2013 Fiscal Year Research-status Report
リーマン多様体とポアソン核・熱核のフィッシャー情報幾何学
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24540065
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
伊藤 光弘 筑波大学, 名誉教授 (40015912)
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Keywords | ホロ球 / 双曲空間 / ヤコビテンソル / 体積エントロピー / ビューズマン関数 / 理想境界 / 確率測度 / 重心 |
Research Abstract |
1. 漸近調和アダマール空間としての実,複素,四元数の3種類の双曲空間, いわゆる階数1非コンパクト型対称空間の体積エントロピーに関する特徴づけを完成させることができた(Kyushu Math. J. 2013, 及び DGA,2014).研究はホロ球の幾何学的考察によってなされた. 漸近調和アダマール空間の体積エントロピー(測地球体の体積指数増大度)がホロ球の平均曲率に一致するという,既に共同研究者との研究によって得られている定理を鍵定理とし,ホロ球の型作用素が満たすリッカチ方程式について詳細な考察をすることにより各種双曲空間の特徴付けを個々にではあるが,行うことができた. 2. アダマール空間に対して,それの理想境界上に確率測度を考え,これら確率測度のなす空間に対して,フィッシャー情報幾何学を展開させることができた.各確率測度にその重心を対応させる重心写像を用いることによって,理想境界の同相変換に同伴して定まるアダマール空間の変換の等長性を議論することができた.(Geometric Sciences of Information, Paris,France,2013, International Miniworkshop of Differential Geometry, Kyungpook University, Korea,2013 および日本数学会年会,学習院大学,2014での講演発表) 各確率測度が重心を一意に有するための十分条件の考察,理想境界の同相変換に同伴するアダマール空間の変換がポアソン核写像と可換であるとの仮定をおくことによって結論を導くことができた.ビューズマン関数のコサイクル則の無限小版が本質的に研究進展に寄与している.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1. 実,複素,四元数の3種の双曲空間の体積エントロピーに関する特徴づけ:90パーセント達成.仮定する条件としては,漸近調和(各ホロ球の平均曲率が一定値をとる)アダマール空間に対して体積エントロピーが各種双曲空間の満たす体積エントロピー値以下の値をとるという非常に幾何学的に簡潔な仮定のみであり,ほぼ満足のいく結果を得たといえる. 2. 各種双曲空間を含むダメック-リッチ空間の特徴づけ: 30パーセント到達. 理想境界上の確率測度のなす空間からアダマール空間への重心写像の Douady,Earle やBesson,Courtois Gallotらのアイデアを駆使することによってアダマール空間が等長変換を有する条件を探った.ポアソン核写像に関する可換性条件をも加味することによって結論を導くことができた.
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Strategy for Future Research Activity |
25年度において展開したフィッシャー情報幾何学的研究を継続発展させること,さらに調和空間におけるフーリエ変換論を展開することを26年度の研究推進の方策とする. 1. 漸近調和空間がある条件を満たせば調和空間となるかという本研究のメーンテーマの一つである課題について、これまでのアプローチと異なるフーリエ変換や球関数、球変換のアイデアのもとに探求する.ガウス超幾何関数や超幾何微分方程式の援用を考えている. 2. また調和空間上のフーリエ変換、球変換について考察を加え、調和アダマール空間はダメック-リッチ空間に限るかという問いかけについて考察を行う.予備的考察の段階で,超幾何型調和空間なる概念が不可避となっているという新局面が生まれている. 3. さらに,調和アダマール空間としてのダメック-リッチ空間の特徴付けを行う.測地球やホロ球の型作用素の精緻かつ幾何的な分析を行う.その場合,各種双曲空間以外の非対称的ダメック-リッチ空間に対する考察を行わざるを得ないが,幸運にもダメック-リッチ空間の有する群構造,特にTokyo Math. J.,2009 でえられているビューズマン関数の表記を活用する. 4. 確率測度のなす空間をフィッシャー情報計量の観点から測地線、共変微分、ベクトル場の平行移動等の詳細な分析を行うことによって、重心写像の幾何学的性質についてさらなる考察を加える. 東京理科大学連続講義(2014.6), 2014ICM"Real and Complex Submanifolds"招待講演(2014.8)により国内外の微分幾何学の専門家との研究討議を行う予定である..またフランスでの情報幾何学会にて確率統計分野の一線級専門家の前にて発表を行い,研究討論する. 5. この間,密度の濃い研究討議を行ってきた共同研究者とはさらに継続して研究討論を行う.調和空間上のフーリエ変換について欧州の造詣が深い専門家の研究コメントを求めるため26年度は渡欧をも予定.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
25年度に予定していた研究出張(幾何学シンポジウム(平成25年8月))が国際会議(チェコブルノ,パリ開催)と重複し,当該シンポジウムに出席できなかった.そのため当該使用額が生じた. 2013年度の次年度使用額・2014年度経費あわせて下記国際会議や欧州の専門家との研究討議のため旅費に重点的に充てる.国際会議(ベイジアン統計学,フランス26年9月開催)出席研究発表及び世界数学者会議(韓国ソウル26年8月開催)サテライト会議(招待講演)において精力的に研究発表し,国際的専門家と研究討議する.また国内学会に積極的に参加し研究発表する.共同研究者とは密に連絡を取りあい,研究討議の時間を確保する.これらの発表とは別に,国内一線の専門家と進展内容について研究討議し情報収集に努める.
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