2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24540039
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
斉藤 盛彦 京都大学, 数理解析研究所, 准教授 (10186968)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | ホッジ加群 / コンツェビッチ複体 / 半正定値性定理 / ブリースコルン加群 / 許容法関数 / チャウ・キュネット分解 |
Research Abstract |
昨年サバ氏と行ったコンツェビッチ予想の証明に関連して、かつてコンツェビッチ氏の定義したドラーム複体の部分複体が、実はベイリンソン極大拡張と呼ばれているものと一致するという事実を発見したので、それを論文にまとめた。証明にはステンブリンク氏の理論を用いてV-フィルトレーションを表すという約30年前に見つけたアイデアがホッジ加群と並んで本質的に使われている。 藤野・藤澤の両氏との論文では、双対化層の順像の半正定値性に関する定理の一般化及び精密化を行った。ここでは次元に関する帰納法を使う際に、ホッジ構造の変動の極限における挙動に関するカタニ・カプラン・シュミットの結果が本質的に使われる。また、正規交差多様体への拡張には、ホッジ加群の理論が非常にうまく適用される様に思われる。 ディムカ氏との共同研究においては、孤立特異点を持った斉次超曲面のミルナー代数とステンブリンクのスペクトルとの間のよく知られた関係を非孤立特異点の場合に拡張しようと試みたが、状況は思った以上に複雑な様で、一般にはそう簡単な関係式は得られそうにない。ここではブリースコルン加群の捩れ部分群が本質的な役割を果たし、捩れ部分群が消える孤立特異点の場合とはかなり異なる風景が見られる。 ホッジ理論に関しては、シャルル氏の許容法関数の零点の定義体に関する結果に刺激を受けて、l-進コホモコジーやガロワ群の作用の代わりに部分多様体のスプレッドを用いてその一般化を証明する論文を書いた。ここでは底空間上局所的には位相的に自明な代数多様体の族とその全空間上で定義された許容法関数が与えられた時に、法関数が一つのファイバー上で一定ならば他のどのファイバー上でもそうであるという事実が本質的に使われている。その他に代数サイクルに関しては、チャウ・キュネット分解の射影子の自由度に関する研究なども行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ホッジ加群の基礎理論の簡易化に関しては、今年の夏に英国でホッジ加群に関連した研究集会がある様なので、それに合わせて論文を仕上げる様に予定変更を行い、まず目前のホッジ加群の応用に関する論文を先に終わらせる事にした。そのため計画が予定よりも遅れていると言えば言えない事もないが、これも応用に関する論文が予想以上にあった事も一因にあるので、ある程度はやむを得ない事かもしれない。また、そのせいもあって、ホッジ加群の応用に関する研究についてはかなり順調に進んでいるといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
ホッジ加群の基礎理論の簡易化に関しては、まず正規交差特異点を持つホッジ加群に対するベイリンソンの関手についての理論をかなり整備しなければならない。これは消滅輪体関手で安定な圏の構成のためにはぜひ必要な様に思われ、これさえできれば基礎理論の簡易化はそう難しくはないと考えられている。ただし代数幾何への応用には幾何学的ホッジ加群で十分な事が多く、その場合には更に簡易化を行った理論が求められているようにも思われる。ここでは構造層の順像のみに限って説明を詳しく行う事も、代数幾何の専門家に対してはある程度意味のある事かもしれない。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
様々な研究集会等に参加する事により、ホッジ加群の理論の新たなる応用を見つけるのが第一目標なので、そのための旅費にかなりの予算が使われる事になる。
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