2012 Fiscal Year Research-status Report
知的障害児の小集団指導におけるチームティーチング:指導者の位置取りの観点から
Project/Area Number |
24531238
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Joetsu University of Education |
Principal Investigator |
村中 智彦 上越教育大学, 学校教育研究科(研究院), 准教授 (90293274)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 知的障害 / 自閉症 / 小集団指導 / チームティーチング |
Research Abstract |
本研究の目的は、知的障害児や自閉症児の小集団指導において、対象児個々の課題遂行を促進する効果的なチームティーチング(以下、TT)の手続きの検討である。3カ年に渡り、小集団指導のTTにおいて、主指導者と補助指導者の役割分担に関連する「指導者の位置取り」や「指導者間のコミュニケーション」に着目し、それらの相違が指導者の支援行動や対象児個々の課題遂行や逸脱行動に及ぼす効果を検討する。 1年目の24年度では、特別支援学校(知的障害)を対象にTTに関わる生態学的調査を実施する予定であったが、大学研究センターにおいて、特別支援学校小学部「体育科」の授業をシミュレートした小集団指導を実施し、補助指導者(以下、ST)の位置取りや役割を実験的に操作し、対象児の課題遂行や逸脱行動に及ぼす影響を検討した。研究計画を一部変更したのは、研究目的の達成には臨床的研究が有効であること、対象児や家族の同意や協力が得られ指導体制が整備できたからであった。対象児は、小学校特別支援学級1、2学年の知的障害児や自閉症児5名。プレールームにおいて、X年5月から11月までの約7か月間、週1回、約40分間の運動課題を実施した。1回の指導を1セッションとし、計19セッションを行った。主指導者1名とST2名の指導体制によって「体操」「リズム運動」「サーキット運動」の3つの運動課題を実施し、STの位置取りや役割を実験的に操作して対象児の運動課題の遂行(正反応率や遂行率)に及ぼす影響を調べた。その結果、体操課題ではSTが対象児の前方に位置取ることで、遂行レベルの低い対象児の正反応率や遂行率が増加した。リズム運動とサーキット運動では、遂行レベルの低い対象児への個別支援が正反応率や遂行率を高めた。これらの結果は、小集団指導において、STの動作モデルや個別支援の役割が有効であることを示唆している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1年目の24年度では、研究計画を一部変更し、2年目に計画していた大学での実験研究を実施した。研究計画を一部変更したのは、研究目的の達成にあたって臨床的、実験的研究が有効であること、対象児や家族の同意や協力が得られ指導体制も整備できたからであった。大学での実験研究は25年度も継続する。25年度とは指導場面や課題内容を変更して実験を実施する。指導場面や課題内容の違いと、小集団指導における効果的なTTとの関連が分析可能と考えられる。また、25年度に実施予定の特別支援学校(知的障害)を対象に行う生態学的調査・分析では、24年度の大学での実験研究の成果を調査項目に反映する。そのことで、効果的なTTに関わる貴重な基礎資料が得られると予測した。 以上のことから、(2)おおむね順調に進展していると自己点検による評価を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
2年目の25年度では、1年目に引き続き、大学研究センターにおいて、特別支援学校の授業をシミュレートした小集団指導を実施し、補助指導者(以下、ST)の位置取りや役割を実験的に操作し、対象児の課題遂行や逸脱行動に及ぼす影響を検討する。25年度では「朝の会」「作業学習」の指導場面を設定する。 併せて、特別支援学校(知的障害)を対象に、生態学的調査・分析を行う予定である。小集団指導でのTTについて、MT・STの位置取りや指導者間のコミュニケーションを中心に、非交流的な観察調査を行い、支援学校でのTTの実態を明らかにする。対象校は県内支援学校のうち6校程度、県外の4校程度とする。研究依頼と訪問による調査が実施可能で、無理のない対象数とする。小学部(低・中・高学年)、中学部、高等部の特定の学級を2~3日間、研究代表者1名と調査補助1~2名の大学院生でチームを構成し、観察者ごとに対象を定めた生態学的な観察調査を行う。対象場面は児童生徒が3~4名以上の小集団指導で複数指導者が支援を行うTTを実施している授業とし、観察者が指導者や児童生徒に働きかけを行わない非交流的観察調査を行う。評価チェックシートを用いて、(a)指導者の支援行動と、 (b)対象児の課題遂行と逸脱行動の生起状況を記録し、指導場面ごとにTTにおけるMT・STの位置取りや指導者間のコミュニケーションについてパターン分析を行い、対象児の課題遂行、逸脱行動の生起状況や障害種別や程度との関連を分析する。各学校、小、中、高等部の結果を比較検討し、対象児の課題遂行を促進し、逸脱行動の生起を防ぐことに作用するTTの条件について、MT・STの位置取りと指導者間のコミュニケーション方法の観点から検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
24年度は、特別支援学校(知的障害)の調査研究を実施しなかった。当初計画していた調査旅費(300,000円)を使用しなかったため、24年度の未使用額(245,315円)と25年度の使用額(300,000円)と合わせて、大学での実験研究と学校での調査研究の2つを実施する計画である。
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