2013 Fiscal Year Research-status Report
混合モチーフおよび代数K理論のレギュレーターの研究
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24540001
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
朝倉 政典 北海道大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (60322286)
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Keywords | レギュレーター / 代数的K理論 / ゼータ関数 / モチーフ |
Research Abstract |
当該年度においては、代数体上定義された代数曲面のレギュレーターの研究を行い、一定の成果を修めた。特に、代数曲面の中でも、とりわけ曲線の退化ファイブレーションをもつものについて深く研究した。 曲線の退化族は、代数幾何学においてしばしば現れる研究対象であり、汎用性の高い曲面である。そのような曲面の代数的K群(1次のK群)からのベイリンソンのレギュレーター写像を具体的に計算するための方法を確立した。より詳しく説明すると以下のようになる。1次のK群のレギュレーター写像を計算するには、これまで滑らかな(1,1)型微分形式を用いて行うのが一般的であった。しかし、滑らかな(1,1)型微分形式は具体的な記述が困難であったため、実際に計算を実行することはしばしば困難を伴った。例えば自明でない具体例を構成するだけでも大変だった。今回、私が新しく与えた方法は、有理微分形式を使って記述するものである。有理微分形式は、一定のプロセスを経れば、具体的に計算可能であるため、非常に計算がしやすくなった。その結果、以前にはなかった新しいレギュレーターの計算を得ることができた。とりわけ、代数体上定義された代数曲面に対して、1次のK群のレギュレーターが計算できるようになった点は特筆すべき点である。これは、レギュレーターとゼータ関数の特殊値の関係を予想したベイリンソン予想の観点からも、ひとつの進歩といえるだろう。 当該年度においては、さらに、楕円ファイブレーションをもつ曲面について、レギュレーターとガウスの超幾何関数との関係についても研究した。これも上記の研究結果、すなわち有理微分形式を用いたテクニックの応用のひとつである。次年度以降は、引き続き、この観点からの研究も推進していきたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
最終的な目標は、レギュレーターとゼータ関数の特殊値に関するベイリンソン予想の解決であるが、それはまだまだ当分は難しいと考えている。 しかしながら一方で、曲線の退化族をもつ曲面について、1次の代数的K群のレギュレーターを計算できるようになった。すなわち、そのような新しい手法を作ることができた。これは、代数体上定義されているような曲面についても、適用可能なテクニックであることを注記しておく。ベイリンソン予想の観点から、これは着実な研究の進歩といえる。
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Strategy for Future Research Activity |
当該年度に私が与えたレギュレーターの計算方法を使って、どこまでベイリンソン予想に迫れるかが重要な道標といえる。そのために、数値実験を含めた、さまざまなアプローチを試みる予定である。とりわけ、p進化を行うことは、興味深い研究テーマであり、積極的に推進していきたい。さらに、1次のK群以外にも、高次の代数的K群でレギュレーターを研究することも重要なテーマのひとつであり、同時に追究していく予定である。 最近の研究により、楕円ファイブレーションをもつ曲面については、レギュレーターとガウスの超幾何関数との関係が解ってきた。これは、レギュレーターの研究の新しい側面を捉えている可能性があり、興味深い。この方向からも、引き続き、精力的に研究を推進していくつもりである。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
長期出張があったが、それ以外を節約したため。 研究発表の旅費に充てる予定である。
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Research Products
(5 results)