2013 Fiscal Year Research-status Report
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24540037
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Research Institution | University of Fukui |
Principal Investigator |
小野田 信春 福井大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (40169347)
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Keywords | 国際研究者交流 / インド / アフィン代数幾何学 / 可換環論 |
Research Abstract |
研究課題に関連して、2次元完備局所環 R 上の環 A が R 上有限生成となるための条件について研究し、次の定理を証明することができた。 定理 R は剰余体 k の代数的閉包 k'が k 上有限であるような2次元完備局所環で、A は R 上超越次元が1のクルル環とする。R の非可逆元πであって、A[1/π]が R 上有限生成かつπA の任意の極小素イデアル P に対し、P の R への制限 p がすべて高さ1であるようなものが存在すると仮定する。このとき、以下の条件は互いに同値である。(1) A は R 上有限生成である。(2) A はネーター環で、πA の任意の極小素イデアル P に対し、A/P の R/p 上の超越次元は正である。(3)πA の任意の極小素イデアル P に対し、A/P はネーター環で A/P の R/p 上の超越次元は正である。 この定理は、R が完備正則局所環の場合に得られていた結果の拡張である。次いで、可換環 R 上べき等元で生成される環に関する前年度の研究を拡充し、(i)被約化 A_red が R 上べき等元で生成される環Aと(ii) R 上の捻れ可換群 G による群環 RG の剰余環として得られる環の関係について調べた。(i)を満たす環のクラスを Cid'(R) で表し、(ii)を満たす環のクラスを Cgr'(R) で表すとき、主目的は、Cid'(R)=Cgr'(R) が成立するための条件を求めることである。結果として、次の定理を得た。 定理 次の条件は互いに同値である。(1) Cid'(R)=Cgr'(R) が成り立つ。(2) R の標数は正であり、Cgr'(R)<Cid'(R) が成り立つ。(3) R の標数は正であり、任意の正整数 n に対し、n 位の円分多項式φ_n(X) は R の被約化 R_red に根をもつ。 なお、研究計画に従って、研究の一部は海外共同研究者のもとに出張して行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
目的としたネーター正規環 R 上の A1-patch の有限生成性に関する研究に関連して、前年度に得られた2次元完備正則局所環 R 上の環の有限性生成に関する結果を、正則性の仮定を除いて2次元完備局所環R上の環の場合に拡張できたことは大きな成果である。さらに、べき等元で生成される環に関しても、前年度の結果を拡張して、被約化がべき等元で生成される環のクラスと、捻れ可換群による群環の剰余環として得られる環のクラスの関係を解明できたことも大きな成果である。以上から総合的にみて、研究はおおむね順調に進展していると判断する。ただし、当初3つ掲げた目的のうち、ネーター正規環R上の A2-fibration の構造の解明と、離散付値環 R 上の An-fibration の構造の解明については、部分的な結果は得たものの、所期の目的を達するには至らなかった。これについては、次年度(最終年度)に完成を目指す。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は最終年度に当たるため、交付申請書で設定した3つの課題の解決を完成させる。つまり、A1-patch が有限生成となるための必要十分条件の決定、ネーター正規環 R 上の A2-fibration の構造の解明、および離散付値環 R 上の An-fibration の構造の解明である。課題1については、2次元完備局所環上の環の有限生成性に関して得られた定理の活用を図り、所期の目的である、Rが複素数体上3変数多項式環の場合について、A1-patch が有限生成となるための必要十分条件を与えることを目指す。課題2については、Rが2次元の場合の研究も未完成なので、まず、その完成を目指す。課題3に関しては、申請書の計画に沿って、次の問題も平行して考察する。 問題 体 K の付値環 (V,P) と K 上の代数関数体 L の付値環 (W,Q) で、W の K への制限が V であるものについて、剰余体 W/Q の k=V/P 上の代数関数体としての構造を明らかにせよ。 この問題は、L が K 上の楕円関数体の場合、およびある種の超楕円関数体の場合は解決しているので、L が K 上一般の超楕円関数体の場合を中心に研究する。 課題2、課題3を考察する際には、多項式環の自己同型群Gの構造を知ることが必要になる。この構造については、まだよく分かっていない上に、研究自体がほとんどなされていない。ただし、R が体の場合には、この方面の研究が近年大きく進展しているので、その研究成果を基に、離散付値環上の多項式環の自己同型群について研究し、その成果を課題3の解決に活用する。さらに、最終年度であることを踏まえ、全体の研究を今後どのように進展させるか、その方向性についても探る。具体的には、局所冪零導分の不変部分環の有限生成性問題への応用等である。最終年度も海外共同研究者との連携を密にして研究を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
海外出張は2回予定していたが、先方の都合により、出張回数を1回に減らしたたことが、次年度使用額の生じた最大の理由である。 最大の使途は旅費である。研究打合せのために海外共同研究者のもとに出張することに加え、次年度はインドの海外共同研究者であるBhatwadekar教授を日本に招聘する。さらに、国内の主要な研究集会である可換環論シンポジウム、アフィン代数幾何学シンポジウム(年2回)、日本数学会(年2回)に出席する。また、情報収集のために富山大学を中心にアフィン代数幾何学の専門家の所属する大学に出向くとともに、当地に招いて専門的知識の提供を受ける。 備品については、デスクトップ型のパソコンおよびその周辺機器を購入する。さらに最新の知識を身につけるために、必要となる代数学関係の図書を20冊程度購入する。
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Research Products
(1 results)