2012 Fiscal Year Research-status Report
漢字書字困難児の書字運動の特異性に関する基礎的研究
Project/Area Number |
24531254
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Saga University |
Principal Investigator |
園田 貴章 佐賀大学, 文化教育学部, 教授 (40171392)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岡崎 泰久 佐賀大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (90253583)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 教育学 / 特別支援教育 / 学習障害 / 漢字書字障害 |
Research Abstract |
本研究は書字運動に焦点をあて、漢字書字困難児の書字の特異性を明確にすることが目的である。その特異性を客観的に確かめるため、2009年度より共同開発してきた、漢字学習支援システムを適用した。液晶ペンタブレット上に手書き入力された漢字をその一画毎に運筆速度と筆圧から特徴を認識し、点画の正否を児童にフィードバックする機能をもっている。本年度は主に漢字書字学習方法を自分で選べるようにするなどのシステム改良を行った。そして、漢字書字困難児に試験的に比較的長期間に亘って適用した。小学校に機材一式を置かせていただき、いつでも、どの漢字でも自由に学習できるようにした。A児(小6男子、知的遅れはない)は、学習対象としてシステムに用意した15の漢字(山、右、月、本、青、赤、男、町、車、左、雨、草、耳、糸、空)を一文字あたり平均約9回、全部で133回書いていた。一日当たりで最大48回、最小6回であった。書字の正確性が向上すると同時に、書字速度も短縮していた。このように、本システムはA児に適していが、学習方法としては、手本の漢字の全体が提示される方法(同時処理的な手本の提示)を好み、一画ずつ手本が例示される方法(継次処理的な手本の提示)をA児は全く選んでいなかった。また、システムでの学習の途中で6回、同じ15の漢字について、プリントによる書取テストを実施した。それによると、A児は回数多く書いた漢字であっても、プリント問題に正確に書けるようになるまでには時間を要した。例えば、「山」を2週間の間に、21回と一番回数多く書いたが、プリント問題の初回から3回目までは、一画目が短く、全体として凹の形になっていた。4回目でようやく凸の形となり、正しく書けるようになった。このことから、事例はまだ少ないが、漢字書字困難児は自分に適した学習方法で学んでも、定着までには時間を要するのではないかと思われた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
システムを改良することにより、漢字書字困難児の漢字書字の特異性の一端を知ることができたが、システムの適用例が少ないこと。また、当初の計画では、漢字の読みと書字に関する調査を実施する計画であったが、今年度は実現を見なかったこと。以上の理由により、「やや遅れている」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
20名程度の漢字書字困難児に対してシステムを適用し、漢字書字困難の特異性を明確にする。漢字の読み・書きテスト調査の実施を追求する。平成25年度日本LD学会において発表する。タイトルは、「液晶ペンタブレットを用いた漢字学習支援システムの開発(3) ~学習効果の検討~」である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度は、学会等での成果発表のための旅費と実験データ分析補助謝礼に使用する。
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Research Products
(1 results)