2013 Fiscal Year Research-status Report
身近な染色材料を使用した安全で簡便な家庭科染色教材の開発
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24531211
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Research Institution | Hokkaido University of Education |
Principal Investigator |
小松 恵美子 北海道教育大学, 教育学部, 准教授 (70550408)
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Keywords | 家庭科 / 染色教材 / 玉ねぎ外皮 / 土染め |
Research Abstract |
本研究は、「玉ねぎ外皮染めおよび土染めの染色現象の解明」と「教材化に向けた安全で簡便な染色を行うための最適染色条件の選定」の2本の柱から成っている。平成24年度の交付申請書に記載した研究項目1から6の中で、項目3(「現在までの達成度」で説明)以外は平成25年度までに以下のように進展した。 研究項目1「鉄、カリウム、アルミニウム水溶液のpHが玉ねぎ外皮染色布の色に与える影響について解明する」について:混合媒染液において、鉄、アルミニウムと玉ねぎ外皮色素との錯体形成が促進し始める混合比率とpHの関連を学会で発表した。現在は、媒染効果の発現と混合した各媒染剤のモル濃度の比率の関係まで分析が進んでおり、その成果を平成26年度家政学会で発表する予定である。 研究項目2「玉ねぎ外皮染めの媒染剤に食品添加物が応用できるか検討する」について:食品添加物として市販されている鉄・アルミニウム等の金属塩が化学実験試薬と同様に媒染剤に使用できることを明らかにし、媒染剤の濃度を下げる試みも行い、平成25年度家庭科教育学会で発表した。 研究項目4「市販の土顔料を用いて布の染色方法を検討する」および研究項目5「染色布の堅牢度(色持ちの良さ)を調べ、実用に耐える染色条件を検討する」について: 2種の土顔料を用いて染色機構解明の観点から染色方法と堅牢度を検討し、論文を発表した。 研究項目6「教材化に向けて染色手順を単純化し時間を短縮化し、授業実践を行って教材が適切であるかを検証する」について: 授業実践に際し多量の玉ねぎ外皮を準備するのは難しいことから、玉ねぎ外皮の有効利用について検討し論文を発表した。得られた染色布の色についても官能評価を行い、論文化した。また、染色実習を行った高校と行っていない高校の生徒に質問紙調査を行い、高校家庭科での染色実習の有効性を検討し、論文化した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、小中高の家庭科教員が求めている「身の回りの用具で簡便に行え、明確な結果が得られて驚きや納得をもたらす実験・実習教材」として、玉ねぎ外皮染めと土染めに着目し、染色教材として確立するための基盤研究を行うことである。 玉ねぎ外皮染めの理論については、外皮色素と媒染剤の結合機構の解明が進んでいる。また教材化については、高校家庭科向け教材の検討が順調に進展しており、論文を3本発表できた。しかしながら、小・中学校向けに教材化するためには、時間や手順などに多少の幅が出ても失敗しにくい実験条件を明確にする必要があり、その点は更に検討を進めなければならない。従って平成26年度は、染色媒染布の色の違いがより顕著に出るような濃色化の検討や、媒染剤水溶液の保存安定性等の検討を進めて行く。 土染めも、染色機構解明のための研究が進んでおり、論文を1本発表できた。教材化に向けた検討も進めており、平成26年度は学会発表を目指して更に進展させる予定である。一方、それらを優先させたために、平成25年度も着手できなかった研究項目は「地域の色土の利用(研究項目3)」である。平成26年度は必ず検討したい。 以上の状況から達成度を総合的に判断すると、遅れている計画もあるが研究はおおむね順調に進んでいると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度の研究推進方策の予定は、次の通りである。 1.地域の色土を土染めに利用するための研究を進める。染色に適切な土を北海道内(できれば道北地域)で探し、簡便な方法であるパックテストを活用して安全性を確認した上で、教材への利用を検討する。 2.玉ねぎ染め・土染めの教材化に向け、安全で簡便、さらに失敗が少ない染色を行える染色条件を検討する。用具の工夫や、染色現象の理にかなった作業手順の合理化等を検討する。また実用に耐える染色条件を決定するために、染色布の耐光堅牢度・摩擦堅牢度を調べる。 3.北海道教育大学附属小・中学校や、高校等での授業実践を行い、教材が適切かどうか検証し、さらに改善を進めてゆく。 4.開発した染色教材の実験・実習のノウハウと染色の特徴・原理などをわかりやすく解説した資料を作製して公表し、教育現場で活用されることを目指す。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究代表者が、当該年度の直接経費を全額使用したと思い込み、残額があることを認識していなかった。 実験布の購入に使用する予定である。
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Research Products
(12 results)