2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24540064
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
田崎 博之 筑波大学, 数理物質系, 准教授 (30179684)
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Keywords | 対称空間 / 対蹠集合 / 実形の交叉 / 複素旗多様体 / 有向実Grassmann多様体 / 対称三対 |
Research Abstract |
1.コンパクト型Hermite対称空間の二つの実形の交叉に関する田中真紀子氏、井川治氏との共同研究、2.複素旗多様体の対蹠集合と二つの実形の交叉に関する入江博氏、酒井高司氏との共同研究、3.有向実Grassmann多様体の対蹠集合の組合せ論的な研究を昨年度に続き進展させた。 1.については、投稿中だった論文の一編が出版され、二編が受理され出版が決定した。この研究テーマについては、井川氏の導入した対称三対の概念がきわめて有効であることがわかった。そこで昨年度までは田中氏と進めていた共同研究に井川氏を加えた。対称三対を利用することによって、実形の交叉が離散的になるための必要十分条件、正則等長変換の不動点集合が離散的になるための必要十分条件、これら実形の交叉と不動点集合の関係などが明らかになってきた。複素Grassmann多様体の場合の成果を論文にまとめ、現在投稿中である。一般のコンパクト型Hermite対称空間の場合も研究成果は確定し、現在論文に成果をまとめているところである。 2.については、投稿中だった論文の一編が出版され、一編が受理され出版が決定した。昨年度行った複素部分空間の系列から成る複素旗多様体内の実部分空間の系列から成る二つの実旗多様体の交叉の研究に続き、四元数部分空間の系列から成る二つの実形の交叉についても、昨年同様の結果を得た。この結果は論文にまとめ投稿中である。 3.については、投稿中だった論文の一編が出版された。昨年度行った結果をさらに進めて対蹠的な部分集合の系列を数種類構成した。この結果は論文にまとめ投稿中である。階数が5の場合に対蹠的な部分集合の分類はまだできていないが、大きさの評価はできた。この結果は現在論文にまとめているところである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
昨年度までの実形の交叉に関する田中氏との共同研究では、二つの実形の交叉が離散的であるという仮定のもとで交叉の詳しい性質を研究していた。開かつ稠密な状況で交叉が離散的であることはわかるが、具体的にどのようなときに実形の交叉が離散的になるかをこれまでの研究では明確にしていなかった。井川氏の導入した対称三対の概念を適用すると、交叉が離散的になるための必要十分条件が明らかになった。正則等長変換の不動点集合が離散的になるための必要十分条件も対称三対を適用することで明らかになった。これらの進展から実形の交叉と正則等長変換の不動点集合の関係も明らかになった。 コンパクト型Hermite対称空間の正則等長変換の不動点集合を調べる際に、正則等長変換全体の単位連結成分に含まれるものとそうではないものの不動点集合の性質が異なることが明らかになった。異なる理由はコンパクト連結Lie群の共役性は極大トーラスによって記述できるが、コンパクト非連結Lie群の共役性は極大トーラスとは異なるものによって記述できるためであり、これは当初予想していなかった結果である。
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Strategy for Future Research Activity |
コンパクト型Hermite対称空間内の二つの実形の交叉と正則等長変換の不動点集合に関する研究は当初の目的を達成できたので、今後はより一般的な対称R空間内の二つの鏡映部分多様体の交叉と等長変換の不動点集合に関する研究と、複素旗多様体内の二つの実形の交叉と正則等長変換の不動点集合に関する研究および複素旗多様体のFloerホモロジーへの応用に進む。 コンパクト非連結Lie群の共役性定理を確立し、それを利用してコンパクト対称空間の等長変換の不動点集合を調べる。コンパクト型Hermite対称空間の場合にはすでにてきている。 有向実Grassmann多様体の対蹠集合の研究は、スピノル群に有向実Grassmann多様体を極地として埋め込むことにより、スピノル群の対蹠集合の研究と深く関係していることがわかってきた。この関係を利用して両者の研究を進める。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
クレジットカード払いの研究資料の支払いが次年度に繰り越されたため。 研究計画を遂行するためには、代表者と連携研究者が直接会って 情報交換や討論を行う必要があり、打ち合わせ等の旅費が不可欠である。また、国内外にもこの研究課題に関連した研究を行なっている研究者が多数いるため、国内外で開かれる研究集会に出席し、最近の研究情報を収集するとともに、それまでに得られた研究成果を発表したい。これらの出張のために平成25年度未使用額と平成26年度研究費の旅費を使用する。代表者は、この研究課題に関する研究情報を蓄積し各連携研究者が閲覧できるWebサイトを筑波大学のサーバに構築している。このWebサーバを通して本研究に関する情報を各連携研究者と共有したい。蓄積する情報は、文献情報や討論の途中経過、セミナーや研究集会の記録、研究発表を行った論文やプレプリント等である。このWebサーバの維持・管理のために、設備備品費・消耗品費等を使用する。
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