2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24540046
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Hiroshima City University |
Principal Investigator |
齋藤 夏雄 広島市立大学, 情報科学研究科, 講師 (70382372)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 正標数 / 代数多様体 / 特異点 / 変形理論 / del Pezzo曲面 |
Research Abstract |
本年度は,昨年度に引き続き正標数における有理二重点の変形空間について研究を行った.各特異点の変形空間において,等特異変形空間 (equisingular deformation space) および,Tjurina数から定まる階層 (strata) によって定義されるタウ軌跡一定空間の次元と構造を,局所的な計算によって調べた.これらの空間が実際に非自明な構造を有するのは低標数のときに限られるが,標数が2より大きいときについてはすべての場合についてその構造を完全に特定し,論文として出版した.計算がきわめて煩雑な標数2のケースにも取り組んでいるが,一部の特異点について進展が見られたものの,まだ全容を明らかにするには至っていない.これは今後の研究課題である. 一方,反標準因子が超特異であるようなFano多様体の特徴付けとして,まずdel Pezzo曲面の場合について研究を開始した.すでに次数3のdel Pezzo曲面の場合について知られている先行研究を元に,反標準因子が超特異楕円曲線であるような次数2のdel Pezzo曲面について調べた.一般に次数2のdel Pezzo曲面は射影平面を7点でブローアップすることで得られるが,これまでの研究で反標準因子が超特異であるものを特徴付けると思われる射影平面上の7点の配置を見つけることができた.またこの7点でブローアップして得たdel Pezzo曲面は,フェルマー型4次曲線で分岐した射影平面の二重被覆として特徴付けられる可能性が高いことも明らかになった.正確な証明をつけることは今後の研究課題である. 研究にあたっては,国内外の研究者と議論および情報収集を行うことを目的として,群馬県の玉原高原で行われたセミナーや城崎でのシンポジウム,山形大学・高知大学・東京大学で行われた研究集会などにも参加し,参加者と活発な議論を行った.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
有理二重点の変形空間については,標数3以上の場合についてはすべてのケースを解決し,論文を出版することができた.一方で標数2の場合は計算が容易でなく,当初見込んでいた結果を得るにはもう少し時間が必要である.準楕円曲面の多重標準因子線形系に関する研究については,この1年はあまり進展させることはできなかった.一方,反標準因子が一斉に超特異であるようなFano多様体の研究を行い,その端緒として次数2のdel Pezzo曲面に関してある種の特徴付けを与えると思われる条件を見つけることができた。現在はまだ議論が不完全であり,より精密な証明を得る必要があるが,具体的な状況を扱っており難解な議論が必要になることは少ないと考えられるうえ,次数1の場合などにも考察を応用できる可能性もあり,研究が進展していくことが期待できる. 以上のように,研究内容によって進展状況に差は出ているものの,全体としてはおおむね順調に進展していると考えられる.
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き,有理二重点の変形空間における等特異変形空間とタウ軌跡一定空間の構造の決定に尽力する.残されているのは標数2の場合であるが,A型の特異点についてはすでに解決しているので,D型,E型について指数の少ないものから計算を試みたい.さらに,単純楕円型特異点など有理二重点以外の特異点についても,変形空間など局所的な構造を解明する研究と,一般ファイバーに特異点があるような多様体を調べる大域的な研究を並行して行う.これと関連して,準楕円曲面の多重標準因子線形系が与える写像の研究についても,ベースとなる曲線のフロベニウス射による引き戻しで得られる有理曲面を再度詳細に調べることにより,ある種の準楕円曲面の非存在を証明することを目指す. また反標準因子が超特異であるdel Pezzo曲面については,次数2の場合についてこれまでに得られた幾何的な条件に証明を与える一方,F分裂などフロベニウス写像を用いた特徴付けもできないか考える.また次数1の場合についても,射影平面上においてブローアップする点の配置によって特徴付けが行えないかを調べる.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
各地で行われる研究集会やシンポジウム,連続講演などに積極的に参加し,国内外の研究者と議論を交わして研究対象への理解を深めるため,旅費として研究費を使用する.また,これまでに知られている先行研究や最新の研究成果を知るため書籍を数多く買い求めるほか,プログラムによる計算や論文執筆などに活用するためにコンピュータを購入する.
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Research Products
(1 results)