2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24540064
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
田崎 博之 筑波大学, 数理物質系, 准教授 (30179684)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 対称空間 / 対蹠集合 / 実形の交叉 / 複素旗多様体 / 有向実Grassmann多様体 |
Research Abstract |
1.コンパクト型Hermite対称空間の二つの実形の交叉に関する田中真紀子氏との共同研究、2.複素旗多様体の対蹠集合と実旗多様体の交叉に関する入江博氏、酒井高司氏との共同研究、3.有向実Grassmann多様体の対蹠集合の研究を進展させた。 1.については、コンパクト型Hermite対称空間の実形の分類と二つの実形の組み合わせの分類を行い、既約の場合にはすでに行ったように、既約ではない場合にも実形の交叉を詳細に調べた。既約の場合と同様、既約ではない場合にも極地による帰納法が有効に働いた。他方既約の場合とは異なり、既約ではない場合には正則等長変換全体の連結成分に関する先行研究の結果が鍵になった。以上の成果から二つの実形の交点数は完全に決定できた。これらの結果は論文にまとめ現在投稿中である。 2.については、Riemann対称空間について定義されている対蹠集合の概念を複素旗多様体の場合に拡張し、その基本的性質を調べた。さらに、ユニタリ群と直交群の対称対の性質を利用して、複素部分空間の系列から成る複素旗多様体内の実部分空間の系列から成る二つの実旗多様体の交叉を精密に調べることができた。離散的な交叉は一般化された対蹠集合になり、その交点数も決定できた。これらの結果は論文にまとめ投稿し、受理された。 3.については、有向実Grassmann多様体の対蹠集合の分類を有限集合内の対蹠的と名付けたある性質を持つ部分集合の族の分類に帰着させた。この対蹠的な部分集合の族を決定するためのアルゴリズムを発案し、このアルゴリズムを利用して階数が4以下の場合に対蹠的な部分集合の族を分類した。この分類結果に対応する外積代数内の元の集合の和をとると、いくつかのコンパクト単純Lie群等の作用に関する不変交代形式になることがわかった。これらの結果は論文にまとめ現在投稿中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究目的を書いた時点では、コンパクト型Hermite対称空間が既約である場合とそうでない場合に、二つの実形の交叉に違いがあることには気付いていなかったため、既約である場合とそうでない場合にわけた研究計画にはなっていなかった。実際に研究を進めると既約ではない場合は別に扱う必要があることがはっきりした。そこで研究計画にはなかったが、既約ではないコンパクト型Hermite対称空間の二つの実形の交叉を調べるため、まずこの場合の実形の分類、二つの実形の組み合わせの分類を行った。これらを利用して二つの実形の交叉を詳細に調べた。この研究は今後の対称R空間内の鏡映部分多様体の交叉を調べる際に指針を与えるものと思われる。 複素旗多様体の対蹠集合の研究、二つの実旗多様体の交叉に関する研究は計画に沿った方向に進んでいる。 有向実Grassmann多様体の対蹠集合については、階数が4以下の場合に完全に分類でき、種々のコンパクト単純Lie群の作用の不変交代形式と対蹠集合の分類結果と関係があることがわかり、一定の成果を挙げることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
コンパクト型Hermite対称空間内の二つの実形の交叉の対蹠性とそれから導かれる交叉に関するこれまでの研究成果を指針にして、対称R空間内の二つの鏡映部分多様体の交叉の対蹠性を田中真紀子氏との共同研究で明らかにする。 複素旗多様体の対蹠集合はコンパクト型Hermite対称空間の対蹠集合と同様に扱えることがわかってきたので、これを指針にして複素旗多様体の対蹠集合の性質を詳しく調べ、さらに二つの実旗多様体の交叉の対蹠性を入江博氏、酒井高司氏との共同研究で明らかにする。 階数4以下の有向実Grassmann多様体の対蹠集合はすでに解明できたので、この手法や結果を参考にしてより高階の有向実Grassmann多様体の対蹠集合の解明を目指す。階数3の有向実Grassmann多様体の極大対蹠集合と二元体上の射影平面の射影直線全体との間の対応の一般化を模索し、これをもとにして有限幾何学と有向実Grassmann多様体の極大対蹠集合との関連性からこれらの研究を進めたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究計画を遂行するためには、代表者と連携研究者が直接会って情報交換や討論を行う必要があり、打ち合わせ等の旅費が不可欠である。また、国内外にもこの研究課題に関連した研究を行なっている研究者が多数いるため、国内外で開かれる研究集会に出席し、最近の研究情報を収集するとともに、それまでに得られた研究成果を発表したい。これらの出張のために平成24年度未使用額と平成25年度研究費の旅費を使用する。 代表者は、この研究課題に関する研究情報を蓄積し各連携研究者が閲覧できるWebサイトを筑波大学のサーバに構築している。このWebサーバを通して本研究に関する情報を各連携研究者と共有したい。蓄積する情報は、文献情報や討論の途中経過、セミナーや研究集会の記録、研究発表を行った論文やプレプリント等である。このWebサーバの維持・管理、さらに蓄積した研究情報に有機的つながりを持たせるために、設備備品費・消耗品費等を使用する。
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