2012 Fiscal Year Research-status Report
聴覚障害教育におけるバイリンガル・アプローチの有効性と指導法に関する研究
Project/Area Number |
24531272
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Beppu University Junior College |
Principal Investigator |
阿部 敬信 別府大学短期大学部, その他部局等, 准教授 (90580613)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 聴覚障害教育 / バイリンガル・アプローチ / 日本手話 / 言語発達 / 認知発達 |
Research Abstract |
本研究の目的は、日本手話と日本語によるバイリンガル・アプローチを用いた特別支援学校(聴覚障害)に在籍する小学部児童の言語発達と認知発達の実態を縦断的に明らかにすることで、バイリンガル・アプローチの有効性と各教科における指導法を検討することにある。 研究初年度における平成24年度は、まず日本手話の言語発達の実態のために、Morgan(2006)を参考にし、絵本「Frog,where are you?」の手話語りデータの収集を行った。小学部児童32名のデータを収集できた。また、平成23年度に同じ方法で収集した小学部児童23名の手話語りデータのトランスクリプト作成とネイティブチェックを行った。 次に日本語の言語発達については、研究対象校の教頭らと協議を行い、手話語りデータの収集に用いた絵本「frog,where are you?」の場面を選定し、日本語の絵本を作成するという課題を作成して実施した。小学部3年以上の児童21名分の日本語作文データを収集することができた。 さらに、「日本語科」「算数科」「手話科」「社会科」等の各教科等の指導法観察を行うとともに授業のビデオデータを45分×12コマ収集することができた。これについては前年度に収集した授業のビデオデータの一部からトランスクリプトを作成し、同校の教諭のネイティブチェックを受けた後に分析を行い、日本手話の「指さし」を用いた日本手話-日本語の指導のモデルを考案するとともに、ろう者教師による「指文字」の使用の実態や小学部児童の「レファレンシャル・シフト」の使用の実態から、日本手話のリテラシーの発達について明らかにすることができた。 最後に認知発達の実態把握のためにDN-CASの下位検査の内、「文の記憶」の日本手話版の作成について同校の教頭らと協議を行い、現時点での課題を明確にした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
日本手話の言語発達については、予定どおり小学部児童のMorgan(2006)を参考にし、絵本「Frog,where are you?」の手話語りデータの収集を行うことができたともに、前年度までの手話語りデータのトランスクリプト作成を完了することができた。 日本語の言語発達については、中島・櫻井(2011)にあるDRA-J(Developmental Reading Assessment-Japanese)を聴覚障害児に適用できるように検討するなどを行ったが、研究対象校との協議の結果、絵本「Frog,where are you?」の日本語の絵本を作成する課題が研究対象児童の実態に合っているだろうとの結論を経て、小学部3年以上の21名の日本語作文データを得ることができた。これは日本手話・日本語バイリンガル児童の横断的な日本語作文データとしては本邦初となると思われ、これに関しては計画以上に進展しているといえる。 各教科の指導法については、予定どおり各教科の授業ビデオデータを継続的に収集できた。また、前年度までに収集した授業ビデオデータにより日本手話の「指さし」を用いた日本手話-日本語の指導のモデルを考案するとともに、ろう者教師による「指文字」の使用の実態や小学部児童の「レファレンシャル・シフト」の使用の実態から、日本手話のリテラシーの発達について明らかにすることができた。これに関しては計画以上に進展しているといえる。 認知発達については、DN-CASを実施する予定であったが、前回の実施(平成22年度)より間がない実施となると検査慣れする怖れがあるとの指摘があり、平成25年度の実施としたことから、未実施下位検査である「文の記憶」の日本手話版について協議するに終わっている。計画よりやや遅れているといえる。 以上を総合的に評価し、「おおむね順調に進展している」とした。
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Strategy for Future Research Activity |
日本手話の言語発達については、平成24年度に収集した絵本「Frog,where are you?」の手話語りデータ32名分のトランスクリプト作成とネイティブチェックを受けることで、平成22年度から3年間にわたる分析データの準備を完了する予定である。 日本語の言語発達については、本邦初と考えられる日本手話・日本語バイリンガル児童の横断的な日本語作文データ21名分の収集ができたので、音声言語バイリンガル児童や聴覚障害児の日本語評価法について比較検討し、得られた日本語作文データの分析を行う予定である。 各教科の日本手話・日本語バイリンガルにおける指導法については、収集した授業ビデオデータのトランスクリプトの作成とネイティブチェックを受けて、構築したモデルの検証や新たな指導法について抽出を行いたい。 認知発達については、小学部児童に対して現時点で実施可能と判断している下位検査であるDN-CASの「数の対探し」「文字の変換」「系列つなぎ」「図形の推理」「図形の記憶」「表出の制御」「数字探し」「形の名前」「単語の記憶」を実施するとともに、引き続き未実施下位検査である「文の記憶」の日本手話版の作成について明確にした課題を研究対象校の協力を得て解決したいと考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究対象校は我が国で唯一の日本手話・日本語バイリンガルアプローチを用いている特別支援学校(聴覚障害)であって、東京都にあることから、旅費として往復に航空機を用いている。早期予約による割引などを用いて効率的な予算執行に努めたことから4769円の次年度使用額が生じたと考えている。 まず、旅費としては、認知発達の実態把握のためのDN-CASの実施や日本手話の言語発達を明らかにするためのトランスクリプトの作成のためのネイティブチェック、引き続きの授業ビデオデータの収集などの調査研究及び研究成果発表のために、研究者の在籍する研究機関がある大分県と研究対象としている特別支援学校(聴覚障害)のある東京都との往復旅費及び滞在費や学会開催地との往復旅費や滞在費に使用する予定である。 次に、物品費についてである。現在日本手話による手話語りデータや各教科等の授業のビデオデータは、すべてDVD及びDVテープに保存しているが、平成24年度には物品費でHDビデオカメラ及びHD液晶テレビをそれぞれ1台購入したので、平成25年度からはブルーレイディスクに記録したいと考えている。そのために、ブルーレイディスクレコーダー及びブルーレイディスクの購入に使用する予定である。
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Research Products
(4 results)