2012 Fiscal Year Research-status Report
日中韓の相互理解の推進を用いる教員養成プログラムに関する実証的研究
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24531208
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
全 炳徳 長崎大学, 教育学部, 教授 (10264201)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
楠山 研 長崎大学, 教育学部, 准教授 (20452328)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 海外教育実習 / 協働学習 / 日中韓 |
Research Abstract |
平成21年度からの科研(挑戦的萌芽研究:社会の国際化に備えた教員養成段階における隣国での教育実習と成果共有に関する研究)で海外での教育実習のあり方について模索してきた。その中で、相手国の学習内容をそのまま教育するのではなく、内容を踏まえた上で日本、中国、韓国の子どもたちが共有できる教材を開発し、相互理解を前面に出した学習を編成することが大事であることを学んだ。 これらの背景を踏まえて、平成24年度からの海外での教育実習に関する内容・方法等についての検討は、日中韓の学生たちが協働参画の形で行うことがもっとも良いと判断した。その結果は予想通り参加する学生や児童・生徒たちに好評だった。海外実習を担当した学生諸君はあまりハードルを感ずることなく指導案の作成等を協働で行った。むしろ、協働で作業をすることについても両国の学生ともに楽しかったとアンケート調査に答え、協働作業の優位性を示唆してくれた。更に、授業を受けた児童・生徒に授業後の感想を聞いたところでも、ほぼ全員が楽しかったと答えていた。 平成24年度の海外実習としては、韓国の漢陽大学校の学生たちと長崎大学の学生たちの日韓(二国間)での実施となった。上海師範大学校との交流も始まったため、上海での教育実習の実現に向けた方策を検討したが実現できなかった。特に、今回は両国の若者たちの意識調査も実施され、歴史的・政治的な未解決問題についての反応を調査し、海外実習に参加する教師を目指す若者たちの考え方を点検した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は日韓で行ってきた教育実習システムの確立を目指すとともに新しく始める日中の交流の中で生かそうと思っていた。上海師範大学との交流が結ばれたこともあり、上海にまず学生を送り、その可能性を探りたいと計画していた。そして、日中での教育実習、少なくとも上海での教育実習を企画し、実施したいと思っていた。しかしながら、中国との交流は諸事情により実施できなかった。費用の問題も大きく影響した。 その一方で、従来の日韓の教育実習を深化させ、どの単元でどのように展開するかの例示集を作成したいと計画した。また、授業を行う学生、授業を受けた子どもたちの反応も明確にすることによって、新しい国際理解教育の一歩を踏み出したいと計画していた。単元ごとに例示集を、授業を準備した学生たちが準備した。また、新しい国際理解教育の一報を踏み出すために、本研究に参加してきた学生たちが自らの思案を出し、アンケート調査を実施した。日韓の学生間の国際交流授業はどのような意義を見出すことができるのかをアンケート結果から考察する目的があった。 アンケート調査の対象者は海外教育実習プログラムに参加した韓国・漢陽大学の学生参加者計15名、長崎大学学生参加者計23名を対象に事前・事後の調査を実施した。その後回収し、集計した。アンケート調査に回答してくれた人は17名で、回収率は45%であった。アンケート調査の内容は大きく「国際交流授業プログラム」について、「参加国の国・人への印象」について、「参加者本人」について、「日韓関係」についての4種類に大別される。 結果、言葉や文化には違いがあろうとも、同世代の友人として良い関係を築くことは大いに可能であるということがアンケート調査から垣間見えた。両国の発展的な関係改善のためには、これからもこのような協働活動と成果が毎年着実に実行され、多文化理解の実績を残していくべきである。
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Strategy for Future Research Activity |
漢陽大学校との話し合いをより深め、教育実習で何を鍛えるのかについての議論をし、最終的に国際理解教育にどのように役立てるかを日本・韓国それぞれの学校教育を前提にして明らかにする。その結果を受けて、教育実習の単元方法を決め、実践する。その後、学生及び児童・生徒の感想などを聞き、分析をしたい。 一方、中国上海に関しては、まず上海師範大学に学生を送り込み、彼らの意見を聞きながら、両大学の教員で教育実習を交流教育の中に組み込むための内容等を検討する。そして、上海からの学生が来日するのが可能になれば、日本での内容・方法についても議論を行いたい。それが不可能であったとしても、継続して上海に学生を送り、中国における教育実習のあり方を追究する。 そして、これらが円滑に行われることになれば、中韓の学生交流も夢ではなくなる。このように学校教育の教員養成の段階で日中韓の交流が可能となれば、3国間の相互理解が進み、将来に向けた隣国理解からの国際理解教育を進めるための教育実習カリキュラムの策定を行いたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度の成果を受けて、漢陽大学校との教育実習をより充実するとともに、上海での教育実習にチャレンジしたい。更に、上海師範大学との教育内容・実習方法などを上海師範大学の教員と討議を重ねていきたい。そして、試験的な教育実習を上海師範大学の附属小学校または、附属中学校で行う予定を立てている。 上海の学生の場合は、日本へ来ることは難しいことも考えられ、漢陽大学校とのように相互に訪問し合うことは出来ないかもしれない。その場合は、上海での教育実習ばかりになるが、双方の学生の協力で行うという基本線は崩さず、そのあり方を探究したい。国際理解教育を支える教員を本研究のように相互の国の教壇を経験することから養成するという発想は他には見られないのではないかと思う。この試みが成功すれば、懸案となっている日中韓の相互理解が小中学校段階から始まることになり、融和も自ら進むと期待される。
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Research Products
(1 results)