2013 Fiscal Year Research-status Report
共有価値に基づく道徳教育カリキュラムの開発に関する研究
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24531226
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Research Institution | National Institute for Educational Policy Research |
Principal Investigator |
西野 真由美 国立教育政策研究所, 教育課程研究センター基礎研究部, 総括研究官 (40218178)
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Keywords | 道徳教育 / 共有価値 / カリキュラム開発 |
Research Abstract |
本研究の目的は、グローバル化の進展する今日の社会における道徳教育の理念とカリキュラム開発の枠組みを構築するため、その基盤となる「中心的な共有価値(Core Shared Values)」を提起することである。 この目的を達成するため、本研究では、世界各国において先行して行われた「共有価値」のプロジェクトを比較評価し、今後の道徳教育に求められる共有価値の方向性をアジア太平洋各国の道徳教育研究者らと協働で検討し、これらの成果に基づいて我が国における「共有価値」の在り方を検討する。 本年度は、我が国における価値教育の動向と課題について各国の道徳教育研究者からレビューを受けるとともに、アジア太平洋各国における現行道徳教育における共有価値を比較し、共通の枠組みの構築に向けた議論と作業を行った。 諸外国の動向を比較検討するなかで、我が国の道徳教育における視点、「自分自身に関すること」、「他の人との関わりに関すること」、「集団や社会との関わりに関すること」については、価値を整理する枠組みとして有効であることが確認できた。また、「自然や崇高なものとの関わりに関すること」については、各国の道徳教育にはあまり反映されていない視点であり、我が国の道徳教育の特色であることがわかった。同時に、自然環境保護や生命尊重に関わるこの視点は、現代的教育課題の一つであるESDにおいて重視されている価値と共通であり、共有価値として今後重視していくべき方向であることも確認された。課題として、「共有価値」の枠組みを整理する上で、諸外国が参照している心理教育の視点(アイデンティティやコミュニケーション)がこれまで我が国の道徳教育には反映されておらず、これらの点を共有価値の枠組みとどう関連づけていくかという問題が明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
アジア・太平洋各国の道徳教育研究者との協働のためのネットワークを構築し、共通の枠組みを構築するための意見交換の場を確保することができた。これによって、各国の道徳教育の最新の動向を比較しながら検討を進め、共有価値を構築するための「試案づくり」を協働で進めるとともに、我が国の現行道徳教育の課題も明らかとなった。
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Strategy for Future Research Activity |
アジア・太平洋地域の道徳教育の最新動向を「共有価値」の視点で整理した上で、これを参照しつつ、日本型の「共有価値」の枠組みを今後の社会で求められる資質・能力と関連づけて提起する。成果を11月開催のアジア・太平洋地域道徳教育学会で発表するとともに、ラウンドテーブルを開催して、各国研究者からのレヴューを受ける。 開発した「共有価値」について、国内の学会において発表し、各学校における道徳教育のカリキュラム開発に役立てるための具体的な活用方法を提案する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
訪問調査を予定していた香港・シンガポールへの現地調査が、いずれも先方の協力者の日程により、実施できなかったため。 研究協力者と再度日程を調整し(9月と10月を予定)、現地調査を実施する。
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