2013 Fiscal Year Research-status Report
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24540040
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Research Institution | Kyoto University of Education |
Principal Investigator |
宮崎 充弘 京都教育大学, 教育学部, 准教授 (90219767)
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Keywords | サグビー基底 / 不変式 / 高次元配列 / テンソル / 行列式イデアル / グレブナー基底 |
Research Abstract |
サグビー基底と不変式の関係について、平成25年度は、特に高次元の直方体状に配列された対象への群作用に関して調べた。その結果、いくつかの群作用に関して、その不変式環のサグビー基底に関する興味ある結果が、徐々に得られてきつつある。 たとえば、高次元の直方体状に配列された、不定元を成分とする多項式環に、その高次元配列に対応して、不定元を写すような特殊線型群の作用を考えたとき、その不変式環が有限のサグビー基底を持つこと、そのサグビー基底は、単項式順序に依存する、例えば次数辞書式順序の場合と、次数逆辞書式順序の場合で異なるなど、興味深い性質が徐々にわかってきつつある。 さらに、高次元配列データとの関連で、行列式イデアル(小行列式で生成されたイデアル、デターミナンタルイデアル)が、高次元配列データの階数(ランク)という、統計学方面で重要な概念と思いもかけない関係があることを発見した。その発見を介して、Macaulay, Eagon-Northcottが発見した行列式イデアルの高さの上限や、Eagonが発見した行列式イデアルのパーフェクト性の特徴づけが、応用数学方面で現れる概念や、双線型写像の非退化性と自然に対応しているものであることがわかり、行列式イデアルの奥の深さを、改めて実感させられる結果であると考えられる。さらに、この発見は、行列式イデアルと実代数幾何学、実根基イデアルの理論との深い部分でのつながりを示唆するものであり、重要な研究分野を切り開いたのではないかと、自負している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
一般に、サグビー基底は有限にはならないが、実用上重要ないくつかの不変式環のサグビー基底を、具体的に求めることにより、その場合、有限サグビー基底が存在することがわかった。とくに、高次元の直方体状に配列された不定元を成分とする多項式環に、その高次元配列に対応して、不定元を写すような特殊線型群の作用を考えたとき、その不変式環が有限のサグビー基底を持つこと、そのサグビー基底は、単項式順序に依存すること、例えば次数辞書式順序の場合と、次数逆辞書式順序の場合で異なるなど、興味深い結果が得られてきている。 これにより、高次元配列データと不変式論という、21世紀の数学分野と、19世紀から続く伝統ある数学の分野に重要な関係があることがわかり、残りの研究期間で、それを明らかにしていくことが期待できる。 さらに、行列式イデアル(与えられた行列の、定められたサイズの小行列式で生成されたイデアル、デターミナンタルイデアル)と高次元配列や双線型写像の非退化性との新たな関係も発見し、それにより、異なる研究分野との関連も視野に入る、数学の奥深い部分の入り口に立ったと思える。 以上のような理由により、研究はおおむね順調に進展していると言えると思う。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究成果をふまえ、今後は、高次元の直方体状に配列された対象に対する群作用、また、その不変式環を、特にサグビー基底の観点から調べることを重点的に行い、その不変式環の性質を明らかにすることを目指す。 また、高次元配列データと、行列式イデアルの関係にも着目し、その関係の不変式論の視点からの分析等を行い、その底にひそむ、深い理論的つながりを探り出すことを目指す。不定元を成分とする行列の、行列式イデアルは、代数幾何学的に重要な射に対応する多項式環の間の環準同型の核としてもとらえられる。そのような観点から、不定元が高次元の直方体状にならんだ、不定元成分の高次元配列に対しても、同様な環準同型を考え、それの核であるイデアルと、その像、および、それらに対する群作用などをしらべ、研究をまとめる予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究計画時、研究開始当初に想定していたよりも、本研究の分野と、様々な分野とのつながりが明らかになってきたため、当初の想定よりも、広い分野の探索をすることが有益であるとと判断し、そのため、広い分野の基礎的事項を調べていたため、当初の想定ほどの費用がかからなかった。 本研究と、様々な分野との関連も含めて論文にまとめ、発表する。その際、今までの学問分野だけではとらえられない、新しい分野も視野に入ってくるため、古くからの学術誌では、その雑誌の対象外であるとして、なかなか受け入れられないこともあると考えられるので、掲載料のかさむ、新興の学術誌も含めて投稿先を考え、論文掲載費用等に充当する予定である。
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