2013 Fiscal Year Research-status Report
盲・知的障害児の探索行動および認知機能の発達を促す教材・教具の開発
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24531230
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
佐島 毅 筑波大学, 人間系, 准教授 (20241763)
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Keywords | 盲・知的障害児 / 認知発達 / 教材教具 / 重さ要因 |
Research Abstract |
盲児・知的障害児の認知発達を促すためには、触運動感覚への教材・教具の応答性が重要であることから、教材の重さ要因が盲児の課題学習における操作性に及ぼす効果について実験的に検証することを目的とした。対象児は幼・小学部段階の盲児および盲・知的障害児であり、課題は1歳以上の知的水準であれば、達成可能な円柱さし課題であった。課題は縦10㎝、横32㎝、高さ8cmの木製の直方体に、直径2.5㎝、高さ4.5㎝の金属性の円柱が5本入れる円柱さし課題であり、円柱は10・30・50・70・90・110(g)の6水準とした。その結果、円柱が重い条件ほど、①課題遂行時間が短く、②着地のずれの回数が少なく、③円柱の傾きの回数が少なく、④非操作手による確認が少なかった。これらのことから、円柱が重い条件の方が、①課題遂行における操作がしやすい、②穴の位置を定位しやすく自分の体の動きを調整しやすい、③穴の向きに円柱の向きを合わせやすい、④円柱が入ったことがわかりやすいということが考えられる。円柱さし課題は対象児が十分に理解・達成できる課題であるにも関わらず、重さ要因による差が認められたことから、盲児が課題を遂行する際の操作のしやすさにおいて、教材に一定の重さがあることの重要性が示唆された。具体的には、10・30gほどの重さでは軽く、50g以上の重さがあることが、触運動感覚によって知覚しやすい教材の条件であると考えられる。その背景には、円柱の重さが鉛直方向へ手の動きを明確にすることで空間をイメージしやすくし、空間と自分の動きとの関係が把握しやすくなり、教材が操作しやすくなると考えられた。 また、盲幼児、盲知的障害児用のはめ込み構成課題用の教材教具を試作・開発し、その課題の難易性に及ぼす要因について検討をした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
研究計画のうち、重さ要因による教材教具の応答性に関する研究をまとめることができ、次年度実施予定の研究内容についても一部実施することができた。研究成果は学会発表をするとともに、学術誌に投稿,掲載された。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、以下のように研究を進める予定である。 (1)盲幼児、盲知的障害児の課題学習における教材の重心と操作性の関連に関する研究の実施 盲児が学習する際に用いるのは手指の操作を通した触運動感覚であるが、その触運動感覚によって知覚しやすい条件として重さがある。すなわち、教材に一定の重さがあることで物の位置・方向がより知覚しやすくなる。この点について福田・佐島(2012)が円柱さし課題を用いて実験的に検証し、課題遂行時間や操作の円滑さにおいて重さの効果が認められることを明らかにした。触運動感覚による位置・方向の知覚を容易にする条件には、重さに加えて重心の位置が挙げられる。すなわち、円柱さしや型はめなど物の出し入れをする課題においては、下方に重心がある方が、鉛直への方向性が触運動感覚に明確にフィードバックされるため、位置・方向の知覚が容易であると考え、実験的に検証する。 (2)盲幼児,盲知的障害児用のはめ込み構成課題の難易性に及ぼす要因に関する知見に基づく指導段階表の作成 (3)研究成果の学会発表及び学術誌への投稿 (4)研究成果の全国盲学校への成果普及
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度使用額(A-B)の額は2,042円であり、ほぼ当該年度所要額を使用している。 今年度所要額に2,042円を加えて、今年度の予定通りに使用する。
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