2013 Fiscal Year Research-status Report
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24540053
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Research Institution | Hosei University |
Principal Investigator |
桂 利行 法政大学, 理工学部, 教授 (40108444)
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Keywords | 国際研究者交流(オランダ) / K3曲面 / 超特異 / クンマー曲面 / 有理曲線 / リーチ格子 / ピカール格子 / カラビ・ヤウ多様体 |
Research Abstract |
本年度の研究では昨年度に引き続き、2次元のカラビ・ヤウ多様体であるK3曲面を対象とし、標数5の超特殊K3曲面S上の非特異有理曲線のなすconfigurationについて、連携研究者金銅誠之、島田伊知朗と共同研究を行った。昨年は、16本の有理曲線が3組あり、その2組ごとにKummer configuration (16_6-configuration)をなすことを示したが、本年度は、さらに進展し、16本の有理曲線が6組、合計96本の有理曲線が構成でき、その2組をとると、16_6-configuration, 16_12-configuration, 16_4-configurationのいずれかになり、それらがきれいな対称性を持って配置していることが示せた。K3曲面上の有理曲線のなすconfigurationの話に限定しても、K3曲面上の16_12-configurationの存在は、これまで知られていない新しい現象だと思われる。このような有理曲線の存在は、K3 曲面のピカール格子を通してLeech latticeと関係しており、Weyl群の作用の基本領域として得られるchamberのwallsをつくるLeech rootsとしてもとらえることができる。これらの結果は、共著論文「Rational curves on the supersingular K3 surface with Artin invariant 1 in characteristic 5」としてまとめて投稿し、現在査読中である。また、Fermat曲面と関係した超曲面から作られるLefschetz pencilsの構造を調べ、その退化ファイバーの構造とsectionsの群構造を決定し、単著として投稿し掲載が決定した(雑誌論文欄参照)。この超曲面はp=3の場合はK3曲面になり、準楕円曲面の構造を持つ。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
標数5の超特殊K3曲面上の有理曲線のconfigurationの構造が、想像以上に豊かな構造を持っていることが判明し、連携研究者との共同研究が、本年度一気に進展し、論文がまとまり、アメリカの雑誌に投稿できた(査読中)。 さらに、超曲面のLefschetz pencilsの構造が決まり、単著論文を作成し、その論文が日本数学会の編集する論文集にacceptされた。また、アーベル曲面のChern class mappingの単著論文もまとまって、雑誌に投稿中である。口頭発表も国内の研究集会で招待講演3度、公開セミナーで招待講演1度(代数幾何セミナー, 東京大学大学院数理科学研究科, 2013年11月8日)、海外の国際会議(イタリア)で招待講演1度、海外の大学の公開セミナーで招待講演2度(Research seminar, Leibnitz University Hannover, Germany, 2014年2月25日, 及びAlgebra en Meetkunde, University of Amsterdam, The Netherlands, 2014年3月3日)、合計7度の研究発表を行った。このような状況から「当初の計画以上に進展している」とした。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度と同様、連携研究者金銅誠之、島田伊知朗両氏と2次元カラビ・ヤウ多様体であるK3曲面上の有理曲線の構造について、さらに研究を進める。具体的には、標数5の場合には、超特殊K3曲面上に格子的には見つかっているが幾何学的には由来が判明していない168本の有理曲線群が存在し、この構造を調べる必要がある。また、252本の曲線群は有理曲面の2枚の被覆としてとらえた場合にはその由来がわかっているが、アーベル曲面との関係は不明であり、その由来を解明したい。標数5の場合は、標数2、3の場合とは違い、超特殊K3曲面のピカール格子を符号数(1, 25)の中に埋め込んだ場合、その埋め込み方に多様性があり、我々はそのうちの3つの場合(つまり、上記96本の場合、168本の場合、252本の場合)しかとらえられていないので、その他数多く存在するinduced chamberのwallsに対応する有理曲線を統一的に理解することも問題としたい。アーベル曲面のChern class mappingの論文については、2013年度末に論文にまとめて投稿したが、この論文と関連するアーベル曲面やK3曲面上の代数的サイクルの構造の問題については、海外共同研究者であるG. van der Geerとの共同研究によってさらに解明したい。Liedtkeは最近、超特異K3曲面が単有理曲面であることを証明したが、それに関連して、超特異K3曲面がさらに強くZariski曲面であろうと予想される。これについては、標数pが12を法として1でない場合は、申請者代表者がかつて証明した結果があり、この結果を一般化して、条件なしに証明することを目指したい。この2年ほどで、正標数のK3曲面については、Artin予想の解決、Artin-Shioda予想の解決、Tate予想の解決、など大きな進展があり、これらの結果も我々の研究に活用する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
2012年度に身内にアクシデントがあり、国際会議を途中キャンセルしたり共同研究のプランを取りやめたりした関係で、2013年度に研究計画の大きな繰り越しが生じた。2013年度は研究が予定以上に順調に進んだため、本来の研究計画にあった予定額よりも多く使用し、すでに研究を挽回している。2012年度の繰り越しが大きかったため来年度にも影響が残ったが、2014年度は、出席することが決まっている大きな国際会議がいくつかあり、この残額を来年度に使用する方が有効だと判断した。 5月には、オランダでのK3曲面の国際会議に出席予定であり、さらに、8月には韓国で国際数学者会(ICM)やサテライト会議があり、代数幾何学や数論の情報を得るため、これらの国際会議にも出席予定である。また、国内の研究集会についても、5月に熊本大学で行われる望月新一氏の理論に関する研究集会や京都大学数理解析研究所での研究会などにも出席予定である。2015年1月28日ー31日には、連携研究者金銅誠之氏等数名と東京大学で国際会議「Arithmetic and Algebraic Geometry 2015」を計画しており、代数幾何学の情報を得るため、そのための費用としても一部使用する。
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