への同教育学の影響、また明治40年代における教育実践の場への同教育学の影響、更には、児童・幼児教育の分野における、童話重視という方向性への影響について実証的に明らかにすることにより、日本人のメンタリティー形成の系譜を明らかにすることを目指している。 25年度は、以下の系列A・B・Cを個別テーマとして、調査研究を進めた。 系列A「「国語」科成立に与えたヘルバルト派教育学の影響」については、「国語」科成立に影響を与えた沢柳政太郎の教育思想について整理するとともに、当時の教育界の言説の分析を行った。その結果、第二期国定教科書における文学教材増加に同教育学が色濃く影響を与えていること、また「修身」科における文学教材採択にも同教育学の影響が見られることが明らかとなった。また、同教育学の影響を色濃く受けた小学校教育が幼稚園教育に与えた影響についてもその様相が明らかになった。 系列B「明治40年代教育実践の場におけるヘルバルト派教育学の影響」については、同教育学実践の中核であった東京高等師範学校、およびその影響が色濃く示されている北海道教育界を中心に、実践事例、国語教育に係る教員養成・研修に関する資料収集、整理を行った。その結果、大正期に盛んとなった「文芸教育」の枠組みが既に明治40年代の教育現場において形成されつつあったことが明らかとなった。 系列C「明治期言語教育実践の場における文学教材(童話・韻文)ついての研究]は、小学校における韻文教育、幼稚園における童話教育の実践事例に関する資料の収集、整理を行った。明治20年代の保育日誌から、修身、唱歌、遊戯と軍歌の繋がりが明らかになるとともに、アンデルセン童話の日本での受容・展開について、同教育学が果たした役割が明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
系列A「「国語」科成立に与えたヘルバルト派教育学の影響」については、第二期国定教科書(明治43年)における文学教材増加、また「修身」科における文学教材の採択など、これまで明治30年代末にはその役割を終えたと言われていた同教育学が、明治40年代においても、教育界全般に強くその影響力を示していたことを確認することが出来た。また、同教育学の影響を色濃く受けた小学校の普及に伴い、幼稚園が教育課程として前景化してくる様相も明らかになった。 系列B「明治40年代教育実践の場におけるヘルバルト派教育学の影響」については、東京高等師範学校、同附属小学校、及び北海道教育界における資料収集により、東京高等師範学校、同附属小学校での実践事例が、北海道教育界の実践範型になる事例が散見され、明治40年代においても同教育学を基軸としたネットワークが有効に機能していることが確認された。また、これまで大正期から始まったと言われている「文芸教育」についても、同教育学の影響のもと、明治40年代にはこのネットワークにおいて議論および実践がなされており、今後「文芸教育」についてより広範に確認することの必要性が確認された。なお、北海道における童話教育実践事例と同教育学との関わりについては、収集した資料の分析段階にある。 系列C「明治期言語教育実践の場における文学教材(童話・韻文)ついての研究」は、小学校、幼稚園における韻文・童話の教育実践事例に関する資料の収集、整理を行った。小学校については、韻文教育実践の変遷を明らかにした。また、幼稚園教育においては、明治20年代の保育日誌から、修身、唱歌、遊戯と軍歌の繋がりが明らかとなり、小学校教育との連続性が確認された。更に、童話、特にグリム童話およびアンデルセン童話の日本への移入、展開について、同教育学が積極的に関わっていたことも明らかとなった。
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Strategy for Future Research Activity |
26年度においても、以下の系列A・B・Cを個別テーマとして、調査研究を進める。また、25年度の成果も織り込み、年度中に研究論文として発表する。 系列A「「国語」科成立に与えたヘルバルト派教育学の影響」は、①「改正小学校令」後の文教政策に関する調査・研究、②ヘルバルト派教育学の影響(第二期国定教科書の成立とその使用について)に関する調査・研究、③幼稚園に係る文教政策に関する調査・研究を行うとともに、これまでの研究の総括を行う。調査方法は、国立国会図書館(同デジタルライブラリー含、以下同じ)調査①・②、図書等購入②である。 系列B「明治40年代国語教育実践に係るヘルバルト派教育学の影響」は、①北海道教育界における同教育学実践事例(教育雑誌、教案、幼稚園における童話教育事例等)に関する調査研究(継続)、②東京高等師範学校、同附属小学校における同教育学実践事例に関する調査研究、③東京高等師範学校と北海道教育界、他の府県教育界との人的交流ネットワークに関する調査研究(継続)を行うとともに、これまでの研究の総括を行う。調査方法は、北海道教育大学附属図書館(札幌館、函館館)調査①・③、筑波大学附属図書館、国立国会図書館調査②・③、秋田大学附属図書館③である。 系列C「明治期言語教育実践の場における文学教材(童話・韻文)ついての研究」は、①小学校(高学年)における童話・韻文の教育実践事例に関する調査研究(継続)、②幼稚園における童話の教育実践事例に関する調査研究(継続)、③幼児の言語教育実践に係る同教育学の影響に関する調査研究(継続)を行うとともに、これまでの研究の総括を行う。調査方法は、国立国会図書館調査①~③、筑波大学附属図書館調査①~③、図書等購入③である。
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