2012 Fiscal Year Research-status Report
強いレフシェッツ性を有するゼロ次元ゴレンスタイン環
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24540050
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
渡邊 純三 東海大学, 理学部, 教授 (40022727)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | アルティン環 / ゴレンスタイン環 / レフシェッツ条件 / ヒルベルト関数 / シュペルナ性 / 高次ヘシアン / コホモロジー環 / Hard Lefschetz Theorem |
Research Abstract |
Gordanと Neotherによって1876年に書かれた論文、「ヘッセ行列式が恒等的に消える代数式について」(Mathematische Annalen bd 10)を解読し、その証明を理解することができた。この論文は、完全交叉環の強いレフシェッツ条件と密接な関連があり、この論文の理解なくしては、レフシェッツ性の研究は進められない。 渡辺は、2012年9月、ハワイ・ホノルルのHawaii Tokai International College において国際研究集会を開催し、GordanとNoetherの結果の証明と 彼らのやり残した課題について、この研究会で紹介し、U. Nagel氏、J. Migliore氏 達の推進する4変数完全交叉環の弱いレフシェッツ条件の研究に大きく貢献できた。この研究会でGordan-Notherの論文を紹介したことにより、関連の研究が、相当数存在することが次第に明らかになりつつある。この論文解明の副産物として、連立微分方程式の解が行列式で生成される部分環であることが明らかになった。また、同研究会に招待したゲッティンゲン大学名誉教授の Larry Smith氏により、代数的トポロジーの立場より、いくつかの共同研究のテーマを得ることができた。とりわけ、正標数における弱いレフシェッツ条件に新たらしい意味をみつけることができた。 また、和地輝仁氏との共同研究により、完全交叉の強いレフシェッツ条件を応用し、対称群が作用する微分加群の外積代数を既約分解することに成功した。さらに、村井聡氏との共同研究により、Rees性を有し、しかも、m-full ideal ではない例を大量に構成することに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
極めて順調に進展している.関連分野の研究者との情報交換がすすみ、様々な問題が提出され、新しい問題は山積している。3つ以上の鎖の積の全てのイデアルが作る次数付き半順序集合がシュペルナ性を有することの証明がえられた。(前野俊昭氏 と Larry Smith氏との共同研究)また、ベクトル空間束、即ち、有限体上のベクトル空間の部分空間全体が作る次数付き半順序集合、がシュペルナ性を有することの可換環論的証明が得られた。(前野俊昭氏 と 沼田泰英氏との共同研究。) 対称群が作用する微分加群の外積代数を既約分解することができた。(和地輝仁氏 と渡辺 の共同研究) この結果、(c-i)次斉次部分から、i 次斉次部分へ至る行列の行列式を与える漸化式がもとめらる見通しができる。(これができれば、原-渡辺の行列式のq-analogとなる。) 村井聡氏との共同研究により、Rees 性を持つが、m-fullではないイデアルを大量に構成することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
関連分野(特に、正標数アルティン環、位相空間のコホモロジー環、超平面の配置、Rosa-Maria Miro-Roig氏の提案するTolguiatti system、Ralf Froeberg氏- Boris Shapira氏の共同研究によるVan der Monde多様体、等)に、レフシェッツ条件がどのように応用されるかを調べたい。2年以内に、Anthony Iarrobino氏、Juan Migliore氏、Uwe Nagel 氏に声をかけて、AIMにおける研究集会開催を目指す。また、村井聡氏の発見した、Rees 性をもち尚かつ、m-full ではない例の一般化、および、組み合わせ論的手法の応用を追求したい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
我々の研究の究極の目標は、(1)完全交叉環がシュペルナ性を有することと(2)標数ゼロにおいては、強いレフシェッツ条件を有することを証明することである。 しかし、現在までに得られた手法では、この問題を完全な形で証明することはできない様だ。問題の解決の為には長期戦略が必要である。したがって、(1)関連性のある周辺領域の研究者との情報交換、(2)若手研究者の育成などを考えている。情報を交換するための研究打ち合わせ、成果発表の為の研究集会を開催することなどに将来の予算を使いたい。今年度予算を使い切らなかった理由は、東海大ハワイ校における研究会の準備、講義録の校正作業(周辺の問題の解決も含む)などがあり、当初の計画通りの研究ができなかったためである。
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