2013 Fiscal Year Research-status Report
重度重複障害を持つ子どもの参加を支える相互的コミュニケーションと支援
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24531245
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Research Institution | Hyogo University of Teacher Education |
Principal Investigator |
高野 美由紀 兵庫教育大学, 学校教育研究科(研究院), 教授 (70295666)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
有働 眞理子 兵庫教育大学, 学校教育研究科(研究院), 教授 (40183751)
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Keywords | 重度重複障害 / 相互的コミュニケーション / インタラクション / マルティモーダル / ストーリーテリング / 教師の態度 |
Research Abstract |
本研究においては、1)重度重複障害のある子どもの相互的コミュニケーションを成立・促進させる方略およびその効果の解明、2)相互的コミュニケーション成立を促進する支援方法の集積と管理システムの開発、3)成果を基にした親支援への発展の模索を目的としている。 1)の支援方略については、相互的コミュニケーションを成立・促進させる教師の態度についての分析を基にさらに発展させ概念化をおこなった。今後概念化をさらに進めていくために身体性や共感性、情動などに関連する資料収集も併せて行った。成果としてIASSIDDで発表したがその発表では、支援者が子どもと共に活動する中で、自らが楽しむこと、そして楽しむ中で新たに発想したことを子どもの特性に合わせて活動内容に取り込む創造性が重要であることを強調した。相互的コミュニケーションを成立・促進させることによる効果については、読み聞かせに複数のモダルを積極的に用いるマルティセンソリーストーリーテリング(MSST)の場面を分析した。 2)についはMSSTを作成、販売、ストーリーテラーの派遣や教師等へのトレーニングを行っているイギリスにあるチャリティ団体(Bag Books)について、昨年度に訪問して収集した資料を基に分析を行い、日本の教育で活用できる可能性を探った。これを特殊教育学会で発表した。さらに、その団体が発行するストーリーの中から日本の文化的背景の中で生活する子どもに適応しやすいものを選んで日本語への翻訳をして、日本文化に適応するための改変、試行を行いさらに工夫を重ねた。また、イギリスにあるコミュニケーション支援narrative intervention programmeについて、次年度にインタビューや調査を行う土壌を作った。 3)については、子どもとの相互的コミュニケーションを促進する絵本の作成・配布等についての計画をしている段階である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究開始前および年度当初に計画したことが、ほぼ想定通りに進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度である平成26年度は、相互的コミュニケーションを促進する教材の作成や提供、そして家族のサポートにつながる仕組み作りに重点を置いて研究していきたい。 ひとつには、Bag Booksのマルティセンソリーストーリーテリング(MSST)を日本の文化的背景に合わせて改変して日本版を作成することである。特に音楽的要素を含めて即興性を高め創造的な活動ができるものを作成してきたい。narrative intervention programme(NIP) は、話し言葉の産出や理解、音声の使用や処理過程、社会的文脈での言語の理解や使用のいずれかに困難を持つ中等学校の生徒に対して、授業時間を用いて教員が中心になり支援をしていくものである。小グループの活動を通して自分の思いや出来事、創作した物語を人に伝えることなどを介入していくもので、人の話を聞くことや自分の話したいことを人に伝えることの能力を高めていくねらいを持っている。このNIPを、日本の発達障害児者への支援に援用することを検討していきたいと考えている。現在の発達障害児者への支援では、コミュニケーションへの介入が重要な支援のひとつであるが、年齢が上がるにつれてその支援が手薄になるという現状があるからである。そこて、NIPを参考に発達障害のある中学校の生徒を対象者にした教材を作成・提供していくことに重点を置きたい。 また、家族を支援していくシステムを提案していくにあたり、Bag Booksに加えて、スコットランドにあるPAMISという重度重複障害のある児者とその家族を支援する組織を分析していく予定である。大学との強いリンクを持つ団体であり、様々な活動の一つとして家族にMSSTを提供しているが、その団体の分析を行い、日本で可能なシステムを検討し設立を模索していきたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
図書(特に洋書)購入の依頼から購入までに時間がかかったため、年度内の使用ができなかったためである。 すでに図書購入の手続きは済んでいる。
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