2012 Fiscal Year Research-status Report
児童生徒が主体的な行動選択の力を身につけるための道徳指導法に関する研究
Project/Area Number |
24531220
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Aichi Institute of Technology |
Principal Investigator |
川口 洋誉 愛知工業大学, 工学部, 講師 (60547983)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
笠井 尚 中部大学, 公私立大学の部局等, 教授 (10233686)
古里 貴士 東海学院大学短期大学部, その他部局等, 講師 (00610271)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | フィンランド / 国際情報交換 |
Research Abstract |
初年度にあたる当該年度は、国内道徳教材資料の収集・分析とフィンランドにおける道徳(宗教・人生観教育)教育の実地調査を行った。 国内道徳教材資料の収集・分析については、大手民間出版社発行の副読本(2社)と愛知県・埼玉県のそれぞれの教委関係者作成の副読本を入手し、分析を行った。①地域教材と呼ばれる埼玉県の副読本では、3・11以降、自己犠牲を美徳とする読み物が出現しており、これについて改定教育基本法における公共の精神や愛国心の強調とも関連付けながら、道徳教育における科学性・客観性の欠如とともに批判的分析を行った。②民間出版社の副読本については、読み物教材として設定された場面において合理的・主体的行動の判断の余地を認めておらず、児童生徒の判断や行動の範囲を狭めるおそれがあることや現実的な判断・行動との乖離(現実味のなさ)を指摘した。 フィンランドにおける道徳教育の実地調査では、愛国心・公共の精神などに日本で強調されている価値観がいかに指導されているのか、また福祉国家を支える市民性(市民の主体性)をいかに育成しているのかという観点から、日本における中学生から高校生にあたるクラスにおける宗教、人生観教育、社会学の授業を合計9コマ参観した。そこでは、①学校教育では愛国心や宗教心について扱わないこと(家庭教育の範疇)、②客観的な事実を示した上で、生徒にそれらにもとづく思考や判断、行動を促していること(講義形式とディスカッション形式の授業の併用)、③EU加盟後の移民の受け入れに伴い、多様性への理解についての指導が強調されていること、④具体的場面(親友に忠告をするとき、親に嘘がばれたときなど)を設定し、ロールプレイングを伴いながら、自身の判断や行動を考えさせる指導がなされていたことなど、実際の授業やインタビューを通して見聞を得えることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
国内道徳教材・指導書の収集・分析については、研究計画で予定していたものよりやや遅れている。各都道府県教育委員会によって作成された副読本や民間出版社発行の副読本の収集ならびに合理的行動という観点からの分析、それにもとづく指導案モデルの作成が進んでいない。これは、改定教育基本法との関連で愛国心・公共の精神の観点からの分析を優先したためである。 フィンランド調査については、調査結果のアウトプット(学会発表、論文執筆)がなされていない。これは3月上旬に現地調査を行ったことや、現地調査を通して移民政策との関連での多様性教育に関する分析の必要性について新たな課題が見出されたためである。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)道徳副読本・指導書の分析と指導案の作成・試行 都道府県教育委員会作成の道徳副読本と付属指導書については、分析対象とする地域を拡大する(愛知県、大阪府、京都府)。それにもとづいて、指導案モデルの作成・改定を行い、現在、フィールドワークを通じて研究交流がある小中学校(犬山市や日進市の公立学校)やその教員に協力を依頼して、実際の授業での指導方法を試験的に実施し、その効果を確かめる。 (2)国内・海外の道徳教育実践事例の調査 国内については大阪府、京都府など、道徳教育の先進地域における授業実践や副読本作成の実態を調査し、有効性の高い活動についての情報収集を行う。海外については初年度にひきつづき、フィンランドを対象とし、移民受け入れの観点から、移民の受け入れ教育や移民との共生教育に力を入れているトゥルク市における授業実践や教育当局の取り組みについて観察・インタビュー調査を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
(1)について、副読本・指導書の収集の費用、犬山市・日進市の公立学校への研究協力の謝礼として、研究費を使用する予定である。 (2)については、大阪、京都への調査旅費(3名で各2回を予定)、フィンランドの調査旅費(3名で1週間程度の滞在を予定)、フィンランドでの調査のコーディネート・通訳の代金として、研究費を使用する予定である。 そのほか、資料収集・整理、分析の補助として、学生アルバイトを依頼する予定である。
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Research Products
(4 results)