2013 Fiscal Year Research-status Report
日中韓の相互理解の推進を用いる教員養成プログラムに関する実証的研究
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24531208
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
全 炳徳 長崎大学, 教育学部, 教授 (10264201)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
楠山 研 長崎大学, 教育学部, 准教授 (20452328)
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Keywords | 海外教育実習 / 協働学習 / 日中韓 |
Research Abstract |
平成21年度からの科研(挑戦的萌芽研究:社会の国際化に備えた教員養成段階における隣国での教育実習と成果共有に関する研究)で海外での教育実習のあり方について模索してきた。その中で、相手国の学習内容をそのまま教育するのではなく、内容を踏まえた上で日本、中国、韓国の子どもたちが共有できる教材を開発し、相互理解を前面に出した学習を編成することが大事であることを学んだ。これらの背景を踏まえて、平成24年度からの海外での教育実習に関する内容・方法等についての検討は、日中韓の学生たちが協働参画の形で行うことがもっとも良いと判断した。その結果は予想通り参加する学生や児童・生徒たちに好評だった。海外実習を担当した学生諸君はあまりハードルを感ずることなく指導案の作成等を協働で行った。むしろ、協働で作業をすることについても両国の学生ともに楽しかったとアンケート調査に答え、協働作業の優位性を示唆してくれた。更に、授業を受けた児童・生徒に授業後の感想を聞いたところでも、ほぼ全員が楽しかったと答えていた。 平成24年度の海外実習としては、韓国の漢陽大学校の学生たちと長崎大学の学生たちの日韓(二国間)での実施となった。上海師範大学校との交流も始まったため、上海での教育実習の実現に向けた方策を検討したが実現できなかった。特に、今回は両国の若者たちの意識調査も実施され、歴史的・政治的な未解決問題についての反応を調査し、海外実習に参加する教師を目指す若者たちの考え方を点検した。 平成25年度も同じく、海外実習として中国の上海師範大学での実施ができなかった。政治的な動きに動揺されたところが多い部分については克服すべき課題である。結果、韓国・漢陽大学での海外実施で交流を深めつつ、アンケートデータ分析から日韓の学生の違いを明らかにすることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
計画段階での、本研究は日韓で行ってきた教育実習システムの確立を目指すとともに新しく始める日中の交流の中で生かそうと思っていた。上海師範大学との交流が結ばれたこともあり、上海にまず学生を送り、その可能性を探りたいと計画していた。そして、日中での教育実習、少なくとも上海での教育実習を企画し、実施したいと思っていた。しかしながら、中国との交流は諸事情により実施できなかった。中国側の費用の問題も大きく影響した。 その一方で、従来の日韓の教育実習を深化させることができるよう配慮した。また、授業を行う学生、授業を受けた子どもたちの反応も明確にすることによって、新しい国際理解教育の一歩を踏み出したいと計画していた。単元ごとに例示集を、授業を準備した学生たちが準備した。また、新しい国際理解教育の一報を踏み出すために、本研究に参加してきた学生たちが自らの思案を出し、平成25年度もアンケート調査を実施した。 アンケート調査の対象者は海外教育実習プログラムに参加した日韓の学生を対象に事前・事後の調査を実施した。その後回収し、前年度との比較のための集計をした。結果、日韓関係の政治的な悪化が影響していることが浮き彫りとなった。また、歴史的な事実の抽象的な日本の学生と具体的な表現をする韓国の学生が対比された結果となった。 しかしながら、前年度と同様、言葉や文化には違いがあろうとも、同世代の友人として良い関係を築くことは大いに可能であるということがアンケート調査から分かった。両国の発展的な関係改善のためには、これからもこのような協働活動と成果が毎年着実に実行され、多文化理解の実績を残していくべきである。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度の成果を受けて、漢陽大学校との教育実習をより充実するとともに、平成26年度は是非、数名でもいいので中国での教育実習にチャレンジしたい。更に、上海師範大学か東北師範大学と間に教育内容・実習方法などを討議していきたい。そして、試験的な教育実習を上海師範大学か東北師範大学の附属小学校または、附属中学校で行う予定を立てている。 なお、今年度は日韓の交流を長崎大学にて開催し、韓国の漢陽大学の学生たちが参加を予定している。継続的な研究動向の調査を行うことにより、本事業の成果をまとめたい。国際理解教育を支える教員を本研究のように相互の国の教壇を経験することから養成するという発想は他には見られない。最終年度でもある今年、この試みが成功することを祈る。さらに、これらの結果から日中韓の相互理解が小中学校段階から始まることになり、融和も自ら進むと期待される。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本事業の計画では平成26年度が最終年度となっている。本事業での結論を出すべき年度でもある。平成26年度でも、日韓の海外実習授業は計画され、日本の長崎大学にて韓国の漢陽大学の学生たちを迎えての開催が決まっている。しかし、依然として中国との交流は進んでいない。是非、小規模でもいいから中国での海外実習を実施してみたい。昨年度と同じく、諸事情により中国での海外実習授業が実施できない場合は、本事業で得られた経験とノーハウをさらに発展させるべく、東アジアの他の地域、例えば台湾、インドネシアなどでの海外実習の可能性を探りたい。 平成26年度は主に、中国での海外実習チャレンジ経費として資金の使用を計画する。しかし、諸事情により中国での海外実習が実現できない場合は、韓国以外の、東アジアでの海外実習先を開拓するために訪問調査を予定している。東アジアの海外実習のための訪問調査先としては、今のところ台湾を第一候補として、インドネシアを第二候補として挙げておく。
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