2013 Fiscal Year Research-status Report
ゼータ関数の解析的挙動の研究と,その数論的誤差項への応用
Project/Area Number |
24540015
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
谷川 好男 名古屋大学, 多元数理科学研究科, 准教授 (50109261)
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Keywords | 約数問題 / 非対称多次元約数問題 / 2乗平均 / ヴォロノイ公式 / チャウラ-ワールムの公式 / exponent pair / ベルヌーイ多項式 |
Research Abstract |
前年度に私は海外の研究協力者との共同研究で, 拡張されたセルバーグクラスに属するディリクレ級数に対する,数論的誤差項のトング型の公式を導いた.平成25年度はその応用として,非対称多次元約数問題の誤差項の2乗平均を研究した. 非対称約数問題では, 対応するディリクレ級数の関数等式が同じガンマ因子を持たず,かつラマヌジャン予想を満たさないなど困難な点が多かった.前年度導いた公式はそういう場合にも使えるものである.その結果,問題のディリクレ級数に対するある種の条件のもとで,2乗平均の漸近式を導くことができた.これは1987年にイヴィッチが提出した予想の部分的な解決となっている.特に2次元の非対称約数問題の場合には完全な解決を与えているし,また3次元の場合にも c<a+b を満たす約数関数 d(a,b,c;n) の場合には漸近式を得ることができた.この条件下での漸近式は初めて得られたものである. リーマンゼータ関数の微分に関する研究は最近盛んにおこなわれている.k階微分に対する係数の数論的誤差項については,以前に南出氏が truncated Voronoi 公式を導き,その応用として上からの評価を得ていた. 私は連携研究者の南出真氏, 古屋淳氏とともに,一般化した形でこの問題を考察をし,誤差項に関して,ヴォロノイ型ではなく,チャウラ-ワールム型の表示を導き,かつ exponent pair の理論を適用することで,上からの評価を得た.実際この評価によって,我々は以前に南出氏によって得られていた評価を改良することができた. また古屋淳氏とは,円問題において,シフトされた点での離散平均を考察し, これがベルヌーイ多項式を係数とする連続平均の一次結合で表せることを示した.これによって,2次のベルヌーイ多項式の根を用いると連続平均をよりよく近似できる理由を明らかにすることができた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度は3次元の非対称約数問題をやるのが研究の一つの柱であった.実際前年度に得たトングタイプの公式がゼータ関数の平均値に関するある条件下で有効に働き,その時に漸近式を得ることができた.これは大きな進展であった.またリーマンゼータ関数の微分の係数に対応する数論的誤差項についても, ヴォロノイ公式ではなく, チャウラ-ワールムの表示を導き,それに exponent pair の理論を応用することで, 誤差項の上からの評価を改良できたものその理由の一つである.
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Strategy for Future Research Activity |
我々が前年度に得た誤差項のトング型表示は, まだいろいろな問題に応用が効きそうである.その可能性をさらに追及することは大きな価値があることだと思われる.従来の文献をよく調べ,応用の可能性を探っていく. さらに3次元の非対称約数問題では,付加された条件が満たされない場合が残されている.この時は主要項の係数にあたる和が発散していると思われ,その扱いが次の課題である.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度使用額として30597円が生じたが,これは次年度にも,国内や海外で行う研究打ち合わせのための研究旅費として有効に使うためである. 数論的誤差項のトング型の表示式のさらなる応用を探るため,平成26年度も, 北京石油化工学院や中国鉱業大学にCao氏, Zhai氏を訪れ, 研究を進めていく計画である.
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Research Products
(8 results)