2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24540031
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
広中 由美子 早稲田大学, 教育・総合科学学術院, 教授 (10153652)
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Keywords | 数論 / p進球関数 / p進等質空間 / 概均質ベクトル空間 / マクドナルド多項式 |
Research Abstract |
2013年度は主に,$p$ 進体上の不分岐ユニタリ・エルミート行列の空間$X$について研究した,但し 剰余体標数は奇数とする.逆対角線上に$1$ が $2n+1$ 個ならぶ行列を固定するユニタリ群 $G$ をとり,これを $k$ 上定義されたユニタリ群の$k$-有理点集合とみなしておく.$G$ 内のエルミート行列で,代数的閉体上で単位行列を含む軌道の有理点集合を $X$とする.$K$ を $G$ の整点からなる極大コンパクト部分群とする.$G$ が作用する空間 $X$ をヘッケ環 $H(G,K)$ の作用を通して解析したい.$X$上の球関数とは,$X$ から複素数体へのヘッケ環同時固有関数を意味し,これを具体的に求めることは基本的かつ重要な問題である. まず,この空間$X$ の $K$-軌道分解(カルタン分解)を与え,$X$上の典型的な球関数 $\omega(x;s)$ を定義し,その関数等式や極・零点の位置を調べた,ここで$x \in X$ で,行列のサイズ $2n+1$ に対し,$s \in \C^n$ ($n$ 次の複素変数)である.群 $G$ は$BC_n$ 型であるが,$\omega(x;s)$ の明示式は,$C_n$型のルート系に付随するマクドナルド多項式の特殊化を主要項として持つ.これを核関数に用いて $X$ 上の球フーリエ変換を定し,$X$ 上のシュバルツ関数の空間 $S(K\backslash X)$ を解析した.球フーリエ変換はヘッケ環 $H(G,K)$ の作用と可換であり,$S(K\backslash X)$ は,階数 $2^n$ の自由ヘッケ環加群であることが分かる.また,これから,$X$上のすべての球関数のなす空間が $n$次元であることが分かり,先の典型的な球関数を用いて,全体の基底を構成した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今回の空間は,代数的閉体上では $U(2n+1)/U(n+1)\times U(n)$ と同型になる.昨年まで研究していた空間は 代数的閉体上で $U(2n)/U(n)\times U(n)$ と同型である.両者の類似しているところ,類似していないところを明らかにしつつ,奇数次元の空間について集中的に考察した.その結果,ユニタリ・エルミート行列の空間の球関数に基づいた調和解析的理論が基本的に完結したことの意義は大きい.しかし $p \ne 2$ と限定せざるを得なかったのは残念ではある.dyadic であると,カルタン分解が対角型でない代表系をもつことは分かっている.それが球関数論にどのように反映されるかは今後の課題である.
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Strategy for Future Research Activity |
偶数次元と奇数次元では,代数群としての型が異なり,従って群 $U(m)$ 上の球関数は,別種のマクドナルド多項式の特殊化で表示されている.しかし,ユニタリ・エルミート行列の空間で考えると,典型的球関数は,同種のマクドナルド多項式の別の特殊化で表示されることが分かり,定数部分に現れる量の意味も目安がついた.これらの組み合わせ論的量を従来個々に研究してきた等質空間にどのように表れているかを再検討すべきであろう. 今年度の達成度の項目でも触れたが,ユニタリ・エルミート行列の空間の研究によって,マクドナルド多項式やその特殊化,また$q$解析に現れる量などが,等質空間の球関数に登場することが見えてきた.以前考察していたエルミート形式や交代形式の場合にも結果を見直して見通しよくしておきたい.また,他の型の群についての明示的研究を目標としたい. 2013年度に引き続き,立教大学の小森靖氏を連携研究者として迎えて,研究を進めたる予定である.概均質ベクトル空間の理論も球関数には密接なつながりがある.立教大学の佐藤文広氏を連携研究者に迎える.今年は,特にJSPS-CNRS二国間セミナーとしての国際研究集会を9月に主催する.研究発表と共に,概均質ベクトル空間論やその表現論の最前線をさぐって,この等質空間上の球関数の理論に反映させたい. 研究集会「数論女性の集まり」も引き続き主宰し,自分自身の研究発表をして批評を仰ぐとともに,関連する研究者の講演や討論を踏まえて,この研究を進めて行く予定である.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
講義などのために出張日程を減らしたため,若干の繰越金が発生した. 2014年度は海外出張で経費を使うため,国内旅費が少なくなるので,合わせて使用する予定である.
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Research Products
(10 results)