2012 Fiscal Year Research-status Report
重度重複障害を持つ子どもの参加を支える相互的コミュニケーションと支援
Project/Area Number |
24531245
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Hyogo University of Teacher Education |
Principal Investigator |
高野 美由紀 兵庫教育大学, 学校教育研究科(研究院), 教授 (70295666)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
有働 眞理子 兵庫教育大学, 学校教育研究科(研究院), 教授 (40183751)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 重度重複障害 / 相互的コミュニケーション / インタラクション / 教師の態度 / マルチモーダル / ストーリー・テリング |
Research Abstract |
本研究では、重度重複障害があり、やり取りの難しい児との相互的コミュニケーションを成立させる方略および成立することの教育や発達上の効果・意義を明らかにし、その成立を促進する授業教材や関わり方のリソースおよび管理システムの開発、さらには親支援への発展の模索を行うことを目的として、3年にわたる研究を進めていこうとしている。 初年度である平成24年度は、相互的コミュニケーションを成立させる関わり手の方略を、教師の態度という観点から分析した。これまでに集積してきた授業に加えて新たに音楽療法の授業、ストーリー・テリングの授業を見学あるいはビデオ記録した。それらのデータをもとに、マルチモーダルな記述・分析方法を用いて分析を行い、学会での発表により意見交換を行いながら成果をまとめてきた。現時点で明らかになったことは、一見偶然として起こるような相互的なコミュニケーションも、児童生徒の実態把握、教師の想像力、教師間の連携がうまく連動して作られた楽しい活動空間の中で相互的なコミュニケーションが生まれているのであろうということである。また、分析方法として新たに吹き出しを用いて、吹き出しに記述したコメントから概念を抽出するという手法も試みた。 さらに、ストーリー・テリングの教材を作成・販売し、希望する特別支援学校に出向いてストーリー・テリングを行っている、ある英国のチャリティ団体について、実際に訪問して団体の活動の見学、資料収集を行った。教材は、いくつかの感覚(視覚、聴覚、触覚、嗅覚など)で感じることができるものであり、教材の製作・配布やストーリー・テリングおよびストリーテラーのトレーニングなどを組織的に行っていた。今後さらにこのチャリティ団体の活動を分析し、日本での重度重複障害のある子どもたちへの教育実践での援用について検討をしていきたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
相互的コミュニケーションを成立させる方略および成立することの教育上の効果、発達上の意義の解明については、詩の朗読の授業および、音楽療法の授業の中での相互的コミュニケーションがみらる箇所の分析を行い、その成果を学会において発表した。 相互的コミュニケーションを促進する授業教材、管理システムの開発については、予定よりも早く英国の施設や特別支援学校への訪問が可能になり今後の展開が期待できる情報交換や資料収集を行うことができた。 その一方で、ビデオ録画による資料収集は個人情報への配慮等で予定したほどには進まなかった。これについては、今後も難渋することが予想され、個人情報の保護を優先しながら研究を進めていく上では、研究方法を再考していく必要があると思われる。分析した結果をかかわった教師等支援者へフィードバックし、その際のディスカッションや教師等支援者へのインタビューを資料に追加して分析を進めることなどを新たに考慮していきたい。
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Strategy for Future Research Activity |
資料収集について、特別支援学校での授業、音楽療法セッション、ストーリー・テリングのセッションなどの資料収集を、個人情報に配慮しながら可能な範囲で今後も行っていく。その他、障害児施設における支援者と障害のある児者がいる活動場面でのインタラクティブなかかわりや、今までに資料収集をしてきたインタラクションに関わる支援者へのインタビュー資料などの収集を計画していく。 記述分析については、今後は学会発表とリンクしながら行なうのみではなく、学術誌への論文投稿や関連の研究会での情報収集をもとに新たな手法や変法を検討していく。 相互的コミュニケーションの成立を促進する授業教材、関わり方略のリソース化と活用しやすい情報提供を可能とするリソース管理システムの開発については、昨年度に訪問した英国のチャリティ団体の情報を更に収集して、そこでの活動の分析を進めていく。 知的障害の国際学会(IASSIDD)が8月に東京で予定されている。そこでの発表を通して研究を進めていくとともに、参加者との交流による情報交換を行い、可能であれば英語圏の実践研究や教材の調査に係る情報を収集したい。また、9月に東京で予定されている日本特殊教育学会において英国チャリティ団体の活動に関しての発表を予定しており、日本全国の研究者や特別支援学校教員等参加者との情報交換を行いたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度使用額(B-A)については、授業教材のDVD化のためのDVD作成費である。 その他次年度新たに申請している、直接経費を70万円使用する計画である。 関連図書(障害児支援、発達心理・発達医学)の購入に5万円、教材(BagBook、DVDなど)に2万円、インクカートリッジ、USBメモリーなどに2万円を物品費として計上している。 旅費としては、8月にある東京での国際知的障害研究学会(IASSIDD)、9月にある東京での日本特殊教育学会への参加、英国(BagBook、Openstorytellingなど)への訪問など44万円を計上している。 人件費・謝金としては、音楽療法等専門家の助言のための謝金15万円を計上し、その他として、郵送費2万円を考えている。
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