2012 Fiscal Year Research-status Report
郷土の芸能の伝承による世代間の交流と地域文化の振興
Project/Area Number |
24531175
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Akita University |
Principal Investigator |
桂 博章 秋田大学, 教育文化学部, 教授 (60185832)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 郷土芸能 |
Research Abstract |
1.本計画の全体構想 秋田県の民俗芸能を研究対象とした本研究は、①高校生による郷土の芸能の継承、及び芸能の発表、②大学生による郷土芸能の習得と、小・中学校の授業における教材・指導法の開発、③モーションキャプチャ装置を用いた郷土芸能の演奏動作の計測と分析、及び工学的な機器を活用した学習法の開発、という内容から構成されている。 2.本研究の意義、及び重要性 秋田県には固有の民俗芸能が多く伝承されている一方、伝承者の高齢化と地域の過疎化のために伝承が途絶えたり、消滅の危機に瀕したりしている芸能も多いが、若い世代の積極的な参加が見られる芸能の場合には、現在でも共同体の多くの成員の参加が見られる。民俗芸能の継承という点からも、高校生や大学生が部活動や課外授業において、担い手から郷土の芸能を習得して演奏に参加することは意味のあることであり、また、演奏動作を工学的機器によって客観的に計測して郷土の芸能の学習に活用するということも、楽器の演奏法の研究、及び民俗芸能の領域では、これまで、ほとんど見られなかった試みである。 3.計画の具体的な実施内容 ①の高校生による郷土の芸能の習得・継承と演奏発表に関しては、高校の郷土芸能部についての予備調査、及び郷土芸能部の顧問からの聞き取り調査により、対象とする高校を選定し、また扱う芸能も「獅子踊り」が適当であると判断し、地元の保存会の調査、芸能の撮影、指導の依頼等を終えている。②に関しては、本学部の学生8人が秋田市の「土崎港祭り」の囃子を、保存会員より習得して教材化した後、附属小学校4年生の音楽の授業において実際に指導した。また③については、本学工学資源学部の研究室の協力を得て、モーションキャプチャ装置により、熟練者(4人)と初心者の大学生(2人)の祭囃子(太鼓)の演奏動作を計測し、撥の軌跡の記録、演奏動作の分析を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
24年度に予定していた「秋田県の民俗芸能と高校の郷土芸能部の調査」、及び「対象とする高校と芸能の種目の選定」については、現地調査を行ない、秋田県大曲市太田町の高校生が地元の「獅子踊り」を保存会員より習得し、演奏発表することに決定している。また、「秋田県の獅子踊り」については学会発表を、「秋田県の高校の郷土芸能部の活動」については、協力校を対象としてアンケート調査に基づいて、学会発表と論文執筆を行なっている。 「モーションキャプチャ装置による熟練者と初心者の演奏動作(太鼓の撥捌き)の計測」に関しては、秋田市土崎の港囃子の太鼓の熟練者と初心者(大学生)の演奏動作の計測・分析を終え、演奏者の動作、及び太鼓の撥の軌跡をコンピュータによってCG化して表示する学習ツールを作成した。 また、今年度に予定していた大学生による郷土芸能の学習と教材の開発等の活動についても、一部、終えており、すべての点で、おおむね当初の計画通りに進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
高校生による郷土芸能の伝承については、太鼓、ささら等の楽器、及び獅子頭、道化役の頭や衣装等を購入して揃え、高校文化連盟主催の郷土芸能部門の発表会と、文化祭などの高校内での発表の機会を持つことにより、次年度に予定している国民文化祭での演奏に向け、演奏技術の向上、レパートリーの習得に努め、以前の伝統的な演奏が可能な限り復元されるように努める。そのために、地元の芸能保存会、高校の郷土芸能部、及び郷土芸能部の顧問と連携し、練習が円滑に進むように環境整備等に努める。 舞いや楽器の演奏動作の計測と研究については、高校から比較的近くに位置している「わらび座」に協力を依頼し、地元の保存会員と高校生による獅子踊りの「舞い」と「太鼓の演奏動作」をモーションキャプチャにより計測し、熟練者の技を解明すると共に、分析の結果を生かした郷土の芸能の学習法を開発する。 大学生については、24年度と同様に民俗芸能の教材を開発し、附属校等において教材の有効性を検証する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
25年度の研究費の主たる支出項目として、①高校生が郷土芸能を伝承し、発表するために必要な楽器、獅子頭、衣装等の購入、②熟練者と初心者(高校生)の「舞い」と「演奏動作」を計測するための、「わらび座」のモーションキャプチャの使用料と、計測データの画像化など、データを加工するための人件費や被験者への謝金が挙げられる。 大学生による郷土芸能の伝承と技の解明、及び教材の作成については、24年度にほぼ終えているので、楽器を購入する予算が不足する場合には、学生による出前授業だけに留める。 なお、高校の郷土芸能部が地元の芸能を保存会員から習得し、演奏の発表をするためには、太鼓、獅子頭、衣装等を揃えることが必須なので、予算を重点的に配分し、その他の項目については、経費の削減に努めるようにする。
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Research Products
(4 results)