2015 Fiscal Year Annual Research Report
中学生の読書指導における電子書籍端末利用の可能性についての実証的研究
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24531168
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Research Institution | Jumonji University |
Principal Investigator |
冨山 哲也 十文字学園女子大学, 人間生活学部, 教授 (10413907)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
杉本 直美 国立教育政策研究所, 教育課程研究センター研究開発部, 教育課程調査官 (40562450)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 電子書籍 / 読書 / 国語 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、電子書籍による読書が紙の本による読書よりも記憶に残りにくいのではないかという指摘に関して、電子書籍と紙の本による読書内容の記憶の差異について調査した。 <調査方法>夏目漱石の『三四郎』第一章を、紙の本と電子書籍の両方で体裁を揃えて準備した。このテキストを8つの部分に分け、被験者は各部分を紙の本と電子書籍で交互に読み進めるようにした。読書後、それぞれの部分の内容の記憶を問う質問に回答し、正答(1点)、部分正答(0.5点)、誤答及び無回答(0点)で採点した。 <調査結果>16人の大学生で調査を実施したところ、平均点は0.61点で、紙の本の部分は0.62点、電子書籍の部分は0.61点と差がなかった。紙の本と電子書籍の点数の差が0.2点以上になった部分が2つあったが、1つは「紙の本:0.63点、電子書籍:0.38点」、もう1つは「紙の本:0.56点、電子書籍1.00点」であり、どちらか一方の優位性を示すものではなかった。個人別に見ると、紙の本と電子書籍の点数の差が0.2点以上あった者が3人いたが、うち2人は電子書籍の点数が高く、他の1人は紙の本の点数が高かった。これらのことから、電子書籍による読書と紙の本による読書によって記憶の残り方に差異は見られなかった。 <備考>調査後に電子書籍の読書についての感想を聞いたところ、被験者のうち6人が「目が疲れる」「紙の本の方が読みやすい」と回答した。 昨年度までの調査により、中学生が電子書籍を利用することにより、読書冊数や読書時間の増加が見られた。一方、読書に対する意識には変化が見られなかった。読書に対する興味を喚起する上で電子書籍は有効と思われるが、基本的な読書指導と関連付けて活用を図ることが重要である。また、電子書籍による読書の問題点については、本年度開発した手法を他の文章(例えば図表が入ったもの)を用いて調査を進めることが望まれる。
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