2012 Fiscal Year Research-status Report
中等国語科教員に必要な「古典力」育成のための教育プログラム開発
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24531184
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
三宅 晶子 横浜国立大学, 教育人間科学部, 教授 (20181993)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 古典教育 / 教育デザイン / 古文 / 漢文 / 伝統的言語文化 / 古典芸能 / 伝統工芸 |
Research Abstract |
中等国語科教員育成のためのプログラムとして、「古典力」(すなわち日本の古文・漢文の読解力、書画・演劇への造詣などを初めとする、伝統的日本文化の総合的な知識・能力)育成のために、以下の3つの観点からアプローチした。 1、「古典力」のアンケート実施と、調査方法の確立= 過去4年間に亘って、横浜国立大学教育人間科学部学校教育課程の一年次生全員に実施してきた、アンケートとその集計・分析・考察・公表を継続した。古典の実力テストの部分を、現代行われている中等古典教育に則した内容に一部改編した。前期分の調査報告は発表済みである。後期分に関しては、次年度に公表する。 2、今必要な教育内容の提示、教材・授業方法の開発= 大学院教育学研究科の授業の一環として、古典関係の教科書と指導書の内容を調査した。新指導要領に基づく新しい教科書が、従来の者とどう違うか、またその内容の特色と問題点を様々な角度から検討した。 古典教育デザイン研究会の月例会において、和歌・『徒然草』・『源氏物語』・『古事記』・『枕草子』など、中等国語教育における重要な教材について、担当者による研究発表と、参加者による討論を行った。学部生・大学院生・現職教員などとの討議を通じて、今日の古典教育の特色を洗い出し、改善すべき点・新しい観点からの教育法の提案・教材開発などの提案を行った。 3、3面マルチ映像を用いた能の撮影とテキスト作成= これまで、専門の業者に外注して行ってきた3曲4種類の能のマルチ画面映像の経験を活用して、今回、横浜能楽堂の公開講演(7月29日、観世流〈羽衣〉)の撮影を行った。ただし、撮影用の機材は早稲田大学演劇博物館より借用した。本年度ハイビジョンカメラ一式を購入、次年度にもう一式購入して、2方向からの撮影を自力で行える環境を整えていく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1のアンケート調査に関しては、きっちりした調査母体があり、方法も確立しているので、安定したデータが入手可能である。実力テスト部分の内容にもう少し工夫が必要(今の学生達には難しすぎる点がいくつかある)ので、そのあたりを改善したい。 2は、月例で開催する古典教育デザイン研究会が軌道に乗っているので、これを基盤として、充実した活動が行えた。現在小学校教員用ののテキスト作り(『元気づく古典』)を行っており、この経験を生かして、中等教員向けテキスト作りへと、つなげていきたい。 3については、機材購入が撮影に間に合わなかった点が惜しまれる。また、画像編集が難しく、編集用のパソコンソフトをようやく購入しただけで、終了してしまった点が残念であった。予定では三台のカメラによる三方向からの撮影を考えていたが、横浜能楽堂における現地調査と、昨今のハイビジョンカメラの性能の良さを鑑み、二台のかめらによる撮影で十分可能であると判断した。来年度もう一台カメラを購入して、すべて自力での撮影と編集を可能にすべく、来年度以降、努力したい。
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Strategy for Future Research Activity |
古典力アンケート調査と分析・公表、古典教材・古典教科書・参考書・副教材の収集、月一回程度の古典教育デザイン研究会開催を継続する中で、以下のことを行っていく。 1、国語教員古典力アップのためのテキスト作成= 初年度の作業を継承しつつ、テキストの具体的内容、構成を決定し、テキスト執筆、作成、発送を行う。 学部・大学院の授業テキストとして使用し、当該授業を実験授業として位置づけ、教育的効果、問題点などを学生へのアンケート、担当教員からの聞き取り調査などで、立体的に明らかにしつつ、改善すべき点は今後の課題として、恒常的に取り組んでいける体制作りを行う。 2、3面マルチ画像の舞台写真を利用した能のテキスト作り= 能の撮影を2年間で5曲予定している。特に完成年度である26年度の撮影曲は、撮影を許可してくださっている横浜能楽堂との連携によって、こちらの希望する曲を選択して、演能予定に組みこんでいただいてあるので、教材としてより適した作品を撮影することが可能である。 これらを自力で撮影、編集出来るように、技術と環境を整えていきたい。また、動画から静止画像を取りだして、画面合成したテキスト作りの方法を確立し、完成年度には、実際にテキスト作りを行う予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
H24年度残額(次年度使用額)41,077円が生じた状況は、横浜能楽堂におけるハイビジョンカメラでの撮影のための機材運搬費(宅急便による)の書類が不完全であったため、計上できなかったこと、次年度に高等学校教科書改訂版が出るため、その関連資料を収集するのに少しでも多く予算を回したいと考えたためである。 次年度は「古典力」アンケートの実施と分析、公開のために、25年度26年度ともに、大学院生に謝金(240,000円)で依頼する。 H24年度に購入した物と同じハイビジョンデジタルカメラ一式(約730,000円)を購入予定である。能楽堂までの機材輸送(宅急便による往復)、撮影時の補助(学生への謝金)などで50,000円程度必要であると予想される。また、ハイビジョンカメラによる撮影データの編集に際して、専門の技術者に依頼する必要が考えられる。その謝金として10,0000円程度を予定している。26年度ではさらに高度な技術が必要となる可能性があるので、それについては250,000円程度考えている。 25年度には高校の教科書が新しくなるので、それらの購入と、指導書・参考書・関連資料の購入に残りを充当したい。26年度には、収集を継続する。26年度は完成年度であるので、テキストの作成・発送などの経費(100,000円程度)が発生する予定である。
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